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10年目のimoutoid

ほら。たまには陽に当たらないと、カビが生えるわよ。

2009年4月末に気鋭の音楽家、imoutoidが亡くなった。そして今年で没後10年になる。また最近ボカロPでもバンドでも人気だったwowaka氏の突然の訃報によって同じくボカロPだった椎名もた氏とともにimoutoidの名も挙げられた。

私は彼が活躍していた当時には幼すぎた為にその活動についてリアルタイムで知っていた訳では無いが、昨今(少し古い?)フューチャーポップの流行に合わせて彼の存在を知った。今年の夏はimoutoidの夏と言っても良い位に彼の音楽を集中的に聴き込んだ。
彼のあまりの早熟さについては現在彼のWebサイトを運営している彼の父親が詳しいのでここでは割愛させて頂く。

ここでは彼のキャリアの内、2曲を取り上げて紹介していきたいと思う。

まず、「Sakura and the hysterious magic book」だ。意図的かは知らないが若干音割れしている。前半はまだ既視感のあるポップスだが、後半から雲行きが怪しくなってくる。今でこそありがちな手法だが、ボーカルを早回しした様なボイスが乗り、リズムを倍の倍で刻み始める(わかりづらいネタ)。
ここから若干割れ始めて、あまりのボイスサンプルの多さに「バカだろ?」と言いたくなりそう(わかりd)だが、不快に感じない。13~5歳頃のimoutoid(当時は「ファミコン宇宙人」名義)はこの不快音ギリギリを突いてくるような絶妙な音の配置が特徴的だ。このような音が入り乱れる曲はミックスのやり方、パンの振り分けによってはかなりうるさい、思わずそっ閉じしたくなるものになりがちだ。(最近だと某委員長が歌ったフューチャーポップ風の動画にそんなコメントが。そもそもボーカルのピッチが怪しいが。)まだ彼の代名詞でもあるStutter(音素材を細かい単位で切り刻み新たな素材を作る手法)は用いられておらず、直近の音楽で言えばアネッサのCMソングだった「Summertime」の様なボーカルチョップであるが、10年以上前に似たような手法を使うとは、先見の明を感じさせる。

さて、話は飛んで、2曲目は彼の遺作となった「ファインダー(imoutoid’s “Finder Is Not Desktop Experience Remix”)」だ。この曲では10代前半のノイジーな音像は鳴りを潜めて、静的にしかし性的(変態的)な音楽が構成されている。アンビエントチックなパッドやリズムはポストダブステップっぽいが、まだ余りシーン的には馴染みの薄いジャンルだった筈だ。パイオニアっぽいBurialがファーストを出したのはこの3年前だがまだそこまで影響力は無く、今をときめく(Instagramでおすすめしてたあの人とは違い4thジャケットの写真のせいで生え際が少し心配な)James Blakeに関してはまだ「CMYK」すら出ていない時期である。しかしSkrillexとかが使うワブルベースが入っていたりと、これがフューチャーポップと言わなければなんと呼ぶのか当時のニコニコユーザー達は知らなかっただろう。この曲はやはりワブルベースのLFOの掛かり方を活かしたベースのグルーヴがキモくて気持ちがいい。
またこの曲の肝となっている点は2つあると思う。まずは上手いことダイナミクスの調整が聴いたサビに入るシンセの最後に切り込む何とも切ないフレーズ2回とサビ後の逆再生風のキメ。(他の音は何とか再現出来そうだがここだけは全くタネが分からない。仕掛けの分かる物知りおにーさんやおねーさんはぜひドヤ顔早口で僕に教えてください。)もう延々とこれだけ流してもお腹いっぱいである。
低域は1曲目に比べると幾分余裕があり、安心感を感じる。またリハモが多く行われていて、ここまでの要素を入れると音楽自体が崩壊しそうなものだが、そこは彼の上手な綱渡りによって均衡を保たれている。
まあ大切な事は言葉にならないらしいので、今までの2曲ともYouTubeで聞いてみる事をお勧めする。「ファインダー」は買える。「ADEPRESSIVE CANNOT GOTO THECEREMONY」や、ライブ映像もYouTubeチャンネルで上がったばかり(彼の顔がよく見える!)ので、是非。

そろそろ話すことも無くなってきた。勢いで1時間少しでつらつら書いたものだが、ここまで読んでくれてとても嬉しいです。

ともかく、imoutoidは間違いなく現在のフューチャーポップシーンに於いてパイオニアの一人であると言えるだろう。これを同い年位の方に話すと大体無反応か「マイナーな音楽好きな痛い奴」みたいに見られて悲しいことこの上無いが、例え彼が天使たちに召されてしまったとしてもシーンには彼の血が未だに、確かに流れているのだ。
その音楽を信じる力を僕らに!マイナーでもメジャーでも好きな音楽を追及することを諦めてしまわないように。
そうして賑やかな場所でかかり続ける音楽に、僕たち音楽ヲタクはずっと耳を傾けている。
今はもう僕たちの見えるところに彼はいないのかも知れないが、たまには陽に当たらないとカビが生えてしまうので、日常のほんの一部の時間でいいから、僕の今までだらだら言ったことを思い出しながら彼の人生のかけられた音楽を聴いてみてほしい。
 
 

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