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2017年6月23日

朱 (21歳)
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「ありがとう」を重ねながら夢を見ている

イトヲカシ、無期限活動開始宣言

「会いに行くよ」
そう言うバンドは山ほどいる。
「あなたの街へ、自ら会いに行きます」
心からそう言えるアーティストを、わたしは彼らしか知らない。

イトヲカシ、彼らはどこまでも不器用で真っ直ぐで優しすぎるアーティストだ。
彼らは毎年路上ライブを行なっている。
事務所に所属しているにもかかわらず、実費で、どのアーティストも来てくれないような場所でも、会いに来てくれるのだ。

「人気がないから路上ライブをして回っているんだろう」
と、イトヲカシの話をするとみんなが言う。
しかし彼らを動かしているのは、¨売れたい¨という気持ちじゃない。
¨ありがとう¨という気持ちだ。

「歌を聞いてくれる人がいるのなら、その全ての人にありがとうを伝えたい」
彼らはいつも言う。そして有言実行してきた。
日本の端は全て制覇したし、47都道府県に加えて離島や海外にまで飛んだ。
利益なんて関係なく、感謝を伝えるために。

正直、馬鹿だと思う。音楽が好きで好きで、無茶な計画も実行しちゃうくらい、ファン想いなアーティストだ。

彼ら二人は元々違うバンドをやっており、0人のライブハウスも経験している。
そして、お互いが辿り着いた先が路上ライブだった。

「僕たちの音楽を知らない人に届けて、ライブハウスへ呼ぼう」
そんな気持ちで路上ライブはスタートした。誰も止まってくれなくても何時間も歌ったと言う。

そんな彼らは今、数え切れないファンの前で歌を歌っている。
そんな彼らは、路上ライブの後には必ずサインと握手を行う。
一番長かったときは、3000人以上を7時間かけて対応した。
ずっと笑顔で、一人一人目を合わせて。
もちろんお金は一切、発生しない。
ただただ、感謝を伝えたい、それだけで。

東名阪ツアーが当たり前になったのはいつだろう。

全国ツアーに自分の住んでいる県がないことを、当たり前に思うようになったのはいつだろう。

地方だからと諦めたライブがいくつあっただろう。

次のライブの予定が分からずに、幸せだったライブの帰り道で泣きそうになったことは、何度あっただろう。
 

そんな変わることのなかった常識を、壊してくれたのがイトヲカシだった。

去年の冬、そんなイトヲカシがわたしの住む県に来てくれた。
どんなアーティストもツアーで飛ばすような、地方の県に。

「あなたのおかげで来ることができた」
と、彼らは言った。

一人一人の応援を、想いを、彼らは掬い上げて、音にして返してくれる。
そして、出会ってくれてありがとうと言ってくれる。

わたしは一生、彼らに「ありがとう」を返し切れる気がしないのだ。
 

それでも、何度も何度もありがとうを重ねながら、一緒に夢を見ている。

2015年の秋、2年ぶりにワンマンライブを行なったイトヲカシは、ライブ内で「無期限活動開始」を宣言した。

無期限活動停止はあっても開始なんて聞いたことがないと、私たちは笑った。

その翌年に彼らは、全国路上ライブツアーに、初のライブハウスツアーを成功させた。
そして、ファイナル公演の曲中で、「メジャーデビューします」と宣言した。

「無期限活動開始」の意味を知って、私たちは泣きながらライブ仲間と抱き合った。

「無期限活動開始」、つまり死ぬまで歌い続けるということ。この宣言にはそんな意味が込められている。
解散や活動休止をすることが日常化してきた中で、イトヲカシの言葉は強く響いて安心させてくれた。

彼らは今日も終わることのない歌を歌う。
誰も聞いてくれなかった音楽は、色んな場所で流れ出し、人の心を動かしている。

全国の「ありがとう」を音に変えながら。

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