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チャットモンチーと私

チャットモンチーとの出会いから完結まで

 
  2017年という年は、どんなことがあっただろう。

  10年後の自分がふと考えた時、どんな出来事が湧き出てくるだろうか。
  例えば、稀勢の里が19年ぶりの日本出身横綱になったとか、プレミアムフライデーが始まったとか。世界的に見れば、アメリカでトランプ大統領が誕生したり、北朝鮮がミサイルを撃ちまくって。世間では様々な事件事故が起こり、どこかの偉い人が頭を下げている。一言では言い切れないくらい沢山の出来事があった1年。だけれどそれは毎年変わらないし、今更そんなことでガッカリはしない。
  自分のことを考えてみる。毎日辛い朝を乗り越えて、仕事して、仕事して、仕事して…。本厄だったこと以外は基本繰り返しで、特に変わったことなんて何もない1年。つまりは人生の通過点の一部に過ぎないのかもしれない。
  なんの変化も訪れないこの平凡な自分に突如飛来した青天の霹靂は、私だけでなく多くの人に衝撃と悲しみを突き刺した。

  11月24日、チャットモンチー完結発表。

  その衝撃は私の脳の回転を停止させ、生活に支障が出るレベルまで達した。心臓が止まるという表現はあまりにも大袈裟であるが心臓が止まった。はて今日はエイプリルフールであったか、それともネット社会に踊らされているのか。そんな訳の分からない考えが頭を過る。そんなことにはお構いなく、チャットモンチー解散というワードがネットでトレンド入りし、日本全国のチャット狂が泣き喚いている。その時私の脳はまだ思考停止である。時間だけが過ぎる。何も信じられない。考えられない。だって大好きなチャットモンチーがなくなってしまうなんて。そんな堂々巡りを繰り返していた。
  予兆はあった。完結発表前日に「LAST ALBUM RELEASE IN 2018」という画像が公式サイトに掲載されたからだ。これには多くのチャットファンが反応し、解散するのでは?という憶測が流れた。まさか、と思った。百戦錬磨のチャットモンチーが解散するなど、アリエナイ話である。
  2015年にはデビュー10周年を迎え、翌年には主催フェスである「こなそんフェス」を地元徳島で開催。2017年には全国ツアー「機械仕掛けの秘密基地ツアー」が敢行された。誰がどう見ても順風満帆、視界良好、天下無敵である。そんな中での「完結」発表だった。
  突然の出来事に虚をつかれた私は、その後三日三晩何も考えられなくなった。Twitterで全国のチャットロスを眺めるだけで精一杯だった。心のどこかでドッキリであってくれ、と思っていた。それまで想像の遥か斜め上を行く、彼女たちの最高にロックな姿を見ていたから、今回も最高にロックな展開が待っているに違いないと信じたかった。だけれど、それは叶わぬ願いだった。
  考えてみると大好きなバンドが解散することが初めてだ。ブルーハーツやナンバーガール(2019年再結成)は大好きだけれど、リアルタイムでの解散を経験していない。大好きが目の前から消えてしまう。失恋にも似たその感情はどこにもぶつけることができず、ただジュクジュクと心に確かな穴を開けていく。
  私とチャットモンチーとの出会いはいつだったろうか。恥ずかしながら、私のロック愛が湧いてきたのはごく最近のことである。学生時代も音楽が好きだったし、独学でギターも弾いていた。でも、誰かとバンドを組んだりライブに行ったりという、音楽好きな学生であれば誰もが通る道を通らなかった。というか通れなかった。理由は沢山ある。まずは地元が田舎すぎて音楽に関する情報が乏しかったということ。そして物理的にライブハウスが遠かったことである。しかしそれ以上の問題は、私に友達と呼べる人間があまりにも少なかったからだ。我ながら悲しい歴史である。
  それと比べて橋本絵莉子という人物。恐ろしい人間力である。高校在学中、見た目中学生であると福岡晃子が言うくらい童顔の少女が、バンドのメンバーを片っ端から探す行動力。高校時代、地味に目立たず3年間過ごした自分とはエライ違いである。
  そんなような不遇な時期を過ごし、高校卒業間際のこと。田舎では車がないと生活できない。すなわち運転免許が必要だ。じゃあ自動車学校に行きましょう、ということで例に漏れずせっせと通ったわけである。人でごった返す待合室で、誰も見ることのない32型の案内モニターからチャットモンチーが流れていた。忘れもしないその曲。

  『満月に吠えろ』

  衝撃だった。なんだこの曲は。自分の中の常識がガラガラと崩れた。それまで女性の歌い手数多居れど、見えない力に押し付けられる感覚は初めてだった。一発でやられた。
  実は随分前からチャットモンチーの存在は知っていた。ギターのスコアに曲が載っていたし、CMで流れているのも聞いたことがあった。ただ自発的にチャットモンチーを聴くことは無かった。「え?いやいや、チャットモンチーて笑。何やねんそのバンド名は、サルかいな?そもそもガールズバンドでしょ?そんな可愛さ売りにしてるようなバンド、興味ありませんわ笑」的に小馬鹿にしていたのである。タイムマシンでその頃の自分に会えるとしたら、回し蹴りの後に顔面に猫パンチ20発喰らわせてやりたい。つまり猛省しているのです。
  そんなわけで学生時代にチャットモンチーに出会えなかった(?)私を思うととても辛いのです。あの頃チャットモンチーに出会っていたならば、もう少し違う青春時代を送っていたことでしょう。そう思いたい。いや、頼むからそうであってくれ。
  衝撃的なチャットモンチーとの出会いから私はチャット沼にズブズブはまった。それはもう底なしの深い深い沼。2人体制のチャットを最初に知った私にとって、ドラム高橋久美子の3人体制を初めて聴いた時は清水の舞台から飛び降りたほどの衝撃だった。

  YouTubeで見たROCK IN JAPAN
  『シャングリラ』と『風吹けば恋』の2曲。

  力強さの中に優しさとクセのあるドラム。男子顔負けのゴリゴリロックなベース。そのリズム隊に支えられ伸びやかに美しく響くギターとボーカル。チャットはライブバンドだと言われるけれど、本当に凄かった。音楽という概念を忘れさせるくらい綺麗な光景だった。
  そしてチャットモンチーを聴きまくった。ライブにも行った。本当の音楽を知った。チャットモンチーは私の音楽の先生になった。ロックの先生と言った方が正しいかもしれない。チャットを知ってから芋ずる式に様々なアーティストを知った。音楽に対する見方までもが変わった気がする。それまで「ロックとはなにか?」なんて考えたこともなかった。ガールズバンドなんて軽々しい言葉を跳ね除けて飛び続ける彼女たちに何度助けられ、何度勇気をもらったことか。
  徳島で生まれ育ったバンドがデビューして上京してCD出してライブして、ドラムが抜けて、それでもめげずに変身して。何て凄いバンドだろう。これからも進化し続けると信じて疑わなかった。

  だからこそ「完結」の衝撃が大きかった。

  チャットモンチーを聴けなくなった。聴くと悲しみと切なさが心と体を支配してしまうから。今まで生きてきた二十数年の人生の中でこれほどまでに辛いことがあっただろうか。心の底から冷えて固まっていく感覚。何も考えたくなかった。考えられなかった。
  それからどのくらいの時間が流れただろう。世の中にある不平や理不尽に振り回され、ヒーローなんて信じなくなって、ただ淡々と黙々と日々を過ごす。チャットモンチー完結のニュースが広く浅く世の中に伝えられ、私の時間は嫌でも動いていく。ただ一つの悲しい事実を残して。日に日に近づいていく、世界で唯一の光が目の前から消えてしまう日。
  ラストワンマンの武道館、最後のこなそんには行けなかった。仕事という理由を作って、嫌なことから目を背けたのかもしれない。最低な自分。弱い自分。自分の嫌いなところが素直な自分の邪魔をする。本当はロックの先生にお礼を言わなければならないのに。後悔と罪悪感で心がいっぱいになった。
  そんなモヤモヤする日々を過ごしていた私を救ってくれたのは、やっぱりチャットモンチーだった。
  Twitterに流れてくるチャットロスの嵐を眺めていたら、ふと思った。悲しいのは自分だけじゃないんだって。そして完結発表後に溜まっていた私の中の何かが爆発した。片っ端からチャットを聴きまくった。モヤモヤが一気に晴れていく。耳にイヤホンをはめたその時間だけは、トランス状態グルグル回って、今までひとつでも失くせないものってあったかなって考えて、わたしが神様だったらこんな世界は作らなかったって嘆いて。 (引用は全てチャットモンチーより トランス〜:ハナノユメ、今まで〜:恋愛スピリッツ、私が神様〜:世界が終わる夜に)
  それでもチャットモンチーだったら、“希望の光なんてなくったっていいじゃないか”って笑うんだろうな。(引用 チャットモンチー シャングリラより)
  2019年になって、チャットロスどん底にいた私はようやくこの文章が書けるまでに回復した。もうすでにチャットモンチー(済)の3人はそれぞれの場所で活躍している。私の日常は相変わらずだけれど、チャット先生から教えてもらったロックを支えに生きている。
  チャットモンチーは私にロックを教えてくれた。大好きがなくなってしまうことの辛さを教えてくれた。もちろんチャットモンチーがまた3人で音楽をしてくれると信じている。でも今は、静かに彼女たちの活躍を眺めていたい。
  最後に、去年の夏に伝えられなかった言葉を、この場を借りてチャットモンチーに伝えたい。3人に届くと信じて。
 
 

  チャットモンチーの皆さん、完結おめでとうございます。
  私はチャットモンチーの音楽にどれほど救われたことでしょう。
  これから先、ずっとずっと私の中で、チャットモンチーの音楽は生き続けています。
  これからの活躍、とても楽しみにしています。
  本当にありがとうございました。

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