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命の灯火を燃やそう

PENGUIN RESEARCH 2ndアルバム「それでも闘う者達へ」評

 
2019年8月7日に、PENGUIN RESEARCHの2ndアルバム「それでも闘う者達へ」がリリースされた。
前作「敗者復活戦自由形」より約2年5ヶ月ぶりのフルアルバムの発売に、歓喜にむせぶ傍ら、ほんの僅かだけ、心配な気持ちもあった。
というのも、何しろ前作、1stアルバム「敗者復活戦自由形」があまりにも良過ぎたからだ。正直、このアルバムへの信頼度が高すぎて、私の中で次作への期待というハードルがガンガンに高く積まれていたのである。
果たして前作からの期待を超えてくれる一枚になっているのだろうか、と、大変上から目線で僭越ながらほんの僅かのそんな心配が、心の片隅にあったのだ。

しかしそんなことはあまりにも愚かな杞憂だった。
当たり前だ。大変失礼な心配をしたものだ、と心で深く反省した。
そう断言できるほど、間違いなく神盤だった。

先行リリースされた表題曲「それでも闘う者達へ」を聞いた瞬間から、この愚かな杞憂はほとんど氷解していた。
イントロからもう良い。
繊細で軽快なピアノ音から入るこの曲、全体を通して疾走感がありつつも繊細で美しく、勇ましく泥臭い、両極端な魅力をふんだんに備えていた。
絶望に打ちひしがれてもそれを認め、受け入れて、なお這い上がろうとする、祈りにも似た生きることへの執着に、心震わされる。
この複雑な魅力を支えているのは、圧倒的な演奏力を誇る楽器隊はもちろんのこと、ボーカル・生田鷹司氏の歌声がかなり大きいように思う。
彼の歌声は、とにかくクリアで雑味がない。磨かれた水のように透き通って嫌味なく美しく、だからこそ何色にも染まり、変幻自在であるような、圧倒的「世界の主役」的声をしている。
だからこそ、美しさと儚さと激しさと泥臭さが共存するような歌詞と曲の間に立ってとりもつことができるのではないだろうか、と。

更にこの歌では、コンポーザー兼ベースの堀江晶太氏もコーラスに参加していることがかなり大きな魅力だ。
ベースを弾かせれば目では追えないほどの指さばきを披露し、曲を書かせればアイドルからロックまでお手の物のこの男、歌声さえ魅力的なのだから非の打ち所がない。
彼の歌声は、ボーカルの生田とは好対照に、複雑な色味が幾重にも重なってできたような、モワッとスモーキーでその端に甘みを残す、ノスタルジックなのにワイルドでセクシーな、濁った魅力がある。
ライブなどでは今までも度々コーラスを披露していた彼だったが、明確に音源として収録されたのは初ではないだろうか(全員でのコーラスは除き)。
彼のコーラスがまた、曲に深みと陰影をつけ、震えるほどの名曲に仕上がっているのだろう。

この曲はアルバムリード曲として発売に先駆けて先行配信された。その時点で、もう私の卑小な心配などは吹き飛んでいて、ただただ期待を膨らませ続けるばかりだったのだが、本体が発売されて、私は2度打ちのめされた。
アルバム新録曲がどれも間違いなく素晴らしい。
どういうことだ。と、理不尽にも頭をひねったほどだ。

まず、曲のテイストのバランスが良い。
先に触れたメッセージ性の強い「それでも闘う者達へ」を筆頭に、
ワルかっこいいビートがギャンギャンに効いたメタルロックな「バケモノダイバー」、
今すぐ踊りだしたくなるど真ん中ダンスチューン「ドブネズミ・ザ・ナイトクルーザー」、
シンプルなメロディラインだからこそ音の一つ一つが染み入るバラード「青い灯台」、
寂しくなってしまいがちなライブの最後を飾るにふさわしいアンコールソング「BYEBYE RESEARCH」、
そして「ゴールド・フィラメント」。

実は、発売前に出されたクロスフェードを聞いた時点では、一番期待値が低かった曲がこの「ゴールド・フィラメント」なのだが、まったく、自分の先見のなさに呆れ果てたものである。
なにせ、私が初回で一番したたかにぶん殴られたのはこの曲だった。

まず、もう、イントロから全てが良い。
タイトルの通り、ジリジリと音を立てて発熱するフィラメントを彷彿とさせるような電子音から入る、そのイントロだけで何故か泣けてくるほどの衝撃があった。
もちろんその後も、震える心は収まらず、感情の激流に押し流され続ける。
この曲もやはり、ボーカル・生田氏のどこまでも透明なクセのない歌声が、凛と調和を保っているのだ。
透明な水は、だからこそ、差し込む光で何色にも変わる。この曲はもちろん、フィラメントの煌めくゴールドだ。
華やかで鮮やかな曲とは対象的に、絶望や苦しみを歌う歌詞を、一つの歌としてまとめあげているのは、彼のボーカルとしての力量だろう。

この曲を語るにおいて、筆者のおぼつかない語彙力では到底足りなく、歯がゆい気持ちでいっぱいなのだが、とにかく一から十まで全て「良い」。中でも特に、歌詞が最高すぎる。
何を食って生きてきたらこんな言の葉を紡げる人間が育つのだろうか、真剣に体細胞の成り立ちからお伺いしたいほど、人の心を震わせる言葉の集合体だ。

「生涯の大部分は ロクでもない真夜中だろう
貴方がいなければ 全部 そうだったかもね」

その中でも余りにエモーショナルが過ぎて、帰り道の電車の手すりに頭を打ち付けたフレーズだ。
このフレーズを、生田鷹司が歌うからこそ、更なる魅力のバフをかけられているのだと思う。
敬虔な教徒のように純粋で邪気のない、いっそあどけないほど、真摯な歌声でそんな風に歌われたら、もう泣くしかない。
これはリスナー側の勝手な自意識なのかもしれないが、こちらこそ、貴方がいたから今人生がとても楽しい、と返事したくなるほどだ(事実毎回心の中で『こちらこそ!』と叫んでしまう)。
さらにそこからの

「生き続けたら また会えるかい」
「輝くために 産まれたなら その使命は 生きる事」

(ここでまた電車の手すりに頭を打ち付ける)
いやほんと、オタク丸出しの文章になってお見苦しいかと思いますが、本当に、『尊い』以外の感情が失われる。
こんなにまで輝きを与えてくれる彼らのためにも、そして何より輝ける自分のために、生きなければ、と毎日毎日救われている。

誇張ではなく本当に、発売されてから今日までほぼ毎日のように聞いているのだが、聞くたびに深く感動し直しているのだからあまりにも鮮度の持ちが良すぎる名曲である。
主語を大きくして大変申し訳ないが、ここまで読んでくれた方で聞いたことない方、ぜひ今すぐ全員聞いてほしい。

まだまだまだまだこの曲、及びこのアルバムについて語りたいことはありすぎるのだが、筆者の拙さゆえにあまりにも膨大に膨らみ過ぎてまとまりがつかなくなってしまうので、ひとまずこの辺りで締めることとする。

この神盤が、まだあまり多くの人に知られていないのかと思うと、そこに僅かなファン特有の優越感もあれど、やはり歯がゆい気持ちの方がとても強い。
願わくはこの文章が採用され、多くの人目につくことで、PENGUIN RESEARCHの魅力が全世界に広まりますように。

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