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マカロニえんぴつという四季の移ろいで見つけた逃げ場所

「season」リリースに寄せて

もうだんだんと秋も深まってもいい頃合いなのに、気温は30度を超えるし、半袖で歩けるし、秋刀魚は1尾350円くらいするらしい。去年は100円くらいだったらしい。高くて食べることができない。秋という名の残夏。食べ物にも景色にも決まって旬というものがあるが、音楽にも同じことは言えるだろうか。答えは出ぬまま、四季の旬を詰め合わせたマカロニえんぴつの「season」がリリースされた。

前作LiKEに込められていたのは、ライクからラヴへと移っていくように、そして○○みたいからの離脱の想いだったか。自信はない。ただ、「STAY with ME」や、「トリコになれ」で見せた他を引きつけない圧倒的な演奏力と、溢れんばかりの輝く青さで12箇所の単独公演を駆け抜けたことは記憶に新しい。今やまさに“トレンド”の真っ只中にいる彼らだ。

「season」
メンバーそれぞれが作曲した曲達が四季の移ろいに準えて収められた今作では、ひとつに集まって光彩するあの演奏力、言わばマカロニえんぴつ力を紐解いていくようで。この路地を曲がったらどこに繋がっているのだろうか、いつもの大通りには出られるだろうか、それとも行き止まりだろうか。あの山の向こうにはどんな街があるだろうか。誰もが少なからず生きながら心に宿している冒険心がくすぐられる、宝地図のような、図鑑のような、今しかリリースされないであろう特別感の強い1枚になったように感じる。メンバーが作曲したそれぞれの曲をまるっと1曲にまとめたなら、私達が毎日のように聴いて最低限の生活になりつつあるマカロニえんぴつが出来上がるようにすら思えるから感動する。「彼らの今が詰まった」だとか「等身大の」だとかバンドを飾る薄っぺらい文句がCDショップにいけばいくらでもぶら下がっているけれど、それらを全部蹴飛ばして音楽だけで見せられて魅せられる感覚が濃い。これほどそれぞれの曲でメンバーの個性が前面に出ることが、それがひとつになることこそが、マカロニえんぴつらしさを生むということを、フロントマンであるはっとりは知っていたのだろう。そして信じていたのだろう誰よりも。ある意味ではメンバーよりも強く。

「恋のマジカルミステリー」の明るさはそんなはっとりが胸に抱える、メンバーの作った曲をリリースできる嬉しさや跳ねた感情がそのままに声を乗りこなしていて、田辺が影響を受けてきた少しレトロなロックを、現代のマカロニえんぴつが消化したような仕上がりになっている。
「二人ぼっちの夜」では、必然に逆らってでも離れたくない高野らしい想いが秘められた二人の歌が、「TREND」では、長谷川作曲の奥深く、凝っていながらもどこかシンプルさも感じる世界に身を任せながら、“トレンドになって”と“トレンドになんて”の間を揺さぶられる彼らの心情を覗き込めるようだ。

そして、今作には前ツアーの最中、LiKEとは別に自身初のタイアップ曲として配信リリースされた「青春と一瞬」も収録されている。この後に続くMV発表となるのが、「Supernova」そして今作への期待が高まる「ヤングアダルト」になるわけで、どうしてもこの曲だけは「あぁ、マックのCMのね」なんて、どこか一人歩きしてしまっているような印象を受けていたが、seasonに収録されたことで、きちんとアルバムに綴じることができたように感じた。また年末に人が集まった頃にでも酒を交わしつつ、はにかみながらページをめくることができるなぁと思えたのが、個人的には意外にも今作で1番嬉しかった。
“僕らに時間は少し足りない”ということに気付くことができるのはいつだって、その時間が過ぎてしまったから、なのだけれど、時間が足りないということをその時間のうちに感じることができるようになったような感覚に触れたから、少なからず「マックのCMの」ではなくなったし、次に会場で聴けた時には今までよりもう少し退屈だけを愛し抜けるような気がしている。

夏フェスのステージに立つたびに、見たい人全員にチケットが行き渡らないことに馳せた想いを伝えてきたマカロニえんぴつから贈られた1枚には、フルボリュームのライブ映像と抜粋された音源が収録されている。旬なマカロニえんぴつからの、旬の詰め合わせだ。そして、

“君に触りたい 揺れながら少し悲しいキスをしたい”
こう歌う彼らの曲を愛した私達は、ずっと心待ちにしていたリリース日が終わった明日からも、彼らの人気に目配せしては時にやきもきして、夜の長さには飽きながら暮らしは続く。届きそうで届かないような、少しくすぐったいところで、たとえ甘すぎようが、それくらいがいいね、なんて言いながら追っかけていくに違いない。

信じてくれれば逃げ場所になってやると、胸を張ってマイクに叫び続けたあのバンドマンは私の代わりにどこかへ逃げてしまった。ちょうどその頃から、“逃げ場所がここにある”とマカロニえんぴつは歌い続けた。どこにも逃げることなく今日まで。

会社、学校、人付き合い、自分自身。
見失うほどの夢すら持てないヤングアダルト達の行き場はどこにもないが、彼らの四季を見届ける人の逃げ場所がここにある。

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