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2017年6月26日

めぇ (28歳)
125
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

ダメなことも愛おしい

クリープハイプと私を誇ること

(私、クリープハイプが好きなんだよね)

私が彼らを好きになった頃、大きな声では言えずにいた。
クリープハイプを聴いている友人がいないこともあったが
知られるのが何となく気恥ずかしかった。

2017年6月15日 ZEPP NAGOYA
クリープハイプ企画の2マンツアーの最終日。
対バン相手は銀杏BOYZ

「日本にはこんなに格好良いバンドがいる」
「クリープハイプが好きということを誇って生きてほしい」
銀杏BOYZ 峯田の話を聞いて、そんなことを思い出していた。

何年か前のライブで、
「クリープハイプが好きって親に言える?彼氏に言える?」
「見つからないように何度も折り畳んで
机の引き出しの奥の方に閉まっておくみたいなもんでしょ?」
そうボーカルの尾崎から言われた。
おそらく彼の考える、隠す理由とは違うなと思ったが
なんだ彼らも自覚していたのか、そんなこと言わなくてもいいのに
…と正直な言葉に笑ってしまった。
 

昔に比べ映画やドラマのタイアップ、尾崎の小説など
彼らの活躍の場はどんどん広がっている。
気が付けば私も堂々とファンを公言していた。
それどころが音楽仲間の友人に勧めているくらいだ。

この日の尾崎は、とても嬉しそうだった。
尾崎だけでなく、ベースの長谷川も銀杏BOYZの大ファンだ。
大好きなバンドと自分の企画で同じステージに立てることが
バンドマンにとって、どんなに幸せなことなんだろうか。
その姿にクリープハイプを好きな私が重なって見えた。
私と同じように好きな音楽があるんだなと
当たり前のことが何だか嬉しくなる。

「(銀杏BOYZに)勝ちにいくから、ついてきなさい」
そう言い放った長谷川のベースで始まった『HE IS MINE』
会場の熱気がぐっと上がる。
フロアを煽る尾崎に、応えたいと全員が思っている気がする。
彼らの感情が音に乗ってくるのは何度もライブを見て知っていた。
このバンドの格好良さを再認識する瞬間だ。
 

「フェスでは皆が知っているような曲ばかりになって
 <今日も安定のセトリ>なんて呟かれて…
 やっぱり長い時間ライブができるのはうれしい。
 でも今からやる曲が盛り上がらなかったらもうやらない。
 …だから、お願いしますよ?」

にやりとした尾崎につられて会場の空気が緩む。
先程まで攻撃的にフロアを煽っていたとは思えない、優しい声だ。
予防線を張るような、そんな風に聞こえるMCだが
普段聞けない曲をやるのだろうとフロアの期待は上がるばかりだ。
そういう尾崎との駆け引きにわくわくしている。

《音階並べてわかってる様な顔して
 それをメロディーとか呼んじゃって
 退屈並べてわかってる様な顔して
 日常を切り取ったとか思っちゃって
 (中略)
 頭の中引っ掻き回して やっと見つけた言葉は
 サビにしてはちょっと地味で歌えなかった》/『ABCDC』

ここで披露されたのは『ABCDC』
クリープハイプの中で私が1位2位を争う好きな曲だった。
自分自身への憤り、日々への葛藤…
この曲の主人公は完全には救われてはいないけれど
模索途中にほんの少し光を見つけている、そんなラストに思える。
その光が諦めでの解放感でもいい気もする。
目の前で鳴らされる『ABCDC』はやっぱり格別だ。

ワンマンの半分程度の持ち時間でも大満足の一夜となった。

「他のバンドには取られたくないなと思います」
フロアを見てそう話す尾崎の姿が、あれから忘れられないでいた。
彼はSNSで呟かれていることもよく見ている。
自分のMCが面白かったのか、ステージ上で確認することもある。
こんなに大勢のファンが目の前にいても、どこか不安そうだ。

《ギターもベースもドラムも全部 うるさいから消してくれないか
 今はひとりで歌いたいから 少し静かにしてくれないか
 こんな事を言える幸せ 消せるということはあるということ
 そしてまた鳴るということ いつでもすぐにバンドになる》/『バンド』

昨年リリースのアルバム収録曲だが、
どうしても尾崎が一人でクリープハイプになった過去が過ってしまう。
メンバーもお客さんも当たり前ではないことを彼が誰よりも知っていて、
だからこそ、今のメンバーに、目の前のお客さんに深い愛情を持っている。
笑いながらする不安げな発言も、本心なのだろう。
その気持ちが「取られたくない」という言葉になったと思うと愛おしくなった。
尾崎にそんな言葉を言ってもらえるのは、すごく光栄だ。
今までこうやって何度でもクリープハイプに夢中になってきた。

半ば強制的な<頑張れ>や<負けるな>は、
ずっと受け止め続けるのはしんどいこともある。
もちろん自分を鼓舞するために必要な時もある。
それでも私にはクリープハイプの捻くれていて嘘つきで
少しダメな大人が思い浮ぶような歌詞のほうが楽だった。
それに共感することは、
自分がダメだと認めているようで怖いかもしれない。
そんな恐怖心から昔の私は本心を覗かれる気がして
クリープハイプが好きと言えなかったのだろう。
でも1番輝けるはずのステージの上で、
たまに弱音を吐いてしまうバンドマンがいる、
それを知って安心した。

クリープハイプを聴き続けたいと願うのは
ダメな私でもダメなだけでは終わらせない、
正直で優しい尾崎に救われてるからだ。

「私、クリープハイプが好きなんだよね」
もっと彼らのことを誇って生きていけそうだ。

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