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わたしを探して

BUMP OF CHICKEN『aurora arc』までの旅

 アルバム『orbital period』に収録されている「arrows」という歌がある。迷子が迷子と出会ってリュックを交換して、自分の荷物の意味がわかる。やりたいことをやったと思っていても、からっぽだったり、抱えなくてもいい自分にとって意味のないものも捨てられない。本当の自分に出会うには、どうすればいいのだろう?
 物心がついた頃からか、手のひらの上を歩くてんとう虫の感触や、ずっと遠いでっかい青空に、漠然とした何かわからないものを感じていたような気がする。知らないことに対する不安や期待は、いつしか「自分は何のために生きているのか?」という命題に切り替わっていった。人生の節目節目、あるいは、突然降りかかってくる難題に行き詰る度、世の中のあらゆるものに助けられてきた。家族であり友であり、小説の一節であったり、ふと耳にした音楽であったり。その中でも私は、BUMP OF CHICKENの音楽にいつだって気づかされて「自分」を続けることができた。
 

「メーデー」で沈黙を拾ってもらい、

  君に嫌われた君の 沈黙が聴こえた
  君の目の前に居るのに 遠くから聴こえた
  発信源を探したら 辿り着いた水溜まり
  これが人の心なら 深さなど解らない
 
 

「HAPPY」で、悲しみの裏に隠れている勇気をもらった。

  続きを進む恐怖の途中 続きがくれる勇気にも出会う
 
 

 BUMPの音楽に支えられる中、そもそも、生まれた時から「自分は何のために生きているのか?」という命題は、存在しないのではないかと感じるようになった。生きているから生きているんだという、苦しみも悲しみもほんの些細な幸せも綯交ぜになったどうしようもなく愛しいたったひとつしかない命。そんなありがたい、与えられた命を続けていくことこそが命題だと長い長い時間を過ごしていく中でやっとわかってきた。
 

 2019年7月にリリースされた『aurora arc』では、長い長い旅をしてきた人に、帰る場所、心の居場所をそっと教えてくれるような曲が並んでいて、本当の自分に出会うことができる。
 毎日毎日、自分自身に嘘をつかずに一生懸命に生きている。やりたいことよりやらなくちゃいけないこと優先で、もう随分と大人なんだから当たり前にできることをこなしてる。でも、本当の自分は迷子のままで自分の形を探して歩いている。「生きること」を「続けること」の中で、自分らしく生きていくことを必死になって探している。たぶん、答えなんて無いのかもしれない。と、うっすら分かっているような気持ちにもなったけど、答えを求めてしまう自分を消せない。
「それでも迷っているんだ。」
 と、叫びたくなる瞬間、

 「ジャングルジム」を聴いて、涙が止まらなかった。

  どんな時でも笑えるし やるべき事もこなすけど
  未だに心の本当は ジャングルジムの中にいる
 
   

 私にとってのBUMPは、常に旅をしているバンドだ。ロードに出ているということではなく、BUMPの曲の中で息をしていると、自分自身が旅をしている錯覚を覚える。歌の中の僕と同じように、私は旅をして、過去の自分を見つけ、本当の自分を見つけ出す。今まで何回だって苦しんで悩んで、その度に暗い闇に落とされ、それでも音楽に勇気をもらい立ち上がってきた。人生が長くなると、悩みも深くなる。「自分」と上手につき合うことはとても難しく、誤魔化して生きることや無感情で生きることは、もうできない。自分の細胞ひとつひとつに声を掛けて、帰るべき「ジャングルジム」の中で、自分自身を再構築したいくらいの気分になる。

 「生きていくこと」を「続けること」は、本当に難しい。傷つくことは当たり前、誰しも出会う自分自身の傷跡を認めることで、初めて正真正銘の自分自身と向き合うことになる。それに時間がかかっても大丈夫。自分を探すのは自分しかいないから、しっかりと自分を見てあげようと思えるのは、BUMPのおかげだ。
 

「Aurora」

  ああ、なぜ、どうして、と繰り返して それでも続けてきただろう
  心の一番奥の方 涙は炎 向き合う時が来た
  触れて確かめられたら 形と音をくれるよ
  あなたの言葉がいつだって あなたを探してきた
 

 BUMPは実際のロードでも、リスナーにとても大きな贈り物を届けてくれる。9月12日の京セラドーム「BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora arc」では、会場を埋め尽くすリスナーのひとりひとりに向けて、音楽が奏でられた。それこそ、会場の隅々まで響き渡る歌声は、「お前に向けて歌ってるんだよ!」という力強いMCと共に確実にひとりひとりの胸に刻まれた。

 いろんな事情でここに集まったたくさんの人たちをつなげているのは何だろうか?BUMPのMCでも「ここに集まってるのは自分に自信がない人達のような気がする。俺も自分に自信がないからさ。」というニュアンスの件があったと思う。
 私は、綺麗な夕焼けを見た時、一番星を見つけた時、宇宙と小さな自分の対比を感じた時、何度も見たことがある名も知らぬ花を知らない場所で見かけた時、とてつもなく「せつなさ」を感じる。あれもこれも、あの風景もこの言葉も一回しかない、瞬間のこの今の自分と同じなんだ。風景も人も同じ時間の中で、一回通りしかない「今」を迎えている。唯、それだけで無性にせつなくなる。この世はせつなさで出来ていると思ってしまう瞬間だ。
 BUMPは言う、ここに集まった人は今日限り、会う人たち、だと。私たちは、きっと「せつなさ」でつながっている。そんな「せつなさ」が明日への「希望」に変わる瞬間を私たちは同時に体感する。そして、それは、ひとりひとりの「せつなさ」を感じ、その声を音符にして私たちに届けてくれるBUMP の愛しい歌のひとつひとつが輝く瞬間でもある。
 

「流れ星の正体」

  せめて君に見えるくらいには輝いてほしい
  流れ星の正体を僕らは知っている
 
 

 こうして、BUMPのライブに足を運ぶ度に、私は「帰ってきた」という安堵感を持つ。私にとって、涙を掬ってくれた場所、迷子になった自分を探して歩いた場所、本当の自分に一番近い場所、その音楽に浸れる場所だ。
 その場所から、また一歩、一歩と新たな旅が始まる。旅の終わりに何が待っているのか分からないが、私には、ずっと誰かに尋ねてみたいことがある。「arrows」に出てくる弓=虹の向こうには何があるのか。それが、生きている世界で探し出したい答えのひとつになっている。
 

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