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Jポップの王道を突き進むという凄さ

いきものがかりとは卵かけご飯である

僕はいきものがかりのファンである。毎日のようにいきものがかりを聴き、CDもグッズも沢山買い、ファンクラブにも入会している。
皆さんはいきものがかりというアーティストに対してどんな印象をお持ちだろうか。国民的とか、バラードが多いとか、ボーカルの子が可愛いとか様々な答えが返ってくるだろう。今でこそファンという目線でしか彼女らを見れない僕だが、ファンになる前、いきものがかりにハマる前の僕にこの問いを投げかければ絶対「日常に染み込みすぎて、今更考えようともしなかった」と答えるだろう。

というのも、僕は前述のとおりいきものがかりファンであるが、ファン歴というのは長くない。ふと音楽アプリで聴いた「茜色の約束」が唐突に好きになり、導かれるようにベストアルバムをレンタルしに行ったのが今年、2019年の2月のことである。ファン歴1年未満である。だからこそ、好きになる前までのいきものがかりに対するイメージもそこそこ鮮明だ。
そして、その時借りたベストアルバムこそが、僕の人生に大きく影響を与えることになった。
家に帰ってWALKMANにアルバムを入れ、3日ぐらいかけて全曲聴いた。そして聴き終わった瞬間にビックリした。アルバム収録曲の7割以上が一度は何となく聴いたことあるものだったのだ。中には勘違いやアーティスト違い、曲違いの認識があったかもしれないが、それでも、「初めて聴くCD音源」であったにも関わらず大半が聴いたことあるのはとんでもないことである。ファンになる前に抱いていたイメージである「日常に染み込みすぎて、今更考えようともしなかった」というのはその通りであり、むしろ想定していたよりいきものがかりの曲達は日常に染み込んでいた。その衝撃に心撃たれ、みるみるうちに僕はいきものがかりへとのめり込んでいった。
そして、ファンになってしばらく経ち、いきものがかりについてもある程度の知識を得てきた今、改めてなぜいきものがかりがここまでに「日常に染み込んでいる」のか、そして、そんないきものがかりの凄さを考えてみようと思い立った次第だ。

ここまでに日常に染み込んでいる理由はいくつかあるのだが、明確に一番大きいものがある。ズバリ、タイアップの多さ。
どんなにいい曲を書いても、それを多くの人に届けようと思うと、アーティスト単体では限界がある。そこで有名企業やテレビ番組に楽曲を使ってもらったり、提供したりして曲を聴いてもらう。タイアップという媒体を通すことで莫大な数の人間の耳に届かせることができる。言葉で言えば簡単なことだが、そういった曲には単なるクオリティの良さに加え、親しみやすさも必要となってくる。特に親しみやすさに関しては、大ヒット作をひとつリリース出来ただけでは身に付かない。何年も活躍して大多数の支持を得て初めて手に出来るものだ。そして、いきものがかりはそれをやってのけているということだ。
また、いきものがかりの多くの曲はサビから始まる。これは「初めて曲を聴く人に、一番盛り上がるところを聴いてもらうことで心を掴む」という、リーダー・水野良樹がデビュー前から心がけている事である。また、サビの一言目は多くがア行から始まる。明るい響きのア行をサビの頭に持ってくることでこれまた聴き手の心を掴むことが出来る。こういった細部にわたる工夫に、ボーカル・吉岡聖恵の温かく包み込むような歌声が合わさることで、誰の心にも響く数々の名曲を生み出してきた。

更に、単に曲の良さだけでなく、歌い手である彼女ら自体も素晴らしいのである。Jポップという長い歴史の積み重なったステージの上で、着飾ることなく常に等身大の姿を歌い上げ、そこに無駄なメッセージ性を込めない。実際、いきものがかりは2011年の東日本大震災直後、多くのアーティストが復興支援やチャリティー目的の楽曲をリリースする中で『安易に作ると普段の曲作りの意義があやふやになってくる』という理由からそういった曲をリリースしなかった。曲を第一に考えるという、全てのアーティストが徹底しているであろう重要事項を誰よりも守ろうとしているのがいきものがかりなのだ。
このように、今でこそ「在り来たりな存在」として日本の音楽界に燦然と君臨しているが、その裏には数えきれない努力と工夫が込められている。
 

突然だが、僕はいきものがかりの他にもBUMP OF CHICKENとRADWIMPSが好きだ。何ならいきものがかりを好きになる何年も前から聴いている。彼らの主戦場である「Jロック」とも「ロキノン系」とも称されるジャンルは、いきものがかりとはまさに対極の位置関係だ。
そんな彼らの凄さとは、洗練されたサウンドと意味深長な歌詞、そして王道とは少し逸れたアンダーグラウンド路線を突き進むことでコアなファン層を獲得していったことだろう。言うなれば、彼らの音楽は、練りに練られ品質だけにこだわった「最高級のコース料理」のようなものである。庶民には手を出しづらくとも、自らを欲してくれる人々に最高の品を届ける。それを十数年と続けてきて今の地位まで登り詰めているのだと思う。

そんな彼らも十分凄いのだが、いきものがかりは実はこれよりももっと凄いのではないかと思うところがある。かなり大袈裟な話だが、BUMPやRADのような他とは違うことをする少し突出したアーティストは、それだけで少し注目される感が否めない。しかしいきものがかりは、ある意味では普通の音楽を普通に歌っているだけである。そして、その「普通にする」ことこそとても難しいことなのではないか、と思う。
日本のポップスのフォーマットをしっかり守り、庶民に愛され、それでいて彼女らの味もしっかり出す、無駄な味はなくとも十分美味しい。そんないきものがかりとは、まさに「卵かけご飯」なのである。
「卵」「ご飯」という日本の伝統を使い、そこにいきものがかりという「醤油」をかけて自分達の味を付けることで美味しく、食べやすくさせている。
決してただの卵かけご飯ではない。いきものがかりが私たちに提供してくれるのは、数えきれない努力と工夫により作られた「最高級の卵かけご飯」なのだ。

もちろん、いきものがかりの曲のすべてが卵かけご飯ではない。中にはかなり攻めたコース料理のような派手やかな曲もある。さすがに卵かけご飯だけでは飽きが来てしまう、という所に不意にコース料理が来ることで、よりそれが美味しく高級に感じる。そしてまた卵かけご飯を食べることで素朴というありがたみを感じることが出来る。

渾身のコース料理を提供するBUMP OF CHICKENやRADWIMPSといったコアなアーティストに注目しすぎて、たまにいきものがかりのような在り来りな存在をじっくり考えないと言う節は正直あると思う。実際、BUMPやRADの音楽文は多数投稿されているが、いきものがかりの投稿は今僕が執筆している段階ではゼロだ。
皆さんもぜひ一度、日常にありふれ過ぎて注視してこなかったいきものがかりに、じっくり触れてみて欲しい。たまには、じっくりと卵かけご飯を味わってみて欲しい。

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