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『Paradise』は果てしなく

a-nation 2019 空の下で Shuta Sueyoshi が観せたもの

気付けば9月も半分を過ぎ、もう10月へ向かっている。朝晩は涼しくなり暑さ寒さの難しい気温の中で揺れている。恐らく世間的にはもう秋、けれどこれから私の夏と唯一無二のアーティスト、「Shuta Sueyoshi」の話をする。
 

8月18日、日曜日。avexが開催する野外ライブイベント「a-nation」。私は、1日目にAAAとしてヘッドライナーを務めた翌日のこの日ソロでトップバッターを担うShutaのステージを観るために、大阪に居た。
 

オープニングアクトが終わると、Shutaを観に来たファンがヴィジョンに映し出され始めた。遠くに集まるファンを見たら少し心細く感じたりもしたけれど、そんな不安とは比べ物にならないくらい、直接受け取れる音楽が楽しみなことの方が大きかった。
一体どんなステージになるだろう、何を歌ってくれるだろう。どんな衣装で登場するのだろうか、好きなダンスは観られるだろうか。

緊張しながら想像していた数秒先の世界が、いつの間にか現実に追いつき重なっていた。夏の終わりが、始まろうとしていた。
 

今年の2月から5月にかけて、幕張メッセでの追加公演を含む全13箇所19公演を駆け巡ったソロツアー“WONDER HACK”のライブを切り取った映像が流れる。6人からなる“SSdancers”に続き淡いピンクパープルのセットアップを纏ったShutaがステージに姿を見せた。観客を煽り、ファンからの歓声を浴びた。
 

《 Running out of time
   Don’t be a slave of love 》

堂々の1曲目はアルバム“WONDER HACK”から【I’M YOUR OWNER】。冒頭、“time”で時計の針のように動かす腕と、“love”で両手でハートを作り裏返すのが印象的だった。

大人の恋の駆け引きを描いた歌詞、普段身近にない言い回しも相まって、何処かミステリアスな雰囲気を醸し出すShutaが妖艶に踊り、歌う。フワッと浮く様な気持ちの良い感覚と音に対し細かく刻まれた鋭いキレ、そしてその緩急の繋ぎや境目に現れる魅力が、指の先や目線までの全身から伝わってくる。サビの前で白い光を放ったバックライトが、同じタイミングで白く照らした“WONDER HACK”ツアーの演出を彷彿とさせて眩しかった。
 

Shutaが名を名乗り、2曲目に【Shall We!!】、その後に【Run Away】とスピード感のある攻めのダンスチューンを続けた。SSdancersが脚を蹴って複雑なステップを踏む度、揃えた衣装のパンツの裾から覗く差し色の赤が良く目立っている。Shutaも左右の観客を煽りにステージを移動したり、戻ってきた途端にパワフルで激しいダンスを繰り出したりしていた。胸や腰、腕、脚、首と、身体のあらゆる部分に目を奪われ圧倒される。なんて格好良いのだろうか。全身を表現に使い、拳を突き上げ投げかけられた熱をこちらも負けじと跳ね返したら、そのまま勢いに乗り一気に駆け抜けていった。

曲によって変わる、それだけではなく曲の中でも色を変えるようにも思うShutaの歌声は、一緒に喜んだり隣で寄り添ってくれたり、かと思えば先を走ったり引っ張ったりもする。
ここまでの3曲には頼もしさがあった。手を伸ばしてくれるような歌詞もアッパーなサウンドで背中を押す強さになった。届ける歌声とパフォーマンスは足で踏ん張り何度でも立ち上がれるような絶大なパワーを与えてくれる。広い会場に反響し、照りつける太陽と共に熱気を帯びて後ろから迫ってくるように。
 

直後のMCでは先程までと打って変わってギャップを感じる姿を見せた。自身のライブとは違いどこか丁寧に喋る中、こまめに水分補給してねと言えば済む話を敢えて“乾杯”と言って、自動的に水分補給を促す。遠回りに思えて実は確実な近道が、この暑さにはよく沁みた。
しかしながら、何食わぬ表情で何も触れずに2Lのペットボトルを手にする姿には思わず笑わされてしまった。優しさの裏でわざわざ狙って遊びに行くところは言ってみればShutaらしかった。茶目っ気があって飾らず、正直で柔らかい。ああ変わらないなって、キュンとした。
惜しくも本人が言うには、“ややウケ”だったらしいけれど。
 

そんなこちらのときめきを他所に鳴らされた次の曲。ここから後半戦。このセットリストの中で歌うのはちょっとスパイシーで、空気を攫っていくようだった。
 

《 街灯の下遠く離れて 影を追って抱き締めたくって
  今までは届いてたのにここからじゃ届かない 》
 

前半から一転した【エルモ】。このサウンドが野外に似合うだろうな、聴けたらいいな、なんて抱いていた淡い思いが冒頭のギター音とShutaの歌声で涙になった。
 

《 信じ続けたまやかしの言葉 期限切れなら捨てればいいのに
  一人きりの世界から 手を伸ばす群青が胸を刺す 》

“捨てればいいのに”。そう歌って歩んでいた足を揃え一瞬立ち止まり、ものを投げるように手のひらを上に向け空中へ振った。その仕草と追う目線、目線の先の空。奇跡のように繋がっていた、ひとつひとつ。

まるで無限の感情が混ざり合う心の中みたいだ、ヴィジョンに流れる絵の具が水に溶ける様な映像を観てそんな風に思っていたけれど、鮮麗な色同士が混ざる様子や“不条理”という詞に合わせ黒と白の中に赤色が溶けていく様は、仮に偶然であっても意味を成しているように美しかった。ピンクとブルーのシーンは嬉しみと悲しみのように、喜怒哀楽のなかで向き合う色のように思えた。

後悔を想起させる仮定や否定、逆接、ネガティブや柔らかくない言葉により人間味を感じる奥深い言葉の紡ぎ。そのまま哀愁に乗せるのではなく反対にポップなサウンドに乗ったら、繊細で儚くどこか甘酸っぱいShutaの歌声で更に心地良く変化する。
ヘッドセットマイクで歌ったことや最後のフェイクは原曲のアレンジとは違っていたりしたことから新鮮さもあった。良い意味で少しずつちぐはぐで、それがとにかく魅力的だった。
 

【エルモ】の余韻からクラップで繋ぐ【Switch】。一緒に踊りたいと誘うShutaに観客も盛り上がる。ライブでは恒例になった簡単な振りのレクチャーもこの日は簡単に2回のみで歌唱に入ったものの、振り返ればスタンドの上の方、恐らく曲を知らない隣の男性、他のアーティストのファンの人も、沢山の人が腕を振って踊っていて、時々周りを見渡したくなる程のその光景と、遠くに目をやりながら笑顔を見せるShutaの姿、不意に零す喜びが誇らしかった。誰々のファンなど関係ない、今初めて出逢い二度と交わることの無いかもしれない者達で同じ時を過ごし音楽を共有し合えるのは、ファンやその周りの人、興味を持ってやってきた人が殆どのワンマンライブでは味わえない形だった。
 

《 日々憂鬱な何も起きない なんてフツウなDays 》というネガティブから始まるこの曲の結末は《 Cause you are so young, Gotta take a chance 》という勇気と希望だった。

楽しくて、また泣きそうになった。
震える手でも重いスイッチを押せたのは、Shutaの歌が上からそっと優しさを重ねてくれたからかもしれない。きっと今日の記憶も、そうやって糧になると感じた。日々の鬱や辛さに苦しくなった時は今日を思い出そうと、心の中で強く思った。
 
 
 
 

「さぁ夏にピッタリの新曲を用意してきました!」

幕張メッセ2daysでの2度、そしてこの日が3度目の披露となる新曲【With Me】。汗が滲む身体に吹く風の様に涼しく肌を撫で透き通る歌声、視覚的な楽しさと爽快感溢れる音の重なりが、正しく夏の空気に似合っている。

“視覚的”といってもその中身は様々で、照明がどうとかセットがどうとか、演出において気付くことの面白さは沢山ある。次々訪れるサプライズ的演出に鳥肌を立てることだって、数多く経験してきた。
この日のステージは15時の野外。普段のように照明を落とした空間に差すシルエットを反射させるような上手い光は無いし、Zeppを中心に回ったライブハウスツアーの時、“Zeppに持ち込む数じゃない”とまで言われたらしい、1度ではどこに何があったか覚えきれないぐらいに抜かりなく拘られた細かくて大きなステージセットも無い。
例えば、この日2番目に歌われた【Shall We!!】が“WONDER HACK”ツアーで歌われた時は心臓が鼓動する映像が流れたり、ステージ左右のセットには上から下にコードのようなものが垂らされ、血液が巡るように光ったりして世界観が統一されていた。

それでも、そういった仕掛けが何も無いシンプルなステージの上でも、曲達はそれぞれにしか出せないものを確立していたように思う。勿論【With Me】もそのひとつ、照明やセットで揺さぶられるものとは違う視覚的に楽しいステージとはまさにこのこと、それを現実に生み出す鍵に納得したところで凄いと息を飲むことしか出来ないけれど、瞬きも惜しい程に洗練されたパフォーマンスに心酔し、自然に身を委ねた。

SSdancersとShutaの、6+1が意識されたような振り。曲の初めから終わりまで一貫してSSdancersは2人ずつで、対称になったり同じように踊ったりしている。リンクするダンスや集合解散の切替、遠近感のある立ち位置、身体の向き等そのどれもが1番纏まった形で存在しているように思った。決して少なくは無いフォーメーションの変化、けれど、それもセンターのShutaを超えて移動するのは左右1人ずつ、また1番内側に居る者同士が入れ替わるのに抑えられている場合がほとんどで、目まぐるしい変化と無駄のない美が同時に存在することを知って感動した。
初披露時の映像を観て抱えていた期待を、生で観られた記憶に変えられた。これから先の情報解禁が、もっと待ち遠しくなった。
 
 

30分は早い、すぐに過ぎていく。
急に終わりを感じて、寂しくなる。

最後に歌われたのは【Paradise】だった。ファンを想って書いたといつかShutaが語ってくれた愛の歌。壮大なイントロから広がる楽園、楽しい世界。どこか別の大きな世界のことを歌っているのではなく今の話でありライブの度にそこがParadiseになる、ということ。Shutaが創るステージを今この目で目撃している、全員に通じる。

始まりを意味する1番の《 鮮やかな朝焼け 》が、2番は《 柔らかな 木漏れ日 》に変わる。《 雨上がり 》《 透き通る空 》と歌詞に出てくる色々な空模様が、共に過ごしていく時間の経過や様々な心境を思い起こさせた。雨と聞いて思い浮かぶのは、壁に縋るように気怠く、薄暗くて重たい空間。けれどその雨だって、いつかは必ず上がるのだ。

平成が終わる頃、初めて長崎へ行った。凱旋公演だった。
話をするうちに潤み赤くしたShutaの目からいよいよ零れ落ちた涙を今でも鮮明に覚えている。あの時の気持ちなんて私には分かり得ないけれど、もうどうにもならないほど、幸せを想った。雨が止むように流れ落ちきった最後の涙の粒を想像したら私も泣いて居られなかった。少し強がってしまっても、笑おうと思った。
 

Shutaに出逢えなかったら分からなかったことも、知らなかった景色も計り知れない位沢山あるように思う。私たちが照らす無数のライトが星空のように煌めくことも、ばらばらな想い出をまたもう一度別の夜に浮かべてくれる嬉しさも、夏の空気と風と一緒に太陽の下で観るライブの楽しさも、こんなに素敵なParadiseが、未来で広がっていることも。
 

敢えて正解を言わないで受け取るもののそれぞれの答えを肯定してくれるような曲が多い中、【Paradise】はShutaの思いが距離感がゼロになる程痛いくらいに届いて、胸がいっぱいになった。ファンの思うことは皆色々、でもきっと似通ったところに辿り着くのではないだろうか。出逢えて良かった、大好きだって、感謝したいって、ありきたりだけど、最後はやっぱりそう思った。

度々上を見上げ、指をさしたりしていたのが忘れられない。空のことを言った詞が何度も現れるこの曲を、屋根の1枚も挟まない空の下で聴けたこと。彩度の高い青ではなかったけれど、各々の好きなアーティストの色とりどりのタオルが生み出す虹とのコントラストが綺麗で、全てが宝物になった。目を瞑って、グッと力を込めた真っ直ぐなロングトーンが、下唇を噛んで微笑む姿が、かけがえのない愛が、宝石のように輝いて仕方がなかった。
 
 
 

《 My paradise! 》

1番最後に“俺の”と歌い換えられ溢れ出した多幸感を、遠くに離してしまわないようギュッと抱きしめ胸に仕舞い込んだ。
 

またこうして此処に、Shutaの目の前に広がる景色の中に居る約束をしたい。心の底から、ありがとうと伝えたい。呟くようなその声は耳には届かないかもしれないけれど、いつか心に、ぎりぎり届きます様に。
 
 
 

私の夏が終わった。
海や花火のようならしいものも遠い存在にある日常を繰り返しながら、少しだけライブに行った夏。このひと夏の思い出が夏は苦手で秋は待ち遠しい私の普通を変えた。Shutaがいつもと少し違う特別な夏をくれた。あの日の記憶を辿れば直後殴り書いたメモの荒ぶる筆跡も愛おしく思えた。暫く引きずる長い夏の中の短い30分のステージが、どこまでもキラキラしていた。

音楽にひたむきに生きて、限りなく追求し秘奥に向かうShutaの姿勢を尊敬している。
会場に別れを告げ、ぽつりぽつりと浮かんでくるこの先の夢も光も、またいつか叶うと願いながらShutaの声を再生する帰り道。
 
 

《 We keep on trying, flying to the sky
 夢で終わらせない Turn it up
  “Say yeah!” “Say yeah!”
  この胸に強く 刻むよ
  Make our paradise! 》
 
 

これからも飛躍し続ける。どこまでも行ける。
心に雨が降っても、雲が太陽を隠しても、Shuta Sueyoshiが観せる明日はきっと青空が広がっている。
 
 

広大な空に飛び込もう。
果てしないParadiseを、この胸に強く刻んで。

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