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「How-to」指示書を手に取って

更なる飛翔へ、Mrs. GREEN APPLEの辿り着いた「今」

空を飛べたなら、どこに行こうか。

 
2019年4月に発表されたMrs. GREEN APPLEの9thシングル『ロマンチシズム』全3曲のうち、2曲目に収録された「How-to」は、航空会社・エアアジアのCMソングタイアップを果たしている。MVではエアアジアの拠点である中部国際空港を使用し、機体と青空をバックに歌い上げられた。空の旅、新しい世界への一歩をイメージできる作品となっている。

 
EDMと生音が混ざり合ったサウンドに乗る、Vo.大森元貴の幅広い音域をいかしたメロディーが印象的に残る。サビの《空を飛べたなら》の高音から《何処行こうか》の低音までは1オクターブ以上も移動する。8拍だけで2オクターブを使う驚異的な技巧だ。

 

この歌詞の《飛べたなら》は、「飛べるなら」と絶妙にニュアンスが異なる。後者は「もしいつかそうなるなら、そうできるなら」といった希望を幾ばくか感じられるが、人間にとって空を飛ぶことは空想でしかない。これを踏まえると、この音程からは《空を飛べたなら》で憧れるように天を仰ぎ、《何処行こうか》で足元を眺めて思案するイメージが湧いてくる。

 
 
ただ晴れやかで大空が似合う曲ではない。歌詞を見れば、ミセスの鳴らす警鐘はこの曲でも健在だとわかった。作詞者でもある大森は東京で生まれ育った当時22歳の若者だが、それでいて身の回りに当たり前にある便利でスマートな世の中を疑い、危惧している。利便性の影で廃れていくアナログな繋がりや、そこに生まれる愛情・温かさを人は忘れていないか?

 

そして、《行き方》/《生き方》は《比べるまでもない》し《比べる意味もない》。どのようにすべきかを説いた実用書があったとしても、最終的な意志は《貴方》に委ねられている。そんなことを歌ったこの曲の表題が「ハウツー」というのは逆説的で面白く、穿った見方をすれば歌うことによってそれを啓発しているという一種のアイロニーとも受け取れる。

 

時代の変化、人の波、情報の渦、その中で忘却し麻痺していく日々に《ちゃんと好きだったあの子のこと》や《あの日の決意》を置いていかないでほしいといった切なる願いが込められているようにも感じた。

 
ライブでは、同年6月から開催された『The ROOM TOUR』で初披露されている。彼らのデビュー当時からの切り札曲である「パブリック」の後に、最後の曲として演奏された。MVのイメージを大きく裏切り、舞台面のスクリーンは雷雨の降りしきる曇天を映し出した。その中で5人のアンサンブルは力強く奏でられ、《WOW OH》の部分で観客が声を揃えると会場に熱い空気が満ちた。

 

MVの印象が強かった私には予想外かつ唐突に感じられたが、これこそが曲の本質なのだろうと思う。荒天の空に飛び立っていく勇気。その裏付けに一つの確信と意志があった。
自分たちは何者で、何を歌い、何を奏でるのか。ティーンポップにアイデンティティを見出してみたり、ポストロックにシフトしてみたり、それは一人の若者の成長のような自分探しの旅だったのかもしれない。そして今、この世の中をどう捉え、どう生きるか、音楽に何を込めるかといった基本姿勢を定義できたのだろう。
間にいくつかフェスの出演を挟みつつ、このツアー以外ではまだ披露されていない「How-to」は間違いなくツアーの鍵になる曲だったのではないだろうか。

 

「How-to」の発売前、Mrs. GREEN APPLEは台湾の野外フェス・大港開唱で初の海外公演を果たした。今後、10月には17曲を収録した4thアルバムのリリースを控え、11月には再び台湾でワンマンライブの開催が決定している。
挑戦してより高みを、まだ見ぬ世界を目指していく意思表示。そんな彼らを押し上げる力強い声援になるのなら、私はこれからも《WOW OH》を叫び続けたい。

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