2634 件掲載中 月間賞発表 毎月10日
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

書き手としての寺嶋由芙

あるいはやわらかなラブレター

本年9月18日に寺嶋由芙は自身11枚目のシングル「恋の大三角関係」を発売した。
表題曲は非常にキャッチーで現代的、「古き良き時代からきた」をキャッチコピーにしているアイドルとしてはなかなかギャップがある良曲である。

では、ギャップのない方を眺めてみよう。
カップリングは「君も好きだったんだね、夏」。表題曲と打って変わって、どの年代ともつかないがどことなく昭和の風を感じる曲だ。なお寺嶋由芙本人は平成生まれである。
作詞を元ふぇのたすのヤマモトショウ氏と寺嶋由芙でタッグを組んで行っている。
全体的なベースはヤマモトショウイズムとでもいおうか、フィロソフィーの味が濃いものになっている。
一方で、歌われる対象への「愛」のようなものに、寺嶋由芙の意気を見て取れるのだ。

寺嶋由芙作詞作品といえば「いやはや ふぃ〜りんぐ」があげられる。
寺嶋由芙といえばゆるキャラ大好きアイドルとして知られ、各地のゆるキャライベントに出没している。
「いやはや〜」は、この曲のためにユニットを組んだ「ゆるっふぃ〜ず」と呼ばれるゆるキャラ10体の特徴を溶け込ませながら書かれたものだ。
寺嶋由芙の溢れるゆるキャラ愛、あるいは波乱万丈な寺嶋由芙のアイドル人生を、存在しているだけで励ましてくれた「ゆるキャラ」に向けた感謝状のような作品だった。
アップテンポで、画面も華やか、それでいてちょっとくすぐったい恋の始まり。ゆるキャラとまた歩み始める第一歩だった。
なお、ゆるっふぃ〜ず出身キャラは軒並みゆるキャラグランプリなどで好成績を残すことが多く、3体がグランプリを獲得している。

その「いやはや〜」のカップリングは、寺嶋由芙と、ミスiDで寺嶋由芙とつながりがある詩人の文月悠光の作詞である「ぼくらの日曜日」。
詩人作詞であることを感じさせる文体ながら、そこにあるのは全国の寺嶋由芙ファン、通称ゆふぃすとへの愛だった。
「いやはや〜」のリリースイベントは一時期とある店舗に固定されて行われたこともあり、カップリングの歌詞にかけて「ここで待っている」という旨の名前がついたキャンペーンを展開していた。
また歌詞さながら、その後の寺嶋由芙は、全国ツアーなどを展開し、今まで会いに行けなかったゆふぃすとに、自らの足で会いに行った。
日曜日になると歌われる、今日という日に寺嶋由芙と共にいられる時間は終わってしまうけど、大丈夫、またすぐに会えるからね、そんな寺嶋由芙からのラブレターだった。

ラブレターは今度は架空の相手へとわたった。浜辺の小さな恋の相手。あるいは季節というとらえどころのないシンボルへ。
夏という温度感、暑すぎてつらかった、それも過ぎ去ればきっと愛おしい。
失恋でありながら、寺嶋由芙の「恋人だったの」のような涙と血が止まらない辛さ苦しさではなく、裁縫の針で少し刺してしまったような、ちくりとした、涼やかな切なさ。
暑い。暑かったからこそ、夏は素敵なのだ。

ここまで書いてふと、寺嶋由芙はやはり今回も、ゆふぃすとへのラブレターを書いたのじゃないかと思い始めた。
寺嶋由芙は夏生まれである。そしていつも、暑すぎる日が嫌いである。
しかしながら、夏はアイドルイベントなどが多く、即ちファンとたくさん会える日があるということでもある。夏は毎年、そういう意味でも熱い。
そう、暑くたって、本当はとても楽しいのだ。夏。

いつかもし彼女がいなくなって、その時ゆふぃすとが後ろを振り返った時、あの日あんなに熱くなって彼女を追いかけていたことを、どう思い返すのだろう。
「ここで彼女が歌っていたんだ」と、訪ねた先で思い返したら。
寺嶋由芙は、遠い遠い未来に向けて、ゆふぃすとたちに、タイムカプセルを手渡したような気がした。

  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい