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『HELP』と言える世界は、きっとある

flumpool 9th tour 2019「Command Shift Z」に寄せて

 
 
「語弊を恐れずに言うと‥僕は声が出なくなって、良かったと思っています」
 

flumpool再始動後の全国ツアー『Command Shift Z 』にて最新シングル表題曲である『HELP』を披露する際、ボーカル・山村隆太さんはスポットライトを浴びながら、そう独白した。
 

初めてこの言葉を耳にしたときは衝撃だった。
 

flumpoolは隆太さんが歌唱時機能性発声障害と診断されたことを受け、その療養のため約1年間活動を休止していた。メジャーデビュー10周年を迎えるタイミングでの活動休止。メンバーはもちろん多くのファンもきっと同じ空間で彼らのアニバーサリーを祝えることを心待ちにしていたことだろうし、1年間にわたる活動の空白は勿体なかったという意見も正直否定はできない。隆太さん本人も“歌をうたう立場からもう身を引いてしまおうか”と考えてしまうまでに追い込まれたこともあったという。
 

しかし、“隆太さんの声が出なくなる”という出来事がなければ、『HELP』という曲は生まれなかった。実質の『HELP』ツアーであるともいえる『Command Shift Z』も然りだ。
 

「声が出なかった時のことを思って、かいた曲です」
 

《押し殺したはずの声 喉のあたり突き刺さって まして弱音なんて吐いたら 見放されてしまいそうだ 心配は要らないと うそぶいた 自分なら隠せると思っていた》
 

昔から自分の弱さを見せるのが苦手で、声が思うように出せないときや、それによりライブが思うようにいかなかったときなどに周りから心配されても「大丈夫だから」「自分でなんとかするから」と強がることしかできなかったという隆太さん。
 

“誰かを頼りたくない”、“馬鹿にされるのが怖い”、“弱い自分を見られたくない”‥大人になるにつれ、どうしても「助けて」という声をあげづらくなってしまう現在(いま)の世の中。逆に助けたい気持ちがあっても助けることが叶わなかったりなどと、近しい悩みを抱えている人も多いのではなかろうか。
 

《君と寄り添いたい分かち合いたい 喜びだけじゃなく 悲しみも》
 

活動休止前最後のライブとなった「Re:image」パシフィコ横浜公演で、「こんな声になっちゃったけど‥!」「ごめんね、最近声の調子が悪くて」と隆太さんは自らの口で観客に声の不調をカミングアウトした。
 

今思えば、あれは隆太さんが私たちに向けた『HELP』だったのかもしれない。ライブの終盤、隆太さんがついに歌うことをやめてマイクを下ろすと、自然に観客にバトンタッチされた歌唱が会場を包んだ。flumpoolの歴史に残るといっても過言ではなかったあの瞬間から、活動休止を乗り越えた今に至るまでflumpoolとファンの絆はより深まったように感じている。
 

“ひとつ戻って、また同じ場所へ進み出す”
 

音楽をつくる際のキーボード操作にちなんで名付けられた、再始動後の全国ツアー『Command Shift Z』を完走し、名実ともに復活・リベンジを果たしたflumpool。この春から秋にかけて、全国各地で彼らを待ち望んでいた人たちの沢山の笑顔が咲いたことだろう。
 

「また4人で、音楽がしたい」
 

flumpoolのメンバーも心から楽しんで演奏している様子で、ライブを観ているなかで皆でここに戻ってきたんだという感覚を何度もおぼえた。皆で幸せな空間を共有している喜びなどから、公演中しばしば涙していた隆太さんが本ツアーでは印象深かったが、私たちファンとの絆がさらに増して、良い意味で“弱さ”を見せることができるようになったということではないだろうか。
 

今回のツアーにも組み込まれていたパシフィコ横浜公演では、隆太さんがライブ終盤に今度は感極まって歌えなくなってしまい、マイクを口元から下ろした。すると活動休止直前の同じ場所での“あの日”を彷彿とさせる大合唱が会場に響き渡った。目に涙を浮かべながら観客の歌声を受け止めていた隆太さんの表情は今でも鮮明に脳裏に焼き付いている。それは2年前の悔し涙とは違った、まぎれもない嬉し涙だった。
 

《片方で泣いたって 片方で笑えるなら生きてゆける》
 

もちろん生きていれば楽しいことだけでなく、辛いことがたくさんある。もちろん世界には幸せなことだけではなく、悲しいことがたくさんある。
 

「このflumpoolという音楽の場所だけは、皆が笑えるような場所にしたい」
 

隆太さんがこう話す通り、彼らのライブに足を運べばその場所は楽しく、幸せで、笑顔になることができると私は感じている。今回の『HELP』、『Command Shift Z』でも言えることだが、flumpoolの音楽とライブには彼ら自身のドラマがある。そして何度も聴くライブ定番曲も、待ち望んだ新曲も、久しぶりに披露されるあの曲も、その音や歌詞、込められたメッセージが聴く人それぞれの状況や心境に寄り添うようにかたちを変え、ダイレクトに届き、伝わるのだ。この魅力がどうしても私の心を掴んで離さない。
 

2019年10月1日をもってデビュー11周年を迎えたflumpool。
 

「11年間求めていたものは、みんなの存在だった」
 

隆太さんの声のリハビリをはじめとする活動休止中の彼らの復活への努力はとても想像がつかない。『HELP』と声をあげたことで手を差し伸べてくれた周りの人や、待ち望むファンがいたから、諦めずにここまで来れた。声が出なくなっていなかったら、活動休止をしていなかったら。見つからなかったものがあるという。
 

「自分の弱さを伝えられることは、自分の強さなんだと今は思います」
 

逆境を乗り越えさらに強くなり、ファンとの絆が深まった彼らとともに歩むこれからに、期待を膨らませずにはいられない。全国ツアーを終えたばかりの彼らだが、年末12月30日にルーツの地・大阪城ホールでのワンマンが決まっている。リアルタイムで進化している“今”のflumpoolを全力で見届けたいと思う。
 

《心つないで 境界線超えて 心つないで Help yourself,help myself》
 
 

※《》内の歌詞はflumpool 『HELP』より引用

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