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完璧じゃなくていい

flumpool 9th tour 2019「⌘⇧Z」仙台公演に寄せて

2019年8月17日土曜日。
flumpool 9th tour 2019「⌘⇧Z」@仙台サンプラザホール

これまで10数回flumpoolのワンマンライブに行かせてもらっているが、こんなにも胸がいっぱいになったライブは他にない。
随分と時間が経ってしまい、多少記憶が曖昧になってきてしまったが、この日のことを書き記しておきたいと思う。
 
 
 
 

2017年12月、ボーカル山村隆太の歌唱時機能性発声障害の発症に伴い、ツアー半ばにして活動休止を発表したflumpool。
今年1月、バンド結成日に、デビュー前路上ライブを行っていた大阪、天王寺でゲリラライブを行い、活動再開を宣言した。
復帰ツアーとなる今ツアーは、前回ライブを中止した4ヶ所からスタートし、全国22ヶ所24公演を回るものだ。

仙台公演はツアー初日からすでに3ヶ月が経過し、16公演目という終盤にかかり始めている上、復帰後すぐに行われたファンクラブツアーでも仙台公演があったにもかかわらず、この日は隆太さんがやけに気合いが入っていることが、SNSやファンクラブサイトのブログから伺えた。
 
 
 
 

気合いが入りすぎたのか、かなり大音量の雑音が混じるという機材トラブルとともにスタートした仙台公演。
直後のMCでは機材トラブルさえも笑いに変える、いつも通りの緩いMCを展開した。

そのMCの中で語られた仙台という地への思い入れ。
デビューしてから初めてのツアーの初日のまち。
flumpoolの始まりのまちと言っても過言ではない。
そんな仙台に帰ってこれたことが嬉しい様子がひしひしと伝わってきた。

念願の八木山ベニーランド(これまでの全国ツアーでも度々ネタにされてきたローカル遊園地)に行けた話で会場を笑わせたあと、「⌘⇧Z」というツアータイトルに込めた思いを語った。
 

「ただ声が出るようになったからの復帰ツアーにしたくない。」

「1回辞めた学校や会社にもう一度行く、別れた恋人とまたやり直す、それはすごく勇気がいること。」

「一度は諦めた音楽の道を、またこの4人で進んでいきたいと思った。」

「そんな強い想いをここから見せていくので受け取ってください。」
 

そんな言葉とともに始まった中盤戦。
宣言通り、パワーアップした力強い歌声で次々と歌い上げていく隆太さんと、それに寄り添い楽しそうに音を奏でていく誠司さんと元気さんと一生さん。
4人が鳴らす音楽にただただ魅了されて、圧倒されて、約9年前、flumpoolを好きなった時の感覚を思い出した。
 
 
 
 

思えば活動休止前の数年間は、普通じゃないことが当たり前になっていた。

ライブ前、ライブが楽しみな気持ちと同時に「今日は隆太さん声出るかな」っていう不安もあった。
自分が行かないライブでは、その日のライブの内容よりも隆太さんの喉の調子が気になった。
テレビ出演が決まれば、「ちゃんと声が出ますように」と祈りながら放送日を待った。

flumpoolの音楽が好きで、メンバーが好きで、ライブやリリースを楽しみにする気持ちと共に、いつも隆太さんの喉の調子への不安が拭えなかった。
今から思えばこんなの普通じゃなくて、でも私を含む当時の多くのファンは隆太さんの声を心配することが当たり前になっていた。

声が出ていないのを目の当たりにすると、どこからか恐怖心が沸き起こり、「もうやめて」「もう歌わないで」って泣き叫びたくなった。
flumpoolが好きなのに、flumpoolを見ると苦しくなった。
好きな気持ちよりも不安や恐怖心が上回った時、flumpoolが無期限の活動休止を発表した。

復活してからも初めは不安が拭えなかった。
「ファン想いの隆太さんだから、これ以上は待たしちゃいけないと思って、まだ不完全なのに復帰を決めたのではないか」
「またすぐに声が出なくなってしまうのではないか」
そんな不安がずっと心の奥底に残っていた。
 
 
 
 

でも、この日ライブを見て確信した。
《隆太さんは、flumpoolは、もう大丈夫だ》

不安なんて微塵も感じず、ただただ、大好きなflumpoolの音楽に身体中が包まれるその感覚は、不安に押しつぶされて忘れ去っていた、他のものには代えがたいライブでの幸福感だった。
 
 
 
 

終盤に差し掛かろうとする頃、曲と曲の間で隆太さんは「今では声が出なくなって良かったと思っています。」そう語った。

ボーカリストにとって声が出なくなることは、どんなに辛いことだろうか。
それは私にはきっと想像がつかないような辛さなんだと思う。
にも関わらず、隆太さんはそれを良かったと言った。

そんな風に言えるなんて、彼はどれだけ強い人間なんだろう。
そんな風に言えるなんて、彼は絶望の淵で何を見たのだろう。

隆太さんはこうとも言った。
 

「人に弱さを見せるのが苦手で、周りの人が心配してくれても大丈夫と言ってきた。」

「もう本当にどうしようもなくなって初めて、助けを求めたら、たくさんの人が支えてくれた。」

「時には弱さを見せることが強さになるのかもしれない。」
 

隆太さんが活動休止の中で見つけた1つの答え。
《弱さを伝えることはそれもまた強さである》
その答えは1つの曲になった。
 
 
 
 

『HELP』
 
 
 
 

‘押し殺したはずの声 喉のあたり突き刺さって’

‘まして弱音なんて吐いたら 見放されてしまいそうだ’

‘心配は要らない とうそぶいた’

‘自分なら隠せると思っていた’
 
 
 
 

涙が出ないわけがない。
こんなにもストレートな歌詞がこれまであっただろうか。
今、隆太さんが復帰してflumpoolが再び活動をしていることは、奇跡なんだと痛感した。
私には計り知れない葛藤も苦悩も悔しさも絶望も全部、ストレートにぶつけてくる歌詞に涙が止まらなかった。

そして、気づいた。

隆太さんも泣いている。

あんなに感情を露わにして歌う隆太さんを初めて見た。
涙声で歌う隆太さんを見て、また泣けた。
そんなお客さんの表情を見て、また隆太さんも泣いた。
 
 
 
 
 

ライブ中、何度も涙で言葉を詰まらせながら「ごめんね」と「ありがとう」を繰り返す隆太さんに、会場からは幾度となく拍手が起こり、鳴り止まなかった。
そんな様子を見て、また隆太さんは言葉を詰まらせ、そんな隆太さんに応えるように、止まりかけていた拍手が再び大きくなった。
鳴り止まない拍手に、仙台の人の温かさを感じた。

私自身、仙台に住み始めたのは3年程前で、仙台が地元というわけではない。
でも、3年住んだからこそ分かることがある。

多分、仙台の人にはわかるのだ。
どん底から這い上がってきた人の気持ちが。
東日本大震災という未曾有の大災害を経験したにもかかわらず、前を向いていこうとしている人達だから。

隆太さんもそれに気づいてたからこそ、その優しさがしみたのかもしれない。
 
 
 
 

本編最後の曲の前、隆太さんは
 

「こんなにも歌えなくなるとは思ってもいなかった。」

「みんな優しすぎるよ。」

「今日はその優しさに甘えきってしまってる。」

「ごめんね。」
 

そう言った。

嬉しかった。
今まで、ステージの上で歌っている時は、強く完璧なボーカルであろうとしてくれてた隆太さんが、私達に甘えてくれた。
いつもどこか遠い存在に感じていた隆太さんを、初めて近くに感じた。
 
 
 
 

予定していたアンコールも全て終わり、ほかのメンバーも楽器を置こうとしたその時、隆太さんが「ちょっと…もう一曲…」と言った。
隆太さんがその場で急に言い出したことだったようで、メンバーは驚いた顔をしながらも、その言葉に頷き、軽く打ち合わせをした後、再び楽器を持った。
 

「今日は色々やらかしたから、もう一曲やってもいいですか!」
 

予定外のアンコール。
一度は照明もバックのLEDパネルも終演に向けた仕様にしたにもかかわらず、演奏が始まると同時に、寸分のズレもなくライブ用の演出に変わった。
いつも隆太さんはライブの最後にスタッフさん達のことを日本一と言っているけど、この時は私も心の底から思った。
flumpoolのスタッフ陣は日本一だ。
 
 
 
 

ライブが終わってからは、ずっと茫然としていた。
帰路について、家に到着しても茫然としていて、でも、ふとした瞬間に、理由もなく再び涙が込み上げた。

楽しかった気持ちや、嬉しかった気持ち、感動や、幸福感、言葉にしきれない色んな気持ちが溢れかえって、ただただ胸がいっぱいだった。

こんなにも胸がいっぱいになったライブは初めてだった。

そして、ライブを通してはっきりと分かった。

《flumpoolは完璧じゃなくていい、ありのままのflumpoolが1番かっこいいんだ》
 
 
 
 

あの日から2ヶ月程経って、⌘⇧Zツアーも無事に大成功で幕を閉じた。
ツアーが終わると共に、年末のライブ開催と2020年のアルバムリリースが発表された。
flumpoolはここから再び始まるのだ。

これから始まるflumpoolの新章で、私は完璧なflumpoolを見たいわけじゃない。
ありのままの、等身大のflumpoolを見たい。

たとえ、もしまた、隆太さんの声が出なくなって歌えなくなる日が来たとしても、今度は隆太さんの代わりに私達ファンが歌おう。
今までたくさんの音楽でflumpoolに支えてきて貰った分、これからは私達が支えていきたい。
だから、苦しくなったら、めいいっぱい私達に甘えて欲しい。

完璧じゃなくたっていい。
カッコ悪くたっていい。
flumpoolが思っていることを、私達に届けたいと思ってくれていることを、どんなに不恰好でも、flumpoolらしく、嘘偽りなく真っ直ぐに届けてくれれば、それでいい。

完璧じゃないflumpoolをこれからもずっと応援し続けていきたい。

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