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2017年6月28日

oyashirazuitai (21歳)
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バンドマン

My Hair is Bad

元カレと同棲していたとき、お金がなくて とりあえず着ない古着や聴かないCDを売った。
深夜、彼が夜勤で居ない。妙に寂しくて眠れないのか、行動を見張られていない安心感からなのか、アパートを出て 高円寺の道を足早に進んだ。中古のCDも売ってる、古本屋みたいなそんなとこ。何枚か持っていたアルバムを売った。その中に、My Hair is Badの「narimi」があった。ボーカルが女々しくて、なんかちょっと気持ちの悪いことよく歌ってるんだよな。このアルバムのジャケット好きだ。綺麗。大きなお金にはならなかったけれど、でもそのお金が大切だった。バンドマンよりも、面倒くさい彼のこと大切だった。
 
 

一昨年の夏の終わり頃、地元に帰ってきた。やりたくない仕事を簡単に捨てて、そのバチがあたって なんとなく一緒に居た彼氏ともうまくいかなくなって、かっこいいなと思っていた東京に居ることを途端にダサく感じた。
 
 

翌年、スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2016。1人でツアーファイナルを観に行った。
出ているバンドのこと、4つとも知ってた。
そういえば あの時「narimi」売っちゃったな。あの、ちょっと気持ちの悪いこと言うボーカルが居るバンド。「真赤」っていう曲はなんだかちょっと好きなんだよ。
 
 

意外と背丈があるんだな。ボーカルの人。椎木くんていう人。顔立ちが可愛らしいんだよね。
スリーピースバンド。ベースがバヤさんで、ドラムがじゅんさんでしょ。そうそう。知ってる。
 
 

マイヘアの演奏が始まり、無意識に人混みを掻き分けるようにして前へ前へと進んでいたと思う。音がかっこいい。声がせつない。言ってること なんか恥ずかしくてちょっとダサい。
でもめちゃめちゃかっこいいじゃん。
なにこのバンド。なにこのバンド。
バンドマンじゃん。
演奏中、そんな風に思っていた。言ってる意味がわからないって思われるかもしれないけれど、本当にただ 彼らのことを(バンドマンだ)って、そう思った。
だって本当にバンドマンだったから。
 
 

演奏中、ずっと涙が止まらなかった。
それで いろんなことを考えてた。逃げてばかりの生き方の事とか、わざわざ自分から不幸に足を突っ込んできた事とか、許されようとするくせに人を全く許せない事とか。
でも涙が止まらなかったのは そんなくだらない自分のせいではなくて、目の前に居るバンドマンのせいだった。
 
 

うまく言えないあの時の感覚。かっこよくてかっこよくてかっこいい。かっこつけてるんじゃなくて、マイヘアの あの3人の生き方が あのライブをつくって あのかっこいいをつくってるみたいな。
 
 

大袈裟かもしれないけれど、わたしは マイヘアのライブを見て まだ生きようと思った。
椎木知仁はそんな詞を歌ったわけじゃないけれど、ステージの上から「ダサくてもお前らしく生きろよ」って言われてるみたいだった。
そんなライブを見せられた。
 
 
 
 
 

その日からちょっと経って、また「narimi」を買った。あの頃はバンドマンよりも大切なものがあって、CDを簡単に売ることができたこと なんだかちょっと不思議。
My Hair is Badに恋をして、その後も何度か彼らのライブを観に行った。何度行っても彼らの生き方に、ライブに、恋してしまう。
来月も、フェスなんだけれど 観に行く。
また もっと 好きになってしまうだろうか。
 
 

そういえば、地元で新しい彼氏ができた。ずるくて賢くて犬みたいな人。車内で流れるマイへアに合わせて助手席で口ずさみ、「めいちゃんがいつも聴いてて覚えちゃった」なんて笑ってる。きっとこの人と結婚する。
 
 

今は、この人のためにマイヘアのCDを売ることができない。だけど この人と離れる気もない。ちょっと前のわたしは何かを守りたくて何かを捨てたけれど、今はもう ぜんぶ欲しい。何かのために 自分の好きなもの1つ捨てる理由なんてどこにもない。
 
 

自分は前よりも従順ではなく、難しい人になってしまったけれど、あの日 真夜中 キラキラした高円寺の道を足早に行くわたしよりも 殺風景な田舎道を運転する今のわたしのほうが、
なんか好きなんだ。
 
 

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