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無常の世界に向けてのメッセージ

ソフト・マシーンの音楽とロバート・ワイアットのまずはご挨拶から

この世は無常である。
無情であるとも言えるけれど、仏教の言葉を借りれば、常に変わり続ける世の動き、人の心情。変わらぬものはないんだろう。
若きもいつかは老いる。
良いことは続かないし、悪いこともずっとじゃない。

個人的な事を書けない。抽象的な話になるけれど、どうかお許しください。

僕には信じたいことがあった。
でもそれは単なる思い込みだったんだと今更になって気付かされて。なんたるこのまぬけ感。
恥ずかしくて恥ずかしくてやってられない。
そういう事もあるだろうけれど、信じたいことが自分の想っているようなものじゃなかったら、これから何を信じたら良い?

こういう事は以前にもあったかもしれないけど、年を重ねると余計に自分が馬鹿みたいに思える。

僕はそんなある日に、
ソフト・マシーンのアルバム、「Volume Two」を聴いた。
今でもその慣習は変わらない。
ただ、無常では無いと、
今、言い切れるのはこれかもしれない。

ソフト・マシーンの音楽は無情である。
悪いように取らないでいただきたい。

音楽の基盤はジャズである。
最初の何枚かのアルバムはサイケデリック、ポップスではない「ポップ」、ロック、なんとも説明しづらい音楽性。
3作目以降はエレクトリックジャズからジャズフュージョンへと変わっていく。
常に変わり続ける音楽。
一枚一枚、変化してゆく、これこそ無常だと思う。

自分が今まで何度となく繰り返し聴き続けたアルバムは、
4作目「Fourth」と2作目の「Volume Two」だった。

「Fourth」のアルバムにはマイク・ラトリッジの素晴らしくキレたオルガンとエルトン・ディーンの狂ったフリーフォームのサックスが聞こえてくる。根底にあるヒュー・ホッパーのベースの影の存在感は壁と滝みたいだ。そしてロバート・ワイアットの美しいリズムの曲線に乗って異空間が此処に現出する。
ロバート・ワイアットのドラム、
これが絶品である、と誰かが言ったのをずっと覚えていて、それはまさしくその通りだと心に刻みつけて、ずっとずっと聴いた。

ロバート・ワイアットは「Fourth」を以てソフト・マシーンを脱退するが、音楽性と意識の違いからグループを追い出される形になってしまったらしい。

そこに在る感情を聞くのは、よそう。
「Fourth」の中にある、いびつなもの同士の異様な絡まりと、拮抗と対決の感覚が、自分の壊れた世界を修復してくれるような気がしている。
これを聞けなかった君、残念だと思う。
聴かせなかった僕は正解だと思う。

とにかく自分の感覚はみんなとは全然違って狂ってるのかもしれない。けれど、インターネットで調べても、いろんな雑誌や特集本を見ても、これらを好きで、且つ素晴らしいと思って聴いている人たちがいるんだと知ると、狂ってるのは別に誰でもないと思う。
この演奏を残した素晴らしい人、僕は敬意をもってこれに向き合おう。

敬意が何かなんてわからないと思う。
音楽を今の時代に聴いている人たちの好むものとはまったく異質な傾向である。
だが、僕はこれを愛する。
ソフト・マシーンを聴く自分は、
自分にとって正しい決断である。

今、僕はSOFT MACHINE「Volume Two」をずっと繰り返し聴いている。何度も何度も聴く。
これは慣習なのだ、と宣言しよう。

つらいことがあればこの世界に浸かりたい。
信じられないもの、信じられるもの、どちらも今は何の関わりもない。敬意ってなんだ。誠意って何かね?
つらいことだと思いたくない。

その話は関係ない。

ソフト・マシーンに於けるマイク・ラトリッジの演奏として気になる点は、「Volume Two」にはピアノが効果的に鳴ることだろうか。ヒュー・ホッパーのベースはギターみたいにビリついている。
ロバート・ワイアットのドラムも何処か遠い音像で響いてくる。
この音響の傾向は、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスの初期と通じる気がする。
実際にも、ジミ・ヘンドリックスとソフト・マシーンとは幾らかの交流があったらしい。
「Volume Two」の曲中にも歌詞でジミとミッチとノエルに賛辞を贈っている。
 

僕はこれを夜の音楽として聴いた。
もしも人混みのなかでこれを聞いたなら、音楽と音響と共に世界が動いていく感を覚えることだろう。

何が素晴らしいとは言わない。
いや、自分にも分かっていないのか。
けれど僕はこの音を聴きたい。
これからも忘れないんだろう。
自分の心情とはなんの関わりもない。
だからこそずっと聞いていられるんだろう。
 

音楽の歌詞を自分の心情に絡めない。
音楽のかっこよさを求めてない。
ダサいのが何かは分かってるけど、言わない。
音楽のどこが良いっていう感覚は人それぞれ。
共感があれば嬉しいけれど、互いに相容れないところは必ず出てくる。

僕は音楽の何を?聴いていこうか?
探してた答えは何処にもなかった。

ソフト・マシーン「Volume Two」の全体で、好きな場面は多々あるが、1つだけ素晴らしい点を挙げておこう。

それはまず、
最初にロバート・ワイアットが言ってくれる。

Good evening
グッドイヴニング

ただそれだけ、挨拶をしてくれるんだ。
そうだよな、挨拶をしてくれる。
挨拶って良いよね。

「こんばんは」「今晩は」
たった一言、
でもそれがうれしい。

救いがあるとすればここに尽きる。

どんな言葉の意味よりも、
心に響く何気ない一言。
 

もうそれでじゅうぶんだろ。
 
 
 

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