2491 件掲載中 月間賞発表 毎月10日
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

ちょっとした片想い

カネコアヤノへの恋文

カネコアヤノの歌を聴くと、彼女に恋をしてしまったように感じると、友人に打ち明けられた。それを聞いて僕は先に言われてしまったと思った。
別に、アーティストだし、有名人なのだから、先に言われてしまったというのもお門違いな話なのだが、なぜだが胸が苦しくなった。

初めて聴いたのは上野の野外ステージにてパンダ音楽祭での弾き語り、ひらひらした白いドレスを着て、ふらっと裸足で夢遊病のようにステージに出てきて、サラッとねちっこい歌を歌って、すぐに退場していった。
何かわからないけど気になった。何か異質なものを観てしまったような気分だった。

さっそくApple Musicで聞いてみる。あぁ、この感じ、なんとなく不安定で、でも力強くて。
ああ、この曲、ライブで演奏してた曲だ。初めて聞いた曲でも耳に残るキャッチーさがある。
とりあえず、全アルバムを遡って聞く。何か嫉妬にも似た感情が沸き起こってきた。

カネコアヤノの新譜がApple Musicに追加された。タイトルは『燦々』。どこか遠くを見つめる冷めた表情のネコがジャケットだ。
一曲目の「花ひらくまで」を聴いて、これから彼女が音楽家として花開いていく姿が浮かんだ。
このアルバムは名盤に違いないと感じた。

彼女の歌を聴くと、中学時代の恋と同じ感覚を思い出す。相手のことをあまり知りもせず、なんとなくこの人はこういう人なのだろうと妄想し、悶々し、恋い焦がれる。
鼻歌を歌いながら歩いてる彼女の後ろを一歩引いて歩いてみてる。
雨上がり、ジメジメする夏の昼下がりに彼女は麦わら帽子を被り、ママチャリで去っていく。
この子は花壇のチューリップをじっと見つめて、何を感じているんだろう。
変わらないようで、季節の移り変わりと共に彼女はいろいろな一面を見せる。
きっとすぐ人を好きになって、離れて、いろいろ自分の感情を確かめている人なのかな。
気がつかないところで男をたくさん傷つけていそうだ。
いろいろな妄想が頭の中をぐるぐるさせる。

2019年10月12日。地球最大規模の台風ハギビスが日本を襲った。
僕はその日、GEZANが主催する全感覚祭に遊びに行くつもりだったが、台風直撃予報によって中止になり暇を弄んでいた。台風の前では人は無力だ。この台風のせいで日本中のイベントが何本飛んだのであろう。しかし13日の深夜に渋谷の7つのライブハウスを使って全感覚祭を開催するという発表がtwitterであった。この数日で7つのライブハウスの日程を押さえ、演者をブッキングし直した労力は計り知れないでろう。こんな奇跡のようなイベント、見に行かないわけはない。タイムテーブルを眺めながら、どこの会場からどのようにして観るか。投げ銭はいくらいれようと計画を練っていた。

イベント当日、タイムテーブルが更新され、突如24時からO-Eastにてカネコアヤノの出演が決まった。
なんとなく胸がドキッとした。またあの歌声を生で聴ける。昨日決めたスケジュールを全て仕切り直すことにした。
22時に受付を済ませ、居酒屋で一杯引っ掛けてから向かう。開場と同時に大量の人間がO-Eastへと雪崩れ込んだ。すぐに入場制限がかかり、外には多くの全感覚祭難民が溢れ出した。

24:00になると同時にカネコアヤノが登場した。静寂の中「花ひらくまで」を歌い出した瞬間、歓声が沸き起こった。
1000人を超えるパンパンのお客さんの中、カネコアヤノは楽しさを噛み殺して歌っているように見えた。
彼女はうまく楽しさを人前で表現できない人なのかもしれない。それでも滲み出る楽しさは彼女の魅力をより引き出していた。

かみつきたい散らかしたい 安いお酒でキスでもしたい
かみつきたい散らかしたい そんなこんなで幸せだよ 自ら不幸にならない
かみつきたい散らかしたい
みんなとずっと一緒にいたい
だけど今日は帰らなくちゃ
帰らなきゃいけない
夜 街へでる 鼻歌をついつい歌ってしまう
/カネコアヤノ「かみつきたい」

たくさん抱えていたい
次の夏には好きな人連れて
月までバカンスしたい
隙間からこぼれ落ちないようにするのは苦しいね
だから光の方 光の方へ
/カネコアヤノ「光の方へ」

パンダ音楽祭の時とは違い、親しい友人達と一緒に遊んでいるような無邪気な一面も見られた。
僕の知らないカネコアヤノはまだまだたくさんあるだろう。もっとたくさん観て、聴きたいと思った。
 

カネコアヤノのアルバムを一枚通して聞くと、なんだか胸がドキドキする。
彼女は「私はモテたい」という。充分モテていると思うけど、「私はモテたい」という意味は、私が好きな人にモテたいという意味なような気がするから、そのモテたいの対象に僕は入っていない。あたりまえだが、彼女は僕を認識していないから。でも、多くの人に私の歌が届いて欲しいという「モテたい」には僕は入っているように感じる。彼女が言う「モテたい」という言葉には何重の意味が込められている。

自分が良いと思うものに囲まれて、自分が好きな人とずっと一緒にいたい。彼女はそんなことをよく言う。
そこに僕は入っていない。なぜならあたりまえだけど彼女は僕を認識していないから。
僕は彼女の人生には介入していない。僕は君の音楽を勝手に聴いて想像してるだけ。

僕はe+で彼女の公演をぽちぽちと予約していく。
チケット当選するといいな。
少しづつ遠くなっていく彼女を僕はひっそりと応援していく。

ちょっとした片想い。僕はきっとカネコアヤノに恋してる。

  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい