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ここがロックの現在地

The Birthdayライブツアー『VIVIAN KILLERS』ライブレポート

先日、鳥取県・米子laughsにて行われたThe Birthdayのワンマンライブ『VIVIAN KILLERS TOUR 2019』に参加した。
 

タイトルに冠されていることからも分かる通り、今回のツアーは今年3月に発売されたニューアルバム『VIVIAN KILLERS』を携えて行われるものだ。かねてより「また来るぜ!と言ったバンドが二度と来ない」、「全国ツアーの文字を見ても心が踊らない」などとカレンダーや書籍で諦めに似た自虐が展開される山陰地方(島根と鳥取)に、定期的に足を運んでくれているThe Birthday。もはや言うまでもなく日本ロックバンド界の重鎮である彼らが、こうして幾度となく遠方まで来てくれることには頭の下がる思いである。
 

この日は午前中から雨模様であり、外は肌寒い。会場周辺は一応商店街の体を成してはいるものの大半の店がシャッターを下ろしており、閑古鳥が鳴く寂しさだ。しかし会場前だけは話は別で、半袖のバンTを着た老若男女、大勢のファンでごった返していた。その光景は長きに渡って愛され続けるThe Birthdayの根強い人気を体現しているようでもあり、胸が熱くなる思いがした。
 

会場内に足を踏み入れると、キャパシティ350人程度の小規模なライブハウスであるためか、会場の外で待機していた人よりも更に多くの人で溢れている印象を受けた。ステージにはシンプルな楽器と機材が並べられており、その背後にはハートや十字架、音符といった様々な装飾で形作られたドクロマークがでかでかと描かれている。更にはスタッフによる「もう少し前に詰めてください!」の声も相まって、次第に緊張が高まっていく感覚に陥る。
 

ギターのトラブルにより、定時から少し遅れて暗転。クハラ(Dr)にヒライ(Ba)、フジイ(Gt)、そしてサングラスをかけたチバ(Vo.Gt)がステージに降り立つと、場内は怒号のような歓声に沸く。興奮した観客たちが前に進み出たためであろう。後方からのとてつもない圧力でもって体が押され、気付けばステージ前方まで押しやられていた。演奏開始前にも関わらず、完全なる蒸し風呂状態である。
 

ギャリギャリのギターリフと共に始まった1曲目は『LOVE IN THE SKY WITH DOROTHY』。この楽曲はニューアルバム『VIVIAN KILLERS』において、最も直接的なパンクロックとして鳴っていた楽曲のひとつでもある。CD音源の時点でも自然に体が動いてしまう十分な魅力に溢れていたのだが、やはりライブハウスで直接対峙するThe Birthdayの生音は格別。音の暴力とも言うべき極太サウンドが鼓膜に襲いかかってくる。
 

中でもサビ部分で歌われる「LOVE IN THE SKY WITH DOROTHY」のリフレインは名状しがたい盛り上がりを見せ、集まった観客は一様に『歌う』というよりも『叫ぶ』ように熱唱していた。
 

さて、今回のライブはニューアルバムのリリースツアーということもあり、演奏曲の大半がこのアルバムからドロップされたのはもちろんのこと、長年ライブで披露されてきたキラーチューンや、昨今ほとんど演奏されないレア曲も散りばめた攻めのセットリストで展開していく。
 

昨年のツアーでも同様にオリジナリティー溢れるセットリストではあったものの、昨年のツアーと今回のツアーでの楽曲の被りはさほどなし。一貫して『今が一番格好いい』という姿勢を貫くThe Birthdayらしい試みである。
 

『LOVE IN THE SKY WITH DOROTHY』後は間髪入れずにニューアルバムから『POP CORN』と『THIRSTY BLUE HEAVEN』、そして過去に発売されたシングルのB面に位置していたレア曲『FUGITIVE』、『VICIOUS』と続いていく。
 

通常アルバムのリリースツアーは、アルバム全体を聴き込んでいる人とそうでない人の差が顕著に出る。そのためライブによっては盛り上がりにムラがあることも多いのだが、ほぼ全楽曲でイントロが流れた瞬間に大歓声に沸く観客を見ていると、まるで「全曲がキラーチューンなのではないか」という錯覚に陥るほどに、十分に馴染んでいた。
 

ここまでまともなMCは一切なし。曲間も僅かなチューニングを行うのみで、メンバーのひとりとして口を開くことはなかったのだが、ここでチバがマイクに届くギリギリの声で「米子城跡ってあんじゃん……」とボソリ。
 

「知ってる!」や「チバ行ったの?」の声が挙がるものの、すぐさま「まあ興味ないけど……」と淡白な返答が。そして次の瞬間には何事も無かったかのように『青空』に移行するチバはいつも以上にマイペースで、肩肘張らないクールさに逆に痺れてしまった。
 

その後も『DISTORTION』、『THE ANSWER』と大盛り上がりでライブは続いていくのだが、チバがハンドマイクで歌う『DIABLO ~HASHIKA~』はこの日のハイライトのひとつだったように思う。
 

〈なぁ ベイビーディアブロ お前の産まれた星座はさぁ〉

〈今週最悪らしいぜ だったら俺と海にでも行こうよ〉
 

客席に身を乗り出し、まるで語りかけるように言葉を紡いでいくチバ。独特のしゃがれ声と共に繰り出されるロックスター然とした振る舞いは魅力たっぷりで、彼の一挙手一投足に目が離せない。
 

後半では演奏を止め「さあ……何すっかねえ……」と考え込むライブならではの一幕も。しばらく唸っていたチバだが、突然パッと思い付いたように「米子城跡でも行くかぁ……」と子供っぽい笑いを浮かべながら呟いたチバに、客席からは大きな歓声が上がった。
 

ライブはここから後半戦に突入。マラカスを振りながら陽気に歌い上げる『KISS ME MAGGIE』、コール&レスポンスで熱量を底上げした『Dusty Boy Dusty Girl』、後半が長尺のジャム・セッションと化した『星降る夜に』など、ニューアルバムに収録された楽曲群を惜しみ無く投下していく。
 

『BABY YOU CAN』終了後には、「米子の夏はどこ行くの?」とおもむろに語り始めるチバ。客席からフェスやプール、夏祭りといった単語が挙げられる中、海に興味を示したチバは「海か。まあ近えもんな」とボソリ。そこから始まった楽曲は『SUMMER NIGHT』だ。
 

〈いつかのサマーナイト 誰かのサマーナイト〉

〈どっかのサマーナイト LOVE YOU LOVIN’YOU〉
 

夏をテーマにした楽曲ということからも分かる通り、『SUMMER NIGHT』は今までのThe Birthdayにはなかったタイプの、爽やかなギターサウンドを軸に展開するロックンロールだ。チバは時折「米子のサマーナイト」や「鳥取サマーナイト」と歌詞を変えて歌い、一夜限りの『SUMMER NIGHT』を作り出していた。
 

ラストはダメ押しの『FLOWER』から、シングルカットされたことでも話題となった『OH BABY!』でシメ。
 

クハラが頭上からスティックを振り下ろした瞬間、会場内に爆音が轟いた。もちろん今までもかなりの音量ではあったものの、ここに来てもう一段階上を行くギターの音色には驚きを隠せない。そんな爆音と、全てを出し尽くすようなチバの歌声が渾然一体となり、会場内はこの日何度目かの灼熱地獄と化す。
 

特にサビ部分で幾度も繰り返される「OH BABY」のフレーズは、チバの声量を完全に上回るほどの大合唱に包まれた。ステージ前方は完全なる押しくらまんじゅう状態。果てはダイバーも出現するほどの盛り上がりで、完全燃焼で終幕した。
 

本編終了後はメンバーの名前や言葉にならない言葉が口々に叫ばれるカオス状態の手拍子が起こり、再びメンバーがステージに舞い戻る。チバの手には海外産のビールであるバドワイザーが握られており、心なしかリラックスムードだ。
 

バドワイザーを一気に胃に流し込み、ギターを携えたチバ。アンコール1曲目は屈指のライブアンセムである『なぜか今日は』である。
 

前述したように、今回のツアーはニューアルバム『VIVIAN KILLERS』のリリースを記念して行われたものだ。そのため必然セットリストの大半はそのアルバムからのトラックが担うこととなり、更には途中に挟まれた『DISTORTION』や『SUMMER NIGHT』といった既存曲に関しても、いずれもシングルのB面に位置していたり数年ぶりに披露されるものが多く、観客の誰しもが「これだ!」と腕を天に突き上げるような楽曲はどちらかと言えば少なかったように思う。
 

そんな焦らしに焦らされた観客に対し、このタイミングでの『なぜか今日は』は悪魔的。観客は四方八方から待ってましたとばかりに前方に繰り出し、気付けば特大のモッシュピットが出来上がっていた。
 

アンコール2曲目の『READY STEADY GO』も大盛り上がりで終了し、メンバーがステージを去っていく。しかし通常どのアーティストのライブでもアンコールが終わればその時点で客電が点き、間接的に退出を促されるのが通例だが、この日は何故か客電が付かない。
 

帰宅しようと退場口へ移動していたファンもこの光景を受け、瞬時に踵を返して二度目のアンコールを願う手拍子を送る。するとやはりと言うべきか、三たびメンバーがステージへ帰還。チバの手には2本目のバドワイザー。もう片方の手ではタバコの煙を燻らせながら、ワイルドな登場だ。
 

またもや酒をぐいっとあおり、吸殻をぐしゃりと灰皿に押し付けてのダブルアンコール。1曲目は『くそったれの世界』である。
 

〈とんでもない歌が 鳴り響く予感がする〉

〈そんな朝が来て俺〉
 

短時間にビールを2本空けたからか、はたまたライブ中大量のドーパミンが分泌されたからか。理由は定かではないが、チバは頭をグラグラと動かしながら時折笑みを浮かべており、少しばかり酔っている様子。
 

しかしながら歌唱は非常に安定しており、力強い歌声を響かせていた。更にサビの一部分に関してはマイクを客席に向けて歌わせるなど、The Birthdayと観客のある種の信頼感と一体感を覚えた一幕でもあった。
 

多幸感に包まれたライブもいよいよ終わりを迎える。正真正銘のラストナンバーとして鳴らされた楽曲は、ニューアルバム『VIVIAN KILLERS』内で本編で唯一演奏されなかった1曲である『DISKO』だった。
 

『DISKO』は「このくそメタルババァがよ」から始まる2分弱の直接的なパンクロック。僅かばかり暴れ足りない観客にとっては、まさに火に油である。口には出さないものの、チバが指をしきりに動かす仕草は「もっと来れるだろ」と焚き付けているようでもあり、それに呼応した観客たちはまるでピラニアに餌を与えたような暴れっぷりで、これ以上ない大団円で幕を閉じた。
 

……ここ数年で日本のロックシーンは大きく変化した。今や一口に『ロックバンド』と言ってもそのスタイルは様々だ。最近ではギター、ベース、ドラムといったスタンダードな楽器以外にも何かしらの打ち込みのサウンドが入っていたり、核となる音楽の存在以上にSNS等の話題性で人気を得たり、独自のエンターテインメント性に焦点を当てたバンドが次第に増えてきている印象すらある。
 

そんな中、The Birthdayは結成当初から現在まで、ポリシーを曲げない硬派なバンドだ。使用するのは爆音で音を鳴らす生楽器のみ。毎日何度も呟くようなSNSの呟きもなし。決して大衆に媚びず我が道を行くバンド、The Birthday。流行の波が著しく変化するロックシーンにおいて、彼らが変わらず一定の地位を確立し、また愛され続ける根本的な理由はそこにある。時代に合わせたロックも決して悪くはないが、やはり行き着く先はシンプルなロックンロールであるし、同時に、そうでなければならないとも思うのだ。
 

……ロックバンドは移り変わる。様々なテクニックや流行を取り入れた最先端の方法を駆使して、その時代に最も適した音楽を鳴らす。
 

……The Birthdayは変わらない。ただがむしゃらに、今自分たちが鳴らしたい最高のロックンロールを体現する。
 

きっと僕はまた近いうちに、The Birthdayのライブに足を運ぶのだろう。彼らの現在地を見届けるために。そして何より、最高のロックンロールを聴くために。

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