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2017年6月30日

あれんすみっしー (22歳)
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巨大な奇跡

さユり『ミカヅキの航海』について

さユりの『ミカヅキの航海』が発売されてから、もう一か月以上も経つ。「酸欠少女」の記念すべきファーストアルバムは、同日のオリコンのデイリーランキングで堂々の1位に輝いたとのことだ。そして、その週末に新宿で行われた路上ライブでは、2000人もの人が集まったと聞いている。

こうした反響を見ても、彼女の音楽にはかなりの影響力があることがわかる。それは一体、なぜなのだろうか?

青いポンチョを揺らし、黄色いギターを掻き鳴らす裸足の少女。彼女の歌が響くのは、きっと彼女が「心」の奥底から歌を吐き出しているからだと思う。苦しさや、生き辛さ。そんな気持ちを誰かに伝えたい。誰かにわかってもらいたい。居場所が欲しい。そして、誰かの居場所になりたい。楽曲の中で歌われている内容は、叫びに近いものだ。

「それでも 誰かに見つけて欲しくて/夜空見上げて叫んでいる
 逃げ出したいなぁ 逃げ出せない/明るい未来は見えない ねぇ
 それでも あなたに見つけて欲しくて/蝶のように舞い上がるの
 欠けた翼で飛んだ 醜い星の子ミカヅキ」(『ミカヅキ』)

「選ばれなかった命を/弔うことすら出来ないままで/私は今日も願っている
 生きていて、と/死なないで、と/何度も何度も私は叫ぶよ」(『birthday song』)

こうした彼女の歌に秘められたメッセージは、「辛さを感じながらも頑張って生きている人々」に、刺さる何かがあったのではないだろうか。

彼女はインタビューで、こんなことを言っていた。

「音楽を聴きに来てるっていうことは、何か欠けてるものを感じてたり、何かを失って寂しかったり、何か答えを探してたり、みんなそれぞれしてると思うんですよね。」(『ROCKIN’ON JAPAN』2017年6月号、159頁)

このアルバムを聴いた皆さんも、やはり何か「欠けてるもの」を感じているのだろうか?

私は感じている。いつも変わりたいと思っているのに、変われない。そんな変われない自分を認めてくれる場所を、甘えられる場所をいつも探している。心のどこかで、変わることの辛さから逃げてしまっている。そんな怠惰な自分が嫌いで、やっぱり変わりたいと思って…その繰り返しだ。
そんな迷宮の中で、私は彼女の音楽に出会った。
そして、彼女の音楽からあふれ出る「足りないなりに幸せになりたい」「足りないなりに何かを成し遂げたい」という想いに、強く共感した。

同時に「私と同じことを考えたり感じたりしている人って、もしかしたら結構いるのかもしれない」とも思った。もちろん、彼女の歌を聴いている「あなた」が、何を感じているのかは私には知る術がない。しかし、もしもそんな「あなた」が、本当にそういうことを考えているのだとしたら…

「もう少し/もう少し/先で繋がっている
 わたしは/あなたは
 この体は/巨大な巨大な奇跡だ」(『十億年』)

彼女も私も「あなた」も、自分に足りなさを感じていた。彼女がそれを音楽にして、歌声に出した。私が完璧だったら、「あなた」が完璧だったら、彼女が歌っていてくれなかったら、こういうことを知ることができなかったろう。
そう考えると、全部「巨大な奇跡」なんだと思える。

 私は半端者である。しかし、一人じゃないなら、「あなた」も懸命にもがいているなら、足りないなりに頑張れる気がする。

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