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2017年6月30日

タカクサ モクオ (17歳)

僕の高鳴りはなんと呼ぶ

青春の挫折と忘れらんねえよ

この曲が無ければ、死んでいた。

本気でそう思うほど大切な曲が、僕にはある。
 
 

僕の中学時代は最悪だった。通っていた中学校には不良と呼ばれる生徒が沢山いて、気が弱かった僕はすぐに目を付けられた。遊び半分で殴られたり、「ブス」「バカ」みたいな罵声を浴びせられたり。その度にクラスメイトからの冷たい視線を感じた。辛かったけど、”いじめ”だと認めたら負けな気がして、「またやられちまったよー」みたいなことを言いながら、ヘラヘラと笑った。

そんな僕の唯一の楽しみは音楽だった。嫌な事があった日は、家に帰ってすぐイヤホンを差し、大好きな曲を爆音で流しながら、近所の土手を走った。その瞬間だけ強くなった気がしたし、全てを忘れることができた。
 

そんなある日、友達と廊下を歩いていたら、「おい!」と、後ろから怒号が飛んできた。たまたま通ったそこは不良の溜まり場だったらしい。「俺らの聖地を汚した罰だ」と言われ、僕は中庭に連れて行かれた。中庭は全ての学年の教室から見える所に位置していたから、僕は学校中の晒し者になった。大勢に蹴られる僕を見て、ケタケタ笑うみんな。今までで一番の屈辱だった。それなのに「もう行っていいぞ」と言われた僕は、いつも通りヘラヘラと笑っていた。

その日の夕方、近所の土手。いつも通りイヤホンを差して、曲をシャッフル再生。あまり聞き慣れない曲が流れた。ああこれ、友達に勧められて最近入れたやつ。たしか、「忘れらんねえよ」って言ったっけ。
 

《 この高鳴りを なんと呼ぶ

今もそのまま 続いている

なんだっていいよ 世界は

僕らのために 廻んだ 廻んだ》
 

僕は泣いていた。そして、走った。色んな感情が溢れ出てきた。沈みかけの夕日で、涙が光る。
 

《 なんにもない空を 飛んでいく
 

どこに行けるかは 知らない
 

なんだっていいよ 世界は
 

僕らのために 廻んだ 廻んだ 》
 

あまりにドラマチックな状況に恥ずかしくなり、足を止めた。胸の鼓動を落ち着かせ、冷静になった頭で少しだけ考えた。そうして絞り出した精一杯の決心。
 

「あいつらより良い人生を送ってやる」
 

僕の心は高鳴った。その曲は決してカッコよくはなかったけれど、だからこそ僕の暗い人生に小さな光を与えてくれた。
 

《 この高鳴りを なんと呼ぶ

たぶんそれは 生きていくと言う 》
 
 

時は流れ、僕は高校三年生になった。あの時感じた高鳴りは、今でも心の中に残っていて、ときどき僕の背中を押してくれる。

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