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私と彼らのフレデリズム

フレデリックが見せたVISON

何にもなれない私を変えたのは、フレデリックというバンドだった。
 
 
 


高校に入ったとき、友人の誘いで軽音楽部に入った。パートはボーカル。
歌うことは好きだったし、前に立つことが苦手な欠点を直すいい機会だと思った。
 

はじめての校内ライブ。
出来を言ってしまえば___散々だった。

歌詞を間違えるだけならまだよかったのだが、あまりの緊張でただでさえ声が出ないのに、音量を下げすぎてボーカルがほとんど聞こえない。その上、煽りはおろか自分の立ち位置からほとんど動けずに突っ立って歌うだけ。
マイクを握りながら、早く終われと祈った。
 

初ライブの失敗を引きずりながら練習を続けていたある日、ギターの子が言った。

「私もボーカルやりたい。」

本気ではなかったと思う。しかしその子はマイク貸して、と言って歌い始めた。悔しいが、ものすごく上手い。
その時思った。いらないんじゃないか、私は。
 

そう思ったときから、私は部活に行くのが辛くなった。兼部していた他の部活を理由に、軽音楽部を休むようになった。

次のライブを最後に、部活を辞めよう。
そう決めたとき、まだ入部してから半年もたっていなかった。
 

そんなある日、ライブの選曲のために動画サイトで邦ロックを聞いていた。
当時、バンドに詳しくなかったので、適当に選んでおすすめに入れてランダムで聞いていた。
 

一通り聞いたあと、ある一曲が耳から離れず残っていた。
改めてMVを見ながら聞いてみると、ガツンと胸を鷲掴みにされたような衝撃が走った。
 

1stアルバムにも収録されている、フレデリックの『オンリーワンダー』だった。
 

軽快に始まるイントロと、いつまでも耳から離れないボーカルの声。
 

“扉を開くのは君じゃないのか”

“正真正銘No.1なんだ”
 

ストレートな歌詞はどこまでも心に響いた。その時の私にとって、何よりの応援歌だった。私は繰り返し繰り返しこの曲を聞いた。
 
 

それまでの私は曲を聞くのは好きだった。
でもそれは、友人から勧められたものであり、流行りのものだった。
初めて、自分が好きだと、自信を持って言えるものだった。
 

フレデリックの曲を聞いていると、自分がここではないどこかにいるような気になれた。
ある曲を聞いているときはダンスフロア。また別の曲を聞いているときは海。球場。真っ昼間、真夜中、早朝。全ての情景が一枚絵のように脳内に浮かんでくる。
 

それは、今までにない感覚だった。
 

さらに衝撃を受けたのは、ライブ映像を見たときだった。
ボーカルの彼はいつだって伸びやかに、時に揺れながら、別世界へ誘うように歌っていた。
 

今までボーカルという立ち位置に関して、嫌な場所とすら感じたときもあった。しかし、その時初めて、「こんな風に歌えたら」と思えた。
 
 

結局、最後のライブを機に軽音楽部を辞めた。

最後のライブは、今までよりも少しだけ、晴れやかな気分で歌えた。
 
 

今はすっかり音楽を”聞く”側に徹している。
あの後好きなアーティスト、バンドが増えに増え、音楽が今まで以上に大好きになった。
 

今でもフレデリックは私に色んな景色を見せてくれる。

今月発売された新EP、「VISON」。
このタイトルを掲げ、彼らはツアーを続けている。辛いことに、私は一回も行くことができないのだが。
 

来年、私は初めて彼らのライブに参加する。実際にあのライブの映像を目の当たりにできると考えると、それだけで気分が昂ってくる。
 

何にもなれなかった私を、あの頃フレデリックが変えてくれた。
彼らの音楽はいつだって脳内で鳴り響いている。
 

実際に空間を共にするとき、彼らはどんなVISONを見せてくれるのだろう。
 

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