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まだ見ぬ出会いたちへ

—星野源の新EP『Same Thing』と“Hello Song”について考える

 先日、星野源の新EP『Same Thing』の配信がスタートした。表題曲の“Same Thing”を含めて全部で4曲。配信直後から何度も聴いた。これまでの星野源のイメージを見事に裏切る曲達に終始圧倒された。これまでの彼の楽曲と比べてどうだとか、海外の音楽と比べてどうかとかそういうことを書くつもりはない。じゃあ何を書きたいのか? わざわざ文字に起こしてでも伝えたいと思ったことは、前作『POP VIRUS』の最後の曲が“Hello Song”であることの必然性だ。“Hello Song”は、私が大好きな曲でもある。新EPを聴いて、改めて“Hello Song”という曲のすごさ、そしてこの曲がアルバムの最後の曲であることの意味を考えてしまった。

 まず、新EP『Same Thing』について。ラジオだったかテレビで、今回のアルバムは仲の良い人達と一緒に作り上げたものだと話していた。1人で作るのではなく、仲のよい、信頼できる人たちと共に作った音楽であることは、楽曲からひしひしと伝わってきた。おそらく、笑い合いながら、いいアイデアがポンポン飛び交うような雰囲気で楽曲を制作していたんだろうなと、1曲目 “Same Thing”を聴いて感じた。クソみたいな世の中だからこそ、自分が好きなことをしている時、好きな音楽を聴いている時くらいは全力で幸せを感じたい、そう思わせてくれた。
 そして、4曲を一通り聴いてみて、私は他の3曲とは毛色が違う4曲目“私”に惹かれていた。ギターと星野源の歌声のみのこの曲は、1曲目から流して聴いていると、雰囲気がガラッと変わるため最初は困惑した。でも、何度も聴くと、その魅力に気がつく。社会の構成員として日々生きていると、時々「私」という個の存在意義を見失う時がある。別に自分がいてもいなくても世の中は何も変わらない。「私」が「私」として生きていく理由が見つからないけれど、これといって死ぬ理由があるわけでもない。毎日些細なことに幸せを感じながら楽しく生きていくことは、案外難しいものだと思う。彼がどんな思いで“私”という曲を制作したのかは、今の時点では分からない。だから、あくまで私個人が直感的に感じたことを言うとするなら、聴く者を救う曲(聴く者の気持ちを代弁してくれるような曲)ではなく、ただ、そこにあるだけの曲のように感じるのだ。星野源は「星野源」からは一生逃れられないし、私も一生「私」からは逃れられない。どんなに自分のことが嫌いでも、自分から逃れることはできない。そんな現実を肯定も否定もせず、手を差し伸べるようなこともしない。ただ聴く者の隣にいるだけの曲であると私は思う。でも、たったそれだけで私も含め多くの人の人生をほんの少し豊かにする力をもっている気がする。なぜそう思うのかというと、星野源という人間がもつ優しさや、音楽を愛する気持ちがきちんと私たちに届いているからなんだという考えに至った。
 制作スタイルや曲の雰囲気がどれだけ変わろうと、音楽が大好きで、それをみんなで共有したいという思いを彼が持ち続けているからこそ、星野源の音楽は多くの人に愛されるのだということを改めて実感した。

 そして、いよいよ“Hello Song”についての話だ。先ほども少し書いたが、星野源の楽曲の中でもこの曲は特に好きな曲だ。「好きに理由はない!」と言いたいところだが、それでは伝わらない。そこで、ふと歌詞を見る。久しぶりに歌詞を見ながら聴いていると、なぜ好きなのかが見えてきた。

《何処の誰か知らないが/出会う前の君に捧ぐ》

《いつかあなたに いつかあなたに/出会う未来 Hello Hello 》 (“Hello Song”)

未来に対する希望を歌っているのだ。つまり、まだ出会っていない人、まだ見たことがないものに対して、いつか出会うその時を楽しみにしているよという気持ちが伝わってくる曲なのだ。人は、一生のうちに出会うべき人には必ず出会えるという言葉を聞いたことがある。それがいわゆる“ご縁”というものなのかもしれない。そして、私は母から「偶然なんてない、すべて必然なんだ」といわれたことがある。これまで出会ってきた人やものは、確かに自分自身に影響を与えている。裏を返せば、それは自分が出会うべくして出会っているから、影響を受けるのは当たり前なんだということもできる。私はこの“Hello Song”を初めて聴いた時、これからどんな人に出会えるんだろう、どんな新しい価値観や景色に出会えるんだろうと、わくわくする気持ちが抑えきれなかった。勿論つらいことや悲しいこともこの先待っているだろう。でも、その時にしか出会えない人や音楽が必ずあると考えると、気分が軽くなる。だから、この曲が大好きになったのだ。
 
 星野源は、人を大切にする人であると思う。突然何を言い出すのかと思っただろう。これは、私がいろんなインタビュー記事を読んだり、ラジオでの発言などを聴いたりして率直に思ったことだ。私は星野源の音楽をデビュー当時からずっと聴いていた訳ではないので、彼のことをよく知っているとは決していえない。でも、本当に音楽が好きで、人が好きだからこそ、聴く者を笑顔にできる曲を生み出せるのだと思う。人を好きになるということは、その人を信頼できるということだ。そして、人を信頼できる人は、逆に人に信頼され、愛されるのだろう。私は『Same Thing』というEPは、人を大切にするという星野源の人間性から生まれたものであると考える。彼は前作の『POP VIRUS』で全てを出し切ったと話していた。そんな中でも、曲を作ることができたのは、彼の周りに音楽を愛する人がたくさんいたからなのだと思う。同じ熱量で好きなものを語り合える人たちと出会ったことで、また新しい音楽が生まれていく。これは、人を大切にし、信頼し合うからこそできることだ。だから、星野源の人間性から生まれたものだと思うのだ。
 そう考えていると、ふと“Hello Song”が頭をよぎる。まだ見ぬ未来での出会いを歌うこの曲は、まさに『Same Thing』やこれからの星野源の活動を指しているのではないかと思わずにはいられなかった。

《いつかあの日を いつかあの日を/超える未来 Hello Hello/笑顔で会いましょう》 (“Hello Song”)

『POP VIRUS』という大作を生み出し、全て出し切り空っぽになっても、音楽を作る喜びや楽しさを再認識させてくれる仲間がいたり、愛のある人がそばにいたりすることで、星野源はまた新しい景色を見ることができるのだろう。そして、11月からはワールドツアーが始まり、Gen Hoshinoとして世界へと舞台を移していく。そこでまた新しい出会いをするのだろう。彼は、様々な出会いを糧に前に進んでいっている。そして、常に新たな出会いを求めている。そんな姿を見て、私はこの人の音楽が好きでよかったと心から感じた。そして思うのだ。『POP VIRUS』というアルバムの終わりは“Hello Song”でなくてはならなかったと。《笑顔で会いましょう》と歌っているこの曲は、新しい人に出会い、新しい景色を見るという新たなステージの幕開けを祝うような曲であると思うからだ。そう、“Hello Song”はおわりの曲ではなく、はじまりの曲なのだ。
 
 星野源は、どんどん前に進んでいる。自分が音楽を愛する気持ちを持ち続ければ、自然と同じような気持ちの人を引き寄せ、チャンスも巡ってくるのだと身をもって証明している気がする。好きなことをして生きていけるほど世の中は甘くないけれど、実際にそれを達成している人を見ていると、やはり好きなことを仕事にするという生き方も素敵だなと思う。好きを貫くことで見えてくる新しい世界を、私も見てみたくなった。そして、やはり星野源は、最高にクールな大人であると心から思うのだった。

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