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フジファブリックが描く、七色の過去と真っ新な未来

夢の大阪城ホール『IN MY TOWN』

「こんなおっさんが‟夢”だなんて、胡散臭いって思うかもしれないけど」
「こんな素敵な景色がみられて…信じるしかないでしょ!」

そう言ってうれしそうな笑顔を咲かせるのは、山内総一郎。フジファブリックのギタリスト・ボーカリストであり、この大阪城ホール公演を二年半も前に宣言した仕掛人である。
 
 

高校生の頃からの夢だった場所。「僕ね、そこ!そこにいたんですよ!遠いなぁって思って…笑」とスタンド席中央を指さし、初めて大阪城ホールでライブを見た日のことを話す彼は、いつもよりも少しはしゃいでいるようにも見えた。

何よりも、この「15周年大阪城ホール公演」が『IN MY TOWN』であることが特別なのだと私は思う。それは、山内総一郎という男のフロントマンとしての魅力がキラキラと爆発的に輝いていた公演だったからだ。

志村正彦が亡くなってから、ボーカリストとして舞台の中央に立った。「歌うことにも慣れてなくて今より体力も気力も必要だったし、余計な力も入ってた」「歌のキーもどんどん高くなって」「でもそうやって振り切ってやらないと、自分がフロントマンっていう場所から逃げてしまいそうな気がして」(音楽と人 2019年2月号)。

そんな彼が、ほかのメンバーの出身地である山梨県でも、茨城県でも、石川県でもなく、この大阪城ホールを掲げてこの二年間バンドを引っ張ってきたのだ。

「僕の夢が…バンドメンバーの…そして、みんなの夢にも、なったんじゃないかなって、思ってます」

そう話す山内の後ろで、にっこり微笑んでいるキーボード・金澤ダイスケと、のんびりとベースを見つめているベーシスト・加藤慎一と、温かい観客の拍手。

あぁーこれなんだよなぁ。フジファブリックのフロントマンはやっぱり、ちょっぴり我儘でなきゃ。
 

フジファブリックのフロントマン。それはもちろん、志村正彦のことでもある。

「紹介させてください。志村正彦」

湧き上がる歓声とともに流れたのは『バウムクーヘン』(CHRONICLE 2009)。虹色の照明がまっすぐに会場を照らした。

MCでの「音楽にDNAのようなものがあるとしたら、僕にも刻まれている」という金澤の言葉をなぞるように、全力で演奏を届けてくれた。

そしてこの10年間に想いを馳せるようにはじまった『ECHO』(STAR 2011)。真正面をむいてまっすぐに声を届けてくれていた彼が、マイクから口を離す。ギターソロが始まる。ハイトーンの枯れたようなギターの音色が響く。前のめりになるようにハイフレット抑えながらガシガシと音を鳴らす姿が目に焼き付いている。

「感情的になっちゃったなぁ。でも、今日くらいはいいよね」

彼はそう柔らかく笑っていたけれど、演奏の中でアツい気持ちが自分にもこみあげてきて何度も右手を突き上げた。
 

私がこんな話をするのには理由がある。

私は、残念ながら志村さんが亡くなってから初めてフジファブリックの生演奏を聴いた。だから、当時から応援している人からしたら‟にわか”であることに違いない。

でも。
今日という舞台の上でも志村正彦は間違いなく音楽の中に生きていた。
あの頃の曲を現在に生きる曲として演奏してくれた。
それだけじゃない。「絶対解散しないバンド」だと宣言してくれた。

結論を言おう。
新しいフジファブリックから紡がれる曲たちを、もっと沢山の人に聴いてほしい。

ライブの最後に真っ白な光の中で演奏される『破顔』(F 2019)を聴きながら、そう思ったのだ。

 ‟会いたい人に会えたかな なりたい人になれたかな”
 
 ‟闇を切り裂け さあ鳴らそう 遮るものは何もない 何もない さあ行こう”

夢を叶えてくれたフジファブリックだからこそ歌える唄。
悲しみから立ち上がり、今もこうして音を鳴らしてくれている。

文句のないくらい魅力的で、虹色の過去も、嬉しさに満ち溢れる今も、真っ新な未来も抱きしめたくなるライブだった。
 

来春は、私の街にも会いに来てくれるらしい。その時にはどんな光景を私たちは見ることができるんだろう。帰りの新幹線で、スケジュール帳に大きくフジファブリック!と書き込む。その時には、今日は来れなかった人とも一緒にみんなでフジファブリックのライブを楽しみたい。

願わくは、この音楽文を通して誰かの背中を押せますように。

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