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もしもミュージシャンに生まれ変われるとしたら

BLANKEY JET CITYのベンジーでお願いします

今、ふと考えた。もしも自分がミュージシャンとして生まれ変われるとしたら、一体誰がいいのかと・・・元々、他人を羨ましいと思ったことが無いという超おめでたい人間ではあるのだが、「まぁまぁ、あくまでもおとぎ話なんだから」と勧められた場合「じゃあ、BLANKEY JET CITYのベンジーこと、浅井健一で!」とお願いすると思う。

クロマニヨンズの甲本ヒロト、NUMBER GIRLの向井秀徳あたりも面白そうで非常にそそられるのだが、たった一度きりならやっぱりベンジーが良い。自分と1ミクロンも被ってないルックス的な格好良さ、椎名林檎をして「あたしをグレッチで殴って」と言わしめる危うさも勿論魅力なのだが、何と言っても、邦楽ロック史上最強のスリー・ピース・バンドでグレッチのギターをかき鳴らしながら、世の中の悲しみに満ちた不条理や無常を切々と歌いあげる気持ちを是非体験してみたいというのが一番の理由だ。

今からさかのぼること30年前、テレビの深夜番組『いかすバンド天国』(アマチュア・バンドがスタジオで生演奏し勝ち抜き戦を行うという内容)に突如現れた彼らは、ウルさ方の審査員達を根こそぎ震撼させ、なみいる対バンをことごとく撃沈し、当然至極のようにメジャー・デビュー権をかっさらってしまったのである。

無名のアマチュア・バンド、BLANKEY JET CITYをそこで目撃した時の衝撃は生涯脳裏から消えることはないと思う。とにかく醸し出される異様さがもの凄すぎて、なんでこの人達はここに出てきちゃったの?という違和感で頭が一杯になった記憶が鮮明に蘇ってくる。それゆえに、果たして健全なるメジャー・シーンに彼らの受け皿はあるのだろうか、などと思ったものだが、それがいらぬ心配だったことはご承知の通り。

そして2000年5月、朝日新聞の全面広告にて「最高のアルバムが出来たので俺たちは解散します」と宣言し、10年のバンド活動に終止符を打つのだが、正直、よくこれだけ続いたものだと思う。こんなバンドが何十年も続くと想像する方が難しい。それくらいBLANKEY JET CITYには痛みと切迫感が常に満ちているように映った。

そこで改めて自らに問うてみる。「本当にベンジーに生まれ変わりたいですか?」と。答えは「すみません、丁重に辞退申し上げます」となるだろう。なぜなら、セカンド・アルバム『BANG!』に収録されている「冬のセーター」「★★★★★★★」「ディズニーランドへ」を人前で歌えと言われたら、ビビって尻込みしてしまうに違いないからだ。聴いているだけで心身がズタズタに切り刻まれて傷口に塩を擦り込まれるような曲を、ベンジー以外の一体誰に歌えるというのだろうか。

ということで、ベンジーに生まれ変わる事を潔く諦めてリスナーに専念し、改めてBLANKEY JET CITYと向き合うにあたり、どのアルバムが一番好きかを選ぶというリアルな幸せに浸ってみたいと思う。

前述した『BANG!』は最高傑作の誉れ高く、それを疑う余地もないのだが、その極限まで張り詰めた緊張感と対峙するには、聴く方にもそれなりの覚悟を要する劇薬のようなアルバムゆえに、気軽に好きとは言い難い雰囲気が漂っている。となると、バンドの人気を決定づけた出世作『C.B.Jim』、コアなファンからの支持が高い『SKUNK』、ベンジー自らが最高のアルバムと称した最終作『HARLEM JETS』あたりが甲乙つけ難く、それぞれに外せないキラー・チューンが収録されているので非常に迷うのだが、それを踏まえた上で、僕なら初のセルフ・プロデュース作となった『LOVE FLASH FEVER』を推したい。

このアルバムの総合的なクオリティの高さは頭一つ抜きん出ている気がする。クリアでありながらラフでソリッドな音響、グルーヴ感なんてのを超越した、まるで生き物のようなアンサンブル、真のオリジナリティを確立したバラエティに富んだアレンジと曲構成、相変わらずのぶっ飛んだ言葉選びとヒリヒリするようなバンド・サウンドとの一体感・・・最強のスリー・ピースが目指した沸点が、ここにある。

そんな中で最も惹きつけられて止まない曲が「ガソリンの揺れかた」だ。イントロのアコーステック・ギターがエレキの一撃に変わる瞬間、体の芯に電気が流れる。ドラムとベースの振動が頭を勝手に揺り動かす。そして、ベンジーが肺から絞り出した歌声が心臓にズキンと突き刺さる。この圧倒的な特別感はなんなのだろうか。「BLANKEY JET CITYってバンドは、この曲を世に解き放つために結成されたんだよ」と、断言してしまいたい衝動にかられる。

「もうこんなバンドは二度と出てこないだろう」なんて褒め言葉は聞き飽きてしまったが、BLANKEY JET CITYみたいなバンドは確かにもう二度と出てこないと素直に思う。バンド解散後に発足されたベンジーの様々なユニットをしても『LOVE FLASH FEVER』の沸点越えは到底不可能だろう。BLANKEY JET CITYの10年は、邦楽ロックの歴史に甚大な痛みと悲しみを刻印すると同時に、救われるための一縷の希望を託した、永久不滅の記憶なのだと思う。

(曲のタイトルは全てCD表示によるものです)

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