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風と共に

エレファントカシマシそして宮本浩次が教えてくれた事

「なあ、やってみいひんか?」
上司の言葉に心が揺れる。資格を取ったのが既に40歳を超えていた。そこからパートとして10年。いつも心に何かが引っかかっていた。本当はもう一歩踏み出したかった。パートで終わりたくない。正規職員となれば出来る事が格段に増えるのだ。自分の全てを、大好きなこの仕事にぶつける事が出来る。
「少し時間を下さい」
 そう言って部屋を出た。若い頃、親の反対で就く事の出来なかったなかったこの仕事。30代で大学に行き直し、若者に混じって実習にも行った。卒業と同時に得た資格。さらに国家試験を受けてもうひとつ資格を取った。
 パートとしての毎日は、楽しく充実していた。でも目の前に広がる問題には、今の自分の立場では踏み込めない事があまりに多く、その事に苛立ちとやるせなさを募らせていた。
 一歩が踏み出せない理由は年齢。自信。そして息子。障がいと健常のボーダーと診断を受けた息子が、社会人として巣立ちする事を目標に、幼い頃から共に様々なことに挑戦してきた。しかしそんな息子も大学卒業を迎え、社会人となる。
 上司への返事が出来ないまま、日にちだけが過ぎていた。大晦日、紅白歌合戦。流し見していたわたしの手を止めたのは、真っ直ぐな瞳。力強い歌声。エレファントカシマシ、宮本浩次という男だった。わからない、わからないけど、胸が熱くなった。涙が溢れた。これまでの息子との日々。自分自身の諦めてきた夢。なぜかその歌声は私がそれまで抱えてきたものとリンクし、私は彼から目が離せなくなっていた。
 エレファントカシマシの他の歌を聴きたくて、夢中で検索した。「風と共に」….
 すると、その歌詞と歌声はそっと私の耳から心へ届き、瞬間ドーンと私の背中を押したのだ。「やる。」なぜか自信が漲っていた。私に決意する力をくれた。そんな曲だった。
 仕事の幅が広がった。沢山の人の力になれるようになった。踏み出して良かった。けれどなにせ50代の新人だ。体がつらい時もある。若手に迷惑をかけることもある。その度に、力をくれるエレファントカシマシ。そして宮本浩次。
 就職して2年目の息子は、いつの間にかエレファントカシマシを聴くようになっていた。野音で初めて彼らを生で見た息子。彼らに力をもらったという。時に生きる事すらつらくなる時もある息子。今日もエレファントカシマシをBGMに仕事に向かう。
 そして私はこの先何年、この好きな仕事ができるだろう。時間はない。だからこそ、全力でぶつかる。命使い果たす。それを教えてくれたのは他の誰でもない、宮本浩次なのだ。
 ありがとうエレファントカシマシ。そして宮本浩次様。

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