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僕の胸に黄色い花を咲かせたスピッツ

孤独にも勝る「君」の力

僕がスピッツと出会ったのは中3の頃だった。友人に『空の飛び方』というアルバムを貸され、それを一日中リピートしていた。

僕はそれまで音楽に興味がなかった。だが、スピッツの『空の飛び方』には僕を引き付ける魔力があった。メロディーも歌詞もアレンジも僕の聴きたかったものだ! 僕はスピッツの音楽に吸い込まれるようにして夢中になって聴いていた。

僕はここで「魅力」ではなく、「魔力」と書く。スピッツの歌には、人の世の理を外れたところから鳴らされているようなファンタジー感を覚えるのだ。(余談だが『魔女旅に出る』という曲もある。)

中3……。それは僕にとって地獄の日々だった。クラスメイトからいじめられ、アトピーのために顔をひっかいて真っ赤な顔で登校していた。

そんな僕にスピッツは、「ロビンソン」(『ハチミツ』収録)でこう歌うのだ。

「片隅に捨てられて 呼吸をやめない猫も
 どこか似ている 抱き上げて 無理やりに頬よせるよ」

これほど共感を覚える歌詞は僕はそれまで聴いたことがなかった。僕も教室の隅で呼吸をやめずに生きていた。

スピッツの歌は「強者」の歌ではなかった。かといって「弱者」の歌でもない。ただ、その眼差しは強者にも弱者にも優しいものに感じられるのだ。

「頑張れ」と歌わない歌でも、スピッツの見る光景と僕の見る光景が重なった時、僕はこらえようのない嬉しさを覚え、頑張ってみたい気持ちになる。

僕が辛かった中高生時代を終え、今も社会人として生きていけているのは、スピッツの歌からそういった力をもらっていたからだ。

スピッツの恋の歌に憧れて恋愛の経験も重ねた。スピッツの歌がなければ、意気地なしの僕は一生彼女がいなかったかもしれない。

スピッツの歌には人と人が通じ合う喜びが描かれていた。

「二人で絡まって 夢からこぼれても まだ飛べるよ
 新しいときめきを 丸ごと盗むまで ルナルナ」
(「ルナルナ」)

それから、僕は結婚し、子供も二人産まれ、家庭は今日もにぎやかだ。

孤独だった僕の胸に黄色い花を咲かせたのは、間違いなくスピッツだった。今までもそしてこれからも。孤独にも勝る「君」の力を僕も信じていたいのだ。

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