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フジファブリック 15周年の夢の先へ

大阪城ホール公演 IN MY TOWNに見たバンドの未来

「夢っていうのを、大阪城ホールにしようかなと思って」。
2年半前、そんな山内さんの言葉から、みんなの夢が動き始めた。
山内さんの夢は、私の夢になった。
昨年6月、待ち望んだ大阪城ホールでの15周年アニバーサリーライブ開催が発表される。新曲リリース、怒涛のプロモーション、メディア出演、数々のチケット受付を経て、1歩1歩着実に歩みを進め、ついにチケットはソールドアウト。ついにこの日が来たという期待にあふれた緊張感の中、山内さんの地元、大阪城ホールで記念すべきライブが幕を開けた。 
 

『若者のすべて』が1曲目なのにまず度肝を抜かれた。え、まさか。意外すぎる始まり。後ろのお客さんまで丁寧に届けようとしているような演奏と歌。フジファブリックが大阪城ホールに立っている光景にすでに目頭が熱くなる。

そして10周年の武道館ライブで初披露された『はじまりのうた』。《君の声が届く 愛しき日々》《君を待つ未来を願ってるから ただそれに応えたいだけなのさ》《ポケットの中 もらったものを握りしめている》これは開幕宣言であると共に、お客さんへのラブコールと受け取っていいだろう。メンバーから贈られる15年間ありがとうの歌だ。金テープが発射されて15周年祝福ムードが会場を包む。ステージの3人の姿が頼もしくて早くも多幸感でいっぱいだ。

「今日は僕らの夢と皆さんの夢、2つの夢を叶える日です!」「あなたもあなたもあなたも・・・一人残らず幸せにしますから!」大舞台に気負った風でもなく無邪気な笑顔で話す姿に、いつものフジファブリックだと安心する。そう、この日はアニバサリースペシャルライブと銘打っているが、びっくりするほど“いつも通りのフジファブリック”を見せるライブだった。

演出も金テープが舞ったくらいで派手なものではなく、ロゴなどの幕もなく、ステージセットの円型ビジョンもほとんど使われず。歌を届けることを何より大事にした、とてもフジファブリックらしいライブだった。演出がシンプルな分、曲のメッセージがストレートに伝わってきて、個性的な曲たちが存在感を放っていた。あくまで音楽が主役の、今現在のバンドの姿がくっきりと見えるライブだった。

続いてはストリングス満載アレンジの『Green Bird』だ。あえて今までやらなかったことに挑戦した曲。フジファブリックっぽくない曲を作ったともいえる。この曲について「自分たちもフジファブリックの音楽に対しての固定された観念みたいなものにしばられる時がある。それを自分達で解いていかないと、飽きちゃう。それが一番よくない」と山内さんはラジオで話していた。そんな殻を打ち破るエネルギーを内に秘めた曲でもある。玉田豊夢さんのドラムが気持ちいい。この曲が広い大阪城ホールで鳴り響いているのにじんとくる。どこまでも伸びていく声がやっぱりホールに似合う。

『SUPER!!』では3人横並びでギターをぶんぶん振る、お待ちかねのあのシーンが登場し、『星降る夜になったら』のキラキラのサウンドで魅了する。山内さんが本当に嬉しそうに笑っているから見ているこっちも幸せに包まれる。加藤さん金澤さんも今日はかなりノっている。ずっと心待ちにしていたこの空間をメンバーもお客さんも楽しんでいるのが何よりうれしい。

上書きという意味の『オーバーライト』。《頂上で見よう絶景》の歌詞が目の前で実現してるんだなと思うと胸が熱くなる。10代の頃に夢見た満員の大阪城ホールで大合唱に合わせてプレートライトの光が揺れる光景はステージからはどう見えるのだろう。夢を叶える場面に立ち会えた喜びがふつふつと湧き上がってくる。

そしてMCでは「大事な仲間」だと志村さんへの思いを語った。
金澤さんが言った。「音楽のDNAがもしあるなら、一緒に切磋琢磨してきた自分にもその遺伝子が刻まれているし、それを引き継いでやれていると思う。」
「紹介させてください。志村正彦!!」山内さんが上を指差し、『バウムクーヘン』のイントロが鳴り響いた。内面を曝け出す志村さんそのものの歌。それを今山内さんが歌っている。あれから10年。大阪城ホールで、3人が志村さんの音楽を届けてくれている。
15周年イヤーの活動やこの夏Mステに出たことについて山内さんがラジオで言っていた。
「この機会に、一緒にステージに立ってんだぞっていうのを、分かってる人は皆分かってるって思うんですけど、あえてちゃんとこう示したいと」。
そんな言葉を思い出していた。「志村くんも一緒に未来に連れていきたい。」そう言っていたこともあった。志村さんは今もフジファブリックのメンバーで、それは当たり前すぎるくらい当たり前なんだけど、この場所で『バウムクーヘン』を聴くことで改めて確認できた気がした。フジファブリックのライブを観て3人の演奏と歌を聴けば分かる。いつだって志村さんも一緒にステージに立っている。志村さんのDNAは確かにここにある。 

続いて今の季節にぴったりな『赤黄色の金木犀』が始まると、ステージの円型ビジョンに志村さんの映像が映し出された。笑っていたりメンバーとじゃれていたり、相変わらずかっこいいなあと思いながら次々に映し出される志村さんを見ていた。涙を我慢するのはさすがに無理だったけど、悲しみだけじゃないもっと熱い感情が胸をしめていた。それが何かを言葉でうまく説明するのはまだできそうにない。
私は志村さんが歌う『赤黄色の金木犀』を生で聴くことはできなかった。そんな思いも丸ごと包んで空に持っていってくれるような歌だった。

そして、ここにいない「君」に向けた歌『ECHO』。圧巻だったのはアウトロの魂の叫びのようなギターだ。

《離れていたって届くように
 今ありったけの想いをのせて君に 君に捧ぐよ》

そんな歌詞と共に放たれたのは、志村さんへの思いを全て注ぎ込むような全身でかき鳴らす渾身のギターソロ。激しくうなるギターに心ごと取りこまれて持っていかれた。

長い暗転のあとは「少しでも近づきたいと思って」と作られた小さな花道に登場し、『ブルー』『ハートスランプ二人ぼっち(カバー)』『透明』の3曲をアコースティックで演奏し、加藤さんが見事な謎かけを披露する。「家に来たつもりで聴いてください」と言われたように、極上の演奏とアットホームなおしゃべりでおもてなしされている気分になった。

「みんなそれぞれ生活があって仕事とか学校とか、家事や育児とかいろんなことを抱えてると思うんですけど、皆さんの人生に寄り添うような音楽を作り続けていきたい」。そんなMCからの『LIFE』はいつも以上に優しく励まして背中を押してくれるようだった。「皆さんに素晴らしい人生を!」と叫ぶ山内さんに、今を肯定してもらったみたいだ。

長いギターソロで沸かせた『徒然モノクローム』のあとは、イントロから大盛り上がりの『Feverman』で踊りまくる。楽しい。ひたすら楽しい。永遠に踊っていたい。こんな変な曲(誉め言葉)で熱狂させてくれるのはさすがフジファブリックだ。

遠い街、山内さんの生まれ育った大阪で聴く『東京』は全然違って聴こえた。
今年の活動で一番驚いたのが山内さんのラップだ。15年分の愛と感謝をこめてハンドマイクで歌われる、歌詞や曲名を散りばめた遊び心溢れるラップ。《15年分のL&O&V&E》なんてフレーズを初めて聴いた時には、膝から崩れ落ちそうになった。いつだって貪欲に新しいことをやり続けているのがすごい。この15年間はずっと驚きと感動の連続だった。コール&レスポンスでファルセットを響かせる嬉しそうな山内さんの表情を見ると、この先のフジファブリックが楽しみで仕方ない。

「これからも新しいことをどんどんやっていきたい」という言葉を後押しするように始まったのは『STAR』。この爆発力も凄まじかった。ここから始まるという勢い全開のパワーに満ち溢れた曲。ライブでもらったパワーをお客さんに向けてステージから一気に解き放つかのような、希望に溢れた『STAR』だった。

「ずっともがいて音楽を作ってきたけれど、この景色で本当に救われた気がします。」
「この日のために作った歌です。聴いてください。」
『手紙』のGのコードが鳴らされる。手に持っているのは山内さんが初めて買ったギター、青いストラトキャスターだ。ふるさとを思って歌う歌。10代の山内少年が夢見た大阪城ホールで、満員のお客さんに囲まれて、初めて持った楽器と共に歌っている。そんな姿を見ると、この場に立ち会えたことが奇跡みたいに思えてきた。ボーカリストとしても格段に進化してきた優しくも力強い歌声をかみしめながら、15年バンドを続けてくれた感謝の気持ちで胸がいっぱいになった。

本編最後を締めくくったのはこんな詞だ。

 《離れた街でも大事な友を見つけたよ 
 じゃれながら笑いながらも同じ夢追いかけて
 旅路はこれからもずっと続きそうな夕暮れ》

なんて素敵なバンドなんだ。メンバー3人が1番のフジファブリックファンというのがひしひしと伝わってくる演奏と歌。最高なライブだった。

山内さんは何度も何度も感謝の言葉を口にしていた。会場のお客さんはもちろん、台風被害やいろんな事情で会場には来られなかった人にも触れ、昔から聴いてくれてた人にも最近フジファブリックを知った人にもみんなに向けてありがとうを伝えていた。スタッフ、会場設営に関わった人達、メディア、歴代のドラマー、募集したサポーターの人々。応援してくれた様々な人に対して感謝を伝えては「支えてくれた〇〇に拍手を!」と拍手を促していた。

最終的には「みんながフジファブリックやからね!フジファブリックである自分自身に拍手!」という謎発言まで飛び出したが、これも噛み砕くと、みんながいたから音楽を続けてこれた、みんなの存在なくしては今のフジファブリックはいない、みんなもフジファブリックの一部だ!という熱い気持ちが言わせたことなんだろうと思う。たぶん。

天然で純粋ゆえに、時に熱い思いが暴走して変な発言をしたり、溢れる気持ちがうまくまとまらずぐだぐだなMCになったりもする山内さんだが、この日はただひたすらまっすぐに自分の思いを届けようとしてるようだった。飾らないかっこつけないありのままの言葉で、15年分の思いを伝えようとしてくれていた。
「皆さんに僕は力を与えてもらっている」
「この日のこと、この景色、一生忘れません。みんなにも今日のことをずっと覚えていてほしい」
「僕らは幸せなバンドです」
「皆さん一人一人が宝物です」
次から次へと投げかけられる愛と感謝の言葉を、お客さんたちが温かく見守り、受け止め、かみしめていた。
 

アンコールがまたすごかった。未来への決意を表すような4曲。

一人で出てきた山内さんは「みんなにお返しがしたい」と弾き語りで新曲をプレゼントしてくれた。
「皆さん自身が僕にとってかけがえのない贈り物です」と『プレゼント』を演奏すると、「これからも一緒に時を刻んでいけたらと思います」と語った。

「フジファブリックは絶対に解散しません!」「これからも初心を忘れずにやっていきたい」という山内さんの宣言からのデビュー曲『桜の季節』。

金澤ダイスケ生誕祭とツアーの告知の後に演奏されたのは『会いに』だ。山内さんがボーカリストとして初めてフジQで歌った曲。大阪城ホールで力強く響く歌声は希望そのものだ。《君のいる所に会いに行くよ》《君の住む街に 会いに行くよ》「I FAB U」と題されたツアーへの期待が膨らむ中、キラキラ輝きながら届けられるメッセージだ。

「笑顔でまたライブで会いましょう!」そう言って演奏された『破顔』は、まさに未来への決意表明だった。「バンドのこれから」に立ち向かう意思をはっきり示す、前向きなエネルギーが溢れ出す歌だった。 
 

今回のセットリストは正直意外だった。最近の曲が多かったからだ。
夏に『FAB LIST』という2枚のベストアルバムを出したばかりだし、ファン投票の上位曲とライブ定番曲で15年を振り返るライブになるのかな、と思っていた。だが違う。今を示す曲を中心にどかんと据えたセットリストで、バンドの「今」を見せつけるライブだった。

どの曲も明確な意志を持って鳴らされて、説得力があって、一点の曇りも迷いもなくまっすぐに届けようとするライブ。その曲をやる意味、曲順、どうしたらお客さんに届けられるか、圧倒的な必然性が今回のセットリストから感じられた。
山内さんはライブ後の祝賀会で「全てに思いをこめたセットリストで、この曲でええんちゃう?みたいなのはひとっつもないです」ときっぱり言いきっていた。MCも、その歌を届けるために行間を補っていくかのように丁寧にしゃべっている印象を受けたし、いつもより「伝えたい」圧を感じた。

3人が伝えたかったこと。15年分の「愛」と「感謝」、そしてフジファブリックの「未来」だ。最新形の今の姿を見せることで、バンドのこれからを見せてくれるライブだった。昔から変わらないもの、どんどん変わっていくもの、全部ひっくるめてフジファブリックはこれからも続いていく。そんな未来に向けた決意と覚悟を示してくれた今、「絶対に解散しません!」の言葉を私は100%信じられる。

大阪城ホールでやりたいと山内さんが口にした時、それは本当に「夢」だった。満員にするのは険しい道だと本人もインタビューで言っていた。大阪で1万人キャパを埋めるのは相当大変なんじゃないか。大丈夫かな。発表された時もそんな不安があった。

でも実現した。10/20はみんなの夢が叶った日になった。
山内さんが言った。「僕の夢がメンバーの夢になって、たくさんの人の夢になって、みんなの夢になって。それがこんな風に叶ったのをこの目で見たら、もう僕はその力を信じるしかないじゃないですか。」
それは本当に素晴らしい景色だった。みんなで作り上げた幸せな時間だった。そんな瞬間に立ち合えたこと、私は一生忘れない。
 

フジファブリックというバンドは常に変化してきたバンドだ。アルバムのカラーも1枚ごとに全然違う。新しいことに挑み続けるその姿勢はデビュー時から一貫して変わらない。
それは昔からフジファブリックが持ち続けているものがブレないからだ。山内さんがラジオで言っていた言葉がある。
「ずっとフジファブリックは『らしくない』って言われ続けて15年なんです」「そこはずっと言われ続けていきたいという気持ちではありますし」「(志村くんとの)勝手に約束だと思っているというか」「メンバー全員そこは曲げないっていう風に思ってると思いますね」
今日のライブでもそれが証明されたと思う。変わり続けることを恐れないし、きっと変わらなくなったらフジファブリックではない。ずっと前を見て転がり続けるバンドなんだなと実感した。

フジファブリックはまだまだ止まらない。これからも進化を繰り返しながら走り続けていくのだろう。昔からの根っこの部分は変わらないまま、フジファブリックのDNAを持ったままで、フジファブリックらしい、でもフジファブリックらしくない新しい音楽を届けてくれるのだろう。そして志村さんも一緒に未来まで連れて行ってくれるんだろう。

『破顔』の《遮るものは何もない さあ行こう》でアンコールは幕を閉じた。
今のフジファブリックは無敵だ。

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