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人生の半分をささげたバンド

身勝手な私の「ストレイテナー」への愛の変遷

『ストレイテナー』というバンドとの出会いは、もう15年ほど前のことになる。

大学生だった当時、私は軽音サークルに所属していてベースをやっていた。サークルには数々のコピーバンドが乱立しており、誰もが思いついたタイミングで、勝手にやりたい人を募り、勝手にバンドを作ることができた。

「このバンドのコピーがしたい」

そう言い出したのはひとつ上のギターの先輩だった。そして、その先輩がやりたいと言ったバンドこそ、私が今に至るまで愛してやまないバンド「ストレイテナー」だ。

当時、ストレイテナーはすでにメジャーデビューしており、深夜のCMで「KILLER TUNE」という曲が流れているのを耳にしたことはあった。でも、そこに特段の感情もなく「名前を聞いたことがあった」という程度の存在だった。
しかし先輩に誘われれば嬉しいし、知らないバンドとはいえ断る理由もなく、バンドへの加入を承諾する。

その後、初めてちゃんと「ストレイテナー」を聞くことになる。
そして私は衝撃を受けるのだ。

そこにあったのは、あまりにも直線的で荒々しい『ベースの音』だった。

私が聞いたのは「ROCK END ROLL」というミニアルバム。
15年たった今でもあの衝撃は忘れないし、今に至るまでROCK END ROLLのベース音の衝撃を超える存在には出会ったことが無い。生涯で5枚アルバムを選べ、と言われたら、私はこのアルバムを選ぶことは間違いない。

ベースを弾いていたのは、「日向秀和」こと「ひなっち」と呼ばれる男。

骨太でゴリゴリの音。そしてベースを感情のままに叩きつけるように弾く、その姿にも圧倒的な衝撃を覚えた。
もちろんこれは私がベースを弾いていたから、という要素は大きいだろう。そして今に至るまでずっと、私がベーシストとして憧れる存在に、このとき出会ったのだ。

ただしそんな荒々しいベースを内包できるのは、スケールの大きく美しいメロディーの曲を作るホリエアツシと、感情のままにドラムを鳴らすナカヤマシンペイが居たおかげだ。この二人が居なければ、そんな衝撃的なベースはただの騒音に過ぎなかっただろう。

たった3人によってつむぎ出されるその音は、互いに火花を散らすようにギラギラと輝き、客席に向かって刃を突き立てる。

そんな破綻しそうで破綻しない、危ういバランスが持つ緊張感も、私がストレイテナーに魅せられた要因のひとつだった。

後になって、ひなっちは後からストレイテナーに加入したこと。元々はART-SCHOOLというバンドに居たこと。そしてNUMBER GIRLの中尾憲太郎に影響を受けて、あの叩きつける様なスタイルを取っていたことを知る。

つまり、タイミングが違えばストレイテナーを好きになっていなかったかもしれない。実際に今でもART-SCHOOLやNUMBER GIRLは大好きだ。

だからこそ、その時「ストレイテナー」として、彼らに出会うことができたこと。それは運命とでも言うしかないだろう。

その後、足元の機材から弾いている楽器まで、ひなっちと同じものを揃え、ひなっちのTシャツを着て、弾き方も真似をした。先輩が卒業した後も、後輩を誘ってストレイテナーのコピーを続けた。

しかしこの時期、一度上りつめた熱は徐々に下がっていった。

ストレイテナーを嫌いになったわけではない。
しかし他の様々なバンドを知ることで、相対的にストレイテナーの地位が下がってしまったのだ。音源はずっと追っていたし、相変わらずひなっちは憧れの的だ。だがいつしか「好きなバンドの中のひとつ」に成り下がってしまったのだ。

そんな中、3人としての最高傑作「LINEAR」をリリース。3人でこれ以上のモノは作れないんじゃないかという完成度をまざまざと見せつけられる。

あまりにも完成度が高いモノが出来てしまうと、バンドはそこに納得し区切りを感じてしまい解散につながる、ということを他のバンドで感じたことがあった。この「LINEAR」も、「これは解散もあり得る……」そう思わされるほどのすばらしい出来だった。

しかしその素晴らしさにつられ、私の愛が復活したわけではなく、斜に構えたまま「このままもし解散しても、それほど悲しくない」そう思っている私がそこにいたのだ。

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しかしバンドは私の予想とは違った変遷を見せる。

新たなメンバーの加入が発表され、前述したART-SCHOOL に居たギター、OJこと大山純がストレイテナーに加入。そしてストレイテナーはMCをしないバンドだったのに、どんな心境の変化か、この辺りを境にMCをするようになる。

そのMCに垣間見ることができたのは、非常に仲の良いメンバーの姿だった。
メンバーが増えたことによって、バランスが良くなったせいなのか、余裕が出てきたせいなのか。バンドの事情はわからないけれど、ストレイテナーの魅力に「仲の良さ」を挙げる人は沢山いると思う。

これで終わりなのか……という私の一方的な思い込みに反し、バンドは2つも大きな魅力を手に入れ、それが私の気持ちを動かし始める。

そして私自身もこの時期に「ある人」と出会い、ストレイテナーに対するイメージを決定的に変化させることになる。

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その人とはストレイテナーのチケットを譲って貰ったことがきっかけで仲良くなった。

住んでいる場所はそれほど近くないものの、「全国21箇所のツアーの19箇所まではついていけたけれど、北海道と沖縄にはさすがに行けなかった」と豪語するツワモノだったため、ストレイテナーのライブに行けば大体会うことが出来た。

「それほどまでにストレイテナーを愛する理由は何か?」

そう聞いた質問には明確な答えは帰ってこなかった。しかしそれは、「沢山ありすぎて明確に伝えることが出来ない」という印象だった。

単にストレイテナーだけを妄信しているのであれば、私がその人の考えに影響を受けることはなかっただろう。だがその人には、全国のフェスやライブを飛びまわって得た十分な知識量と、圧倒的な愛を持ち合わせていた。
そして好きなバンドも沢山ある中で、とりわけストレイテナーが好きであることを明言していた。

『ストレイテナーには「何か」あるのだろう』

そう思わされるのに十分な説得力があったのだ。

途中からは尊敬に近い念もあったのだと思う。
私の中でストレイテナーという存在が再び大きくなるまでに、長くはかからなかった。

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そうやって山谷がありながら今に至るまで、ストレイテナーは私の中のフェイバリットバンドの堂々たる一位をひた走っている。

そして「何故そこまでストレイテナーというバンドに惹かれるのか」という疑問に、今は自分なりのひとつの解答を示すことができる。それは

ストレイテナーが「歩みを止めないバンド」であることだ。

もちろん楽曲や、演奏技術、メンバーの仲の良さなど素晴らしい面は沢山ある。しかしそれらを全て内包し、常に今までになかった「何か」を求め続けるその姿勢。その姿勢こそが私を魅了してやまないのだ。

次はどんな曲を聞かせてくれるんだろう。
どんなアプローチを魅せてくれるんだろう。

そんな期待感を常に抱かせてくれる。そしてそれに答えてくれる。
そんな度量の大きいバンドなのだ。

先日、『NANA-IRO ELECTRIC TOUR 2019』というツアーがおこなわれていた。

ストレイテナーとASIAN KUNG-FU GENERATION、そして10年ぶりに復活したELLEGARDENという泣く子も黙る邦楽ロックの大御所バンドによるツアーだ。
バンドがまだ売れていないころからの付き合いというこの3バンドは、活動時期が似通っているせいで、私の中の位置づけも似ており、昔からずっと好きなバンドたちなのだ。

そんな15年ぶりの対バンツアーに私の胸が躍らないわけがなかった。

ストレイテナーについてだけ少し触れると、入場SEは出たばかりのミニアルバムBlank Mapの1曲目「STNR Rock and Roll」。同じBlank Mapに入っている「吉祥寺」と「スパイラル」という曲たちも演奏され、アンコール前の締めはここ最近の主力曲「シーグラス」。

「旧友と15年ぶりの対バンツアー」という、昔を懐かしんでもよさそうな内容にもかかわらず、ストレイテナーが提示したのは限りなく「今」だった。

そう。まさに私が好きなストレイテナーがそこに示されていたのだ。

同じような立場の、同じくらい好きだったバンドが3つ対バンしたからこそ、強くそう感じることが出来た。アジカンやエルレだって最高のライブだった。でもその分強く、自分の中のストレイテナーへの愛に気がつくことができた。

15年という長い期間ずっとストレイテナーを思い続けていたことは、故郷の味のように、私が思った以上に私にしみこんでいたようだった。

またメンバーが増えることもあるかもしれない。全然違う方向性に舵を切る可能性だってあるだろう。

しかしストレイテナーがストレイテナーとして新たな何かを探し続け、歩みを止めない限り、私がストレイテナーを愛することを止めることもないだろう。

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