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もう簡単に天才とかエモいとか言わないようにしよう。

中村佳穂の音楽、ライブを聴いて

天才(てんさい)
天性の才能、生まれつき備わった優れた才能(生まれつき優れた才能を備わった人物)のことである。天才は、人の努力では至らないレベルの才能を秘めた人物を指す。
あまりに高い才能を示した人への賛辞的形容に使われる。

良いアーテイストに出会うとすぐ天才だと思ってしまうし言ってしまう。
でも簡単に「だってあの人は天才だもの」と言うのは理解する努力を放棄して、アーティストの作る緻密に作られた世界を軽視しているかの様だ。
だから今日ぐらいは精一杯理解しようとした記録を残す。
 

私が初めて中村佳穂を観たのは、ライジングの1日目が中止になって、投げ銭ライブを配信していた時だった。
SNS上で話題になっていたが”すごい”とか語彙力が失われた感想ばかりで全貌が見えなかった。「そんなに?」と思っていたところに、配信をやるというニュースが目に飛び込み、タイミングよく観ることが出来た。

中止になった悔しさを語りながら、鍵盤をポロポロと弾く。いつの間にか語る言葉にメロディが乗ってくる。会場と共有された思いが世界観を作っていく。
バンドで音を合わせている様子もとても楽しそうだった。
ジャズなどにある大まかな流れやバチっとしたソロ回し等のある種の緊張感がない。
けど「今のタイミングでよく合わせられるなー!」と中村さんの頃合いでメロディを変えることが出来るバンドメンバーも凄かった。
『あんたがたどこさ』をアレンジした演奏はスリルのある遊びをしているようだった。
津々浦々で楽しく音を合わせて巡り会ったメンバーなのだろうと分かる。

この引き込まれる感じは、おしゃべりしていたら、いつの間にか目的地に着いたかのようだ。
しかも、知らない土地に連れてきてもらった感覚だ。
でもそこに不安はなく、むしろフワフワと良い気持ちだ。
これが話題になった時に出ていた”すごい”とか”浮遊感”だ。
語彙力を失う理由がわかった。
この「いつの間にか気持ち良く世界観に引き込まれていた」感じと、
今まであまり聴いたことのないジャンルではなく、どの型にハマるのか決めかねるからだ。でも嫌な感じはしないし、ノれる。
 

これ、ミュージシャンのユートピアだ。
 

本能的に思ったことを旋律に乗せる。
子どもが好き勝手に歌い、手近なもので音を鳴らすように。
お母さんが台所で料理をしながら鼻歌を歌うように。
柔らかい歌声はいつまでも聴いていたくなる。
中村さんは年をとっても生活の中で変わらず歌い続けている気がする。
本能的にとは言ったものの、歌詞の内容やテーマは一貫している。
答えがないものを気持ち良く歌う。

『You may they』
–良い訳ないし 嫌な人もいるしさ
いーんじゃないか、そうともかぎらないか。–
–有名に 繰り上がる頃には 誰かの悪者になるのかな。–

『忘れっぽい天使』
–「時は全てを流すのよ。」そう言ってあいつは笑っていますが
思い出さなくていい思い出に いまでも途方に暮れるのさ–

そしてこの歌の気持ち良さはMarvin GayeのWhat’s going onを思い出させる、
ブラックミュージックやソウルミュージシャンの陽気な感じのメロディかと思っていた。

でもだんだん歌声が楽器的に聴こえてくる。
『きっとね!』はトランペット、『忘れっぽい天使』は二胡。

歌を聴いている、というより音楽を聴いているという感覚。
BGMとして空間を邪魔しない、でも真剣に聴いても楽しい。
この感覚をもう少し上手く言語化出来ない自分が悔しい。
 

ジャンルが本当にわからなくなるくらい深く演奏しようと思えば出来るだろうところを、一歩手前でとどまってポップスとして成立させるバランス感が素晴らしいし、好きだ。
というところまで私は理解する努力をしたところで終わろう。

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