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2017年7月4日

真美吟 (15歳)

渚にて幻に会いたい

“届かない”想いを歌いきるindigo la End

あなたにはもう一度会いたいけど会うことが出来ない、そんな人はいるだろうか。私はいる。届かない、届かない、でも会いたいそんな思いを歌い続けているバンドがいる。indigo la Endだ。

2017年6月23日にindigo la Endのライヴ、「Play Back End Roll」に行ってきた。復帰後初のライヴとだけあって、私の心の中はドキドキしていた。エモーショナルだがキャッチーに演奏するindigo la Endがどう進化して帰ってきたのかと。

結果、indigo la Endは“届かない”という思いをより心の中へ“届けてくれる”バンドとなっていた。それを1番表現していたのが『渚にて幻 (long ver.)』だ。

この曲はYouTubeで公開されているのだが、その映像とライヴとでは温度差が全く違った。最初のピアノの1音、そこから1音1音重なっていくギター,ドラム,ベースそして力強くもしなやかなコーラス。複雑に滑らかに重なり合っていく。

《渚にてもう一度 会えるかな 幻に》
川谷絵音とコーラスの佐々木みお(Wasalabo.)の高らかに掛け合う2人の声がどんどん激しさ,音の厚さを増していった。それと共にメンバーの演奏もどんどんエモーショナルになっていく…

少し話が逸れてしまうが、私は一昨年の夏に唯一無二の友を失った。彼女は難病を患っていたのだが、それを感じさせないくらいいつも笑顔で明るかった。しかし突然、彼女の訃報を母から聞き、急いで彼女の元へ駆けつけた。その時の彼女の表情はとても美しかった。いつもと変わらない寝顔だった。その後、夏にこの曲を聴くと彼女と二人で笑いあっていた日々をもう少し大切にすればよったなと思い出す。

そしてこの曲が収録されているミニアルバム『渚にて』の歌詞カードの最後のページに川谷絵音のメッセージが掲載されていて、
「今回の『渚にて』というタイトルはネビル・シュートの同名小説から取りました。(省略)今回のアルバムの聴き方が変わるかもしれません。」
とあったのでその本を読んでみた。第三次世界大戦が起こり、北半球では核戦争が行われその放射線が南に流れてきていて生きる時間があとわずかになったら人はどのように生き、どのように死ぬのかという内容であったのだが、話はとても重いし本そのものも厚いので途中で読むことを辞めそうになってしまったが根気よく読んだ結果、最期に主人公たちが死んでいく様子がとても美しかった。特に叶わぬ恋をしてしまった女性モイラが
「もし先にいっていたら、待っていて」
と海辺で愛しの彼ドワイトを思いながら彼の乗っている潜水艦を見て死んでいくシーンはとても美しかった。

《夏の終わりには嘘をついて
夜を越すあなたを見て渚にて微笑むのさ
明日の星座なら
あなたを照らすかな
綺麗に照らすかな》
と一筋の希望を感じさせるように歌い続ける佐々木,ぎっくり腰になってしまうくらい(Twitter参照)ギターを振り回しながら演奏する川谷,ドラムが設置されている台に足をかけグルーヴを大切にしながら演奏する後鳥,千手観音なのかというくらい手と足を約9分間動かせ続け、遂には椅子から立ち上がりそうな勢いでドラムを叩き続ける佐藤,頭を振り続けいつもは笑顔だがこの曲ばかりは真剣な顔をみせるえつこ(DADARAY),そして普段はクールに演奏する長田でさえも全身で演奏している姿、命の音をかき鳴らしていると言っても過言ではない音で彼らは私の辛く悲しくだが美しい想いを引き出した。彼女と過ごしたあの日々がとても愛おしかったことを再確認した。私は泣く、泣く、羞恥心もなく泣いた。私がもう一度会いたいと亡くなった彼女を追いかけているように彼らもまた、会うことの出来ない誰かを想いながら演奏していたのかもしれない。そして彼らは轟音を響かせながらその曲を終えた。

私は全身でその曲からの想いを受け取った後に、なんだか心の中が少しすっきりしたような気がした。だが、心の中には彼らが命を削るくらいの勢いで演奏していた轟音が未だに響き渡っている。私の彼女にもう1度だけ会いたいという想いは“届かない”かもしれないが私は“想いきろう”と思った。そうしたらいつか会えるかもしれないとindigo la Endが教えてくれたから。

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