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君が色づけてくれたモノクロの世界

松室政哉 2nd Anniversaryに寄せて

 2019年11月1日に2ステージ開催されたMatsumuro Seiya Anniversary Live 2019「with Quartetto」。その名の通り、シンガーソングライター・松室政哉のメジャーデビュー2周年を記念したライブだ。

 私は両ステージとも見させていただいたものの、正直なところ、見終えての感情を上手く文章で言い表せる気はしない。それでも私の記憶力では心許ないため、忘れない内に綴っておきたいと思ったこのライブについて、1st stageを中心に振り返る。駄文であることをお許し下さい。
 

 この日の会場、Motion Blue YOKOHAMAは、食事やお酒と共に音楽も楽しめるとてもおしゃれな空間。普段のライブハウスやホールとはまた違った空気を纏っている。応援してきたファンにとっても特別な日であることも相まって、開演前には客席にもどことなく緊張感が漂っていた。私自身、自分がステージに上がるわけでもないのに思わずそわそわとしてしまっていた。これまでの松室の活動を各地で応援してきた者同士、見知った顔も少なくない。それも彼が繋げ、広げてくれた縁である。落ち着かないながらも、開演までの間には、そんな皆さんとの話にも花が咲いていた。

 そして暗くなっていく場内、いよいよ開演の時。まずは須原杏率いるストリングスカルテットがステージへ。そのストリングスの音色と共に表れたのはこの日の主役、松室政哉。1曲目に奏でられたのが、「毎秒、君に恋してる」。メジャーデビュー曲であるこの曲が最初に来るのはある意味期待通りであったが、この日スペシャルな編成として迎えられたカルテットも際立ち、弦の持つ魅力だろうか、ゆったりとした原曲とは異なるアレンジに、思わず聞き入り、ぐっと引き込まれた。

 2曲目は「きっと愛は不公平」。ここでもしや、このセットリストはデビュー曲からリリース順に並べられているのでは、と思い始めた。ピアノの松浦はすみも加わり、ライブでも何度となく聞いてきたこの曲の切なさを、ストリングスの音の豊かさが包むような感覚。

 一転して上がるテンポ、手拍子と共に、「衝動のファンファーレ」で少し緊張もほどける。そしてここでやはりリリース順であることを確信。デビューからの軌跡を辿る様なこの曲順だけでも心を動かさずにはいられない。そして、青春時代を想起させてくれ、初心に返らせてくれるこの曲は個人的にも大好きで、それをアニバーサリーライブで聞けて嬉しかった。私の緊張の糸も解けてきたためか、それまで目元に湛えていた涙も頬を伝った。

 ここまではピアノも交えつつ、カルテットと届けてくれたが、ここからの数曲は気づいたらいなくなっていた(笑)ストリングスは一旦お休み、パーカッションの坂本暁良との3人で、お祝いの日ならではの特別な曲達を届けてくれたのだが、これがまた意表をついてくる選曲であった。

 まずはなんと、大阪インディーズ時代の曲である「ハートブレイクドライブ」。あまりの大盤振る舞いに、嬉しい驚きに包まれる。当時をリアルタイムで知らなかった身としては、この曲を生で聞ける日が来るなんて思ってもみなかった。因みに2nd stageではここが「BUTTERFLY」。こちらもデビュー以前に歌われていた曲で、インディーズ時代から長く応援し続けているファンの方には好きな方も多い。私が聞くのは確かこの日が2回目で、流石に記憶に留まりきっていなかったが、改めて聞いてみて、その詞から心のどこかに抱えている傷や痛み、それを歌ってくれるのは昔から変わらないのだなと感じた。

 そんな変わらぬ松室らしさを感じさせてくれた懐かしの楽曲の次に並べられたのは、未だ音源化されておらず、ライブでしか披露されていない新曲「にらめっこ」。それこそ松室らしさ全開のラブソングだ。人気曲「ラブソング。」の主人公達ともどことなく通じるような温度感の二人の姿。こうした温かみを感じる彼の曲が好きだ。

 ライブも中盤に差し掛かり、温まってきたオーディエンスを謎のC&R(今日で2周年のtwo!!、明日から3年目のthree!!!(笑))で盛り上げたところで、昨年のリリース以来、すっかりライブの定番曲へと成長した「今夜もHi-Fi」。パーカッションで引き立てられたグルーヴに、自然と体も揺れる。

 ここでバイオリンの須原が再登場、やはり特別な選曲で、奏でられたのは「横顔」。インディーズ時代から楽曲提供も行っていたが、今回はBENIに曲提供した作品をセルフカバーした。他のアーティストの楽曲のカバーはこれまでも度々あったが、セルフカバーは聞いたことがあっただろうか。松室のメロディーに乗せられたBENIの詞を、彼の声で聞くのは新鮮さもあり、少し大人な恋の世界観に思わず浸る。

 そして、ここからはカルテットのメンバーも集合、この日のメンバー全員で、リリース順セットリストの後半戦を「海月」から再開。この曲は、とりわけ演出も映える曲ではないかと思う。水族館ライブも行われたり、MVではプロジェクションマッピング、今年初めのCity Lightsツアーファイナルでは特別な映像も用意されたりもしていた。緻密な映像なども勿論だが、そのハコごとのライティングもこの曲の世界観を形作ってくれる。この日は、喩えるならばシャボン玉の色の様な、いくつもの色が混ざり合った光で背景が照らされ、くらげという生き物の幻想的な佇まいを思い描いていた。

 続く「僕は僕で僕じゃない」は、何度聞いてもその詞が鋭く突き刺さる。なりたい自分、掴みたいものがあるからこそ葛藤もする主人公には、松室本人の姿も投影されているが、大阪時代から大切にされてきて、上京前最後の大阪ワンマンでも歌われたという「海月」と、『22年の助走をつけて』東京にやってきたものの、初めは当てもなく、もがく姿が映し出される「僕は僕で僕じゃない」という流れに、勝手ながら彼の軌跡も重なるようにも思えた。

 ここでピアノの前に座ると、次の「ハジマリノ鐘」に向けた思いを語ってくれた。自分の曲はラブソングも多いが、自分を好きになれないと誰かも愛せない、と。2ndでは、今も常に不安や疑問も抱えているが、上京したての頃に作ったこの曲を歌うと、自分で作った曲ながらそれが少し軽くなるのだ、とも。松室の優しさ、人間らしさが詰まった曲。思えばこれまでライブで披露される時は弾き語りが多かったように思うが、リリースが発表されて以降、バンドや今回のカルテットなど、他の編成でも聞く機会が増えてきた。同じ曲でもアレンジが異なれば感じ方も変わる。この曲がどんな音でリリースされるのか、これからどの様に広がっていくのかを期待させてくれた。音源化こそされていなかったが、ずっとずっと本人からも、ファンからも、大切にされてきたこの曲を、涙なくしては聞くことなどできなかった。

 リリース順で言うと、「ハジマリノ鐘」が最新曲だが、最後にもう1曲となると何をやるのだろうかと思っていると、「1曲目に『毎秒、君に恋してる』をやりましたが、今日は特別にカルテットも加わってゆったりとしたテンポだったので、最後に普通のテンポでやりたいと思います!」と、音源に近い形でおかわりの毎恋!この日私は両ステージで計4回この曲を聞いたが、その最後、大サビ前の、

 「君に出会ってしまったんだ 色づいたモノクロの世界」

という詞を聞いた時に感じたのは、今の私にとってまさに、目の前にいる松室政哉こそがその「君」なのだということ。この日、午前0時を回って初めて聞いたのがこの曲であった。今や彼の音楽は私の生活の中心で流れている。松室政哉は、私の日々をその音楽で彩ってくれる存在なのだなと改めて感じ、胸がぎゅっとなった。

 一昨年は代々木でのラジオ観覧、昨年はLINE LIVE、そして今年はアニバーサリーライブ。ここ数年の11月1日の節目の日を振り返ると、ファンとしてもあっという間でもあり、本当に濃くもあった。新たな挑戦でファンをわくわくさせ続けてきてくれた彼が、目の前で楽しそうに歌う姿を見て、幸せでいっぱいだった。ありがとう。

 この日は確かにアーティストとしてメジャーデビュー2周年を迎え、3年目に突入する境目となる日。しかし、ここで一区切りというよりは、これまでの軌跡がこの先に続いていくことを感じさせてくれた。一ミュージシャンとしても、一人間としても。そんな3年目のハジマリを飾るライブであったように思う。

 そんな素敵なアニバーサリーライブを終え、早速今月から「ハジマリノ鐘」を引っ提げてのツアーが始まる。今度はどんな色の世界を見せてくれるのか、今から楽しみです!

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