2650 件掲載中 月間賞発表 毎月10日
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

フジファブリックに祝福と感謝を

人生のバックグラウンドミュージック

 
 
 多趣味で飽き性の自分がフジファブリックというバンドをいつ知ったのか、覚えていない。
 高校生のころから、レンタル店で借りてきた音楽を片っ端から聞いて、そのなかで気に入った曲を何度も何度も聴くというスタンスだった。その特別好きな曲の中に「会いに」と「夜明けのBEAT」はあった。
 音楽に詳しいわけでもバンドに詳しいわけでもない、ただ多くある趣味のなかのひとつに音楽を聴くことがある私が、当時「夜明けのBEAT」や、他の曲とボーカルの異なる「会いに」をどう捉えていたかは覚えていない。
 ただ、好きで、繰り返し聴いていた。アーティストより作品重視な私は、いくつか知っていた曲とそれらの曲が同じアーティストのものと知識として知っていてもあまり繋がっていなかった。

 それからいろんなものを好きになった。
 

 夏になって「つり球」を見返すたび「徒然モノクローム」を聴く。

 好きだったアイドルがテレビで紹介した「若者のすべて」を聴く。

 「銀の匙」のアニメを見る。

 さわやかさを求めて、「会いに」を聴く。
 

 多趣味で飽きっぽい自分がとくに好きになってきたものには寄り添うようにフジファブリックの作る音楽があった。高校生になって、大学生になり、社会人になる。そのどの時代を切り取っても、フジファブリックの音楽が流れていた。15年の中のいくつかが人生のどこかで流れる音楽だった。

 いろいろなことがフジファブリックと出会わせてくれるようであった。そして今年たまたまミュージックステーションの出演を知り、はじめて、演奏するフジファブリックを見た。心を奪われた。
 フジファブリックが結成されて、今も、音を奏で続けている。だから素敵な音楽にいくつも出会えたんだなと思い知った。
 

 15周年のお祝いをしたくてたまらなくなった。

 いっぽうで、ファンのたまごみたいな自分が記念のライブに行っていいのだろうかという気持ちも正直あった。多趣味でお茶の間で楽しむことに満足して、音楽ライブに行く機会やきっかけがなくほぼ行ったことがないのに? そう思いながらもIN MY TOWNに赴いたのは、過去のアルバムを順に聴きはじめたことと、FAB LISTの発売も大きかった。(あと、たくさんあった先行!)
 アルバムを聴いて驚いたのだ。一つ一つが良すぎる。音楽を語る語彙がなくなんと言えばいいのか難しいのだが、どれもがフジファブリックの音楽だなと思うのに、様々な曲があるのが面白く、通勤時間も寝るまでの時間もすきあらばひとつひとつ詞を見ながら聴く日々が続いた。嫌いな掃除も運動も、フジファブリックの音楽を全曲シャッフルしながらしてみると次はなんの曲なんやろうと思いながら聴けて、その時間さえ楽しみになった。
  

 そしてフジファブリックを知るたびに大きな愛を感じた。だれのというよりは、フジファブリックに関わるひと、それはファンも含めて。なんとなく聴いたり、とくべつ好きな曲がいくつかあるというだけであっても、のけものになんかされないと思えた。ライブを楽しむのに資格はいらんしなと割り切って、自分は自分なりの気持ちを持とうと向かった。

 はじめて行ったフジファブリックのライブは、ひとことでいうと幸せだった。他のライブに行ったことはないけれど、なんとなく、意図していつものライブみたいにしてるんだろうと思った。いろんなライブの個性があるものだと思うが、フジファブリックはシンプルなライブがとても合うのだろう。
 知り合いなんて一人もいないのに、会場の人たちがあたたかいなと思った。ファンは鏡という言葉が浮かんだ。辛くないのにあんなに涙が出たのははじめてだった。幸せすぎて涙が出ることもあるのだと知った。

 こんなに暖かい空間が世界にあるということが自分にとって何より救いだった。
 本当はギリギリまで、いくか迷っていたのだ。ライブの数週間前から何もうまくいかないことが続いて、余裕がなく、特に夜になるとほとんど何も楽しめなくなっていた。行ってもしお祝いの場を自分が場違いだと感じてしまったりしたら、楽しい思い出でなくなってしまったら、……その可能性があることが夜だけとても怖かった。
 しかし、寝る前にも音楽を聴くことは日常と化していた。楽しいとか関係なく、聴くことが当たり前になっていた「破顔」を聴くとそんな気も日に日に和らいで、気持ちも軽くなって、前日迷いは完全に消えた。

「ただ息をする今日という日が何より素晴らしいことさ
 何もいらない さあ行こう
 心配なんか何もない 何もない さあ行こう」

 なんでこんなに破顔のこの歌詞はまっすぐスッと入って染み渡ってくるのだろう。心配ないと言われたってと思いがちなひねくれた自分がひねくれなくて済む。まっすぐな気持ちが出てきたっていいんだと思う。その歌詞を信じたって。
 

 MC中何度か、「ひとり残らず幸せにする」と山内さんが言っていた。本当にそうだった。胸を張って私は幸せだと思えた。見つけたのだ。
 本当に行ってよかった。これからも、いきたい。いや、いく。
 また、MCでひとりひとりに対して奏でられているのだなと感じたことで、ああ、ここにいるひとりひとりにとってフジファブリックとの出会いや気持ちがあるんだなと思った。
 自分の飛び飛びの出会いも、気持ちも、そのひとつだ。

 不思議なことに続いてた不調はほとんど気にならなくなっていた。というよりも、IN MY TOWNに行ったことで、どんなに思いつめて悩んでたってライブに行けば幸せになれると知ったのだ。 
いろんなことは変わらんけど次のライブまでがんばってみよ。そんな気持ちに、変わった。
 
 歩き慣れた道に植えられた花のように、普段都度気に留めているわけではなくとも、確かに自分の通ってきた道に彩りを添えてくれていた。その存在をやっと見つけた人生にはこれからもずっとフジファブリックの音楽が流れるだろう。

  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい