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2017年7月5日

朝はパン (19歳)
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indigo la End、復活の夜

祈りの声にも似た宿命を

彼らは変わった。
それでも、私の心を掴んで離さなかった。
 

大好きなバンドの活動休止の発表を見た朝、私はドライヤーで髪を乾かしながら泣いた。「自業自得」そんな風に言われても仕方が無いような理由だったが、私にとっては「大好きなバンドが活動休止する」それ以上でもそれ以下でもなく、その事実がひたすら悲しかった。

そして数ヶ月後、彼らは遂に復活を発表した。
嬉しかった。もしかしたらもう戻って来ないのではないか、なんて嫌な想像は全く必要が無かったのだ。しばらく聴けていなかった彼らの曲を夢中で聴いた。行ったライブの記憶をたくさん思い出した。もうあとは、6月23日を待つだけだった。
 

開場から開演までが1時間。この時間がすごくすごく長かった。あと30分。刻々と迫るその時に、体の内側がざわざわして仕方がなかった。最後に彼らを見たのは8ヶ月前、ゲスの極み乙女。との対バンだった。ワンマンは一昨年の12月ぶりだ。そう思った瞬間、ものすごく緊張してきた。あと10分。心臓の動きが速い。そして19時。定刻を過ぎても始まらない様子にもどかしい気持ちが抑えきれなくなる。もういつ来てもおかしくないこの状態にどうしていいか分からなくなる。そして、定刻を5分程過ぎた頃。暗転した会場に拍手と歓声が響いた。

激しいドラムの音が鳴った。それを合図に綺麗で力強いギターが鳴る。彼らの復活、その一曲目は『渇き』だった。新しい正式ドラマーを迎えてから初めてのシングルのカップリングとして収録されていたこの曲。それを象徴するかのように力強いドラムでスタートするこの曲『渇き』は復活ライブの一曲目として、私の心を鷲掴みにするには充分だった。

続いて『瞳に映らない』『悲しくなる前に』
とシングル曲が続く。上手にいた私の耳に最速で飛び込むギターの音が私の大好きな音で、今目の前に確かに彼らが居るという事実にたまらなくなった。次に来た『ハートの大きさ』も私の体温を上げるには最適で、たぶんこの時の私はそれはもうめちゃくちゃに笑っていたと思う。

客席から聞こえた「おかえり」の声に、「ただいま」とぽつり返したボーカル。再び、先程の何倍にもなって客席から「おかえり」が飛び交う。

MCを挟んで、活動休止前にリリースされた最後のアルバムから『ココロネ』と『ダンスが続けば』が披露された。このアルバム、『藍色ミュージック』を初めて聴いた時、彼らの変貌ぶりに驚き衝撃を受けた記憶がある。今までは歌うようなギターとボーカルの歌が絡み合っていたのに、このアルバムではキーボード、そして二人の女性コーラス、ドラム、ベースが幾重にも重なり、全く違ったサウンドを響かせていたからだ。その音は勿論この日のライブでも健在。自然と動く体に響くベースとドラムが心地よかった。

そして更に続いて新曲が披露された。

『藍色ミュージック』で魅せた彼らとはまた違った曲。この人たちはまだ変わるのか?どれだけ引き出しを持っているんだ?そう思いながらも聴き入った。後のMCで言っていたがこの曲は『見せかけのラブソング』というらしい。ここまでストレートな曲名もなんだか新しいなと感じた。

ギターを置いたボーカル。手に握ったマイクで歌われたのは『夏夜のマジック』サビの少し前、ボーカルが挙げた腕に合わせてゆるやかに上がる客席の腕がゆらゆらと揺れるのが素敵だった。ゆっくりとした綺麗なメロディにステージと客席が酔いしれ、その余韻を残したままそっとこの曲が終わった。

ぐだぐたの長いMCが始まる。ボーカルの独壇場と化したライブハウス、これはまさに彼らだ。どうやって次の曲に行くのかと言えば、まさに強行という感じで、ぐだぐた話したあと唐突に「新曲やります」と言って曲が始まった。彼らの切り替え方はすごいと思うが、正直わたしの切り替えが追いつかない。

だが披露された新曲『プレイバック』が切り替えの追い付かない私の心をぐっと引き込んだ。前日に公開されたMVで一度聴いていたがやはりライブはすごい。なんの隔たりもなく飛び込んでくる音たちはめちゃくちゃかっこよかった。印象深いメロディのサビが《プレイバック》という歌詞と共にガツガツと鼓膜に響く。彼らの曲は頭に残るメロディが多く、これを書いている今も私の頭ではプレイバックが流れている。

新曲で魅せた後は『実験前』で会場と私の熱気を上げまくる。全ての楽器がひたすらかっこいいこの曲。特にバリバリ弾きまくるベースが骨の髄に響き渡ってたまらない。と思ったら続いては『eye』これは彼ららしさというより「藍色ミュージック」というアルバムらしさが溢れた曲だ。ここまで新曲と「藍色ミュージック」から多くの曲が披露されていたが、次のイントロのギターの音で私の動きは静止した。

《早くしないと曇り空 雨に変わっちゃうから》

「夜に魔法をかけられて」というアルバムの中の曲、『彼女の相談』だった。優しいギターが印象的なこの曲が私は大好きで、ものすごく嬉しかった。新しいドラムとキーボードが入った状態でこの曲を聴くのは初めてだったが、少し加わったアレンジが今の彼らをしっかりと証明していた。

ボーカルとギターが向き合って、ボーカルが足でリズムをとっているのが見えた。数拍数えたあと二人の息がぴったり揃って奏でられた印象的なギターの音。『インディゴラブストーリー』だ。彼らのバンド名が入ったこの曲はイントロとアウトロのギターの音が同じなのが特徴的だ。向かいあって弾くギターとボーカルにぐっと心を握られる。そして再び長いMCの後、『雫に恋して』が披露された。ボーカルの歌詞が飛んで最初からやり直しになったりしたが、、、それもまた彼ららしいと言うのだろう。続いて『藍色好きさ』を挟んで本日3曲目となる新曲が披露される。

ここまでで3曲も新曲を披露した彼ら。活動休止から復活して初めてのワンマンライブでこんなにたくさん新曲を織り込んでくるセットリストは、復活した彼らのこれからを確実に提示しているように見えた。

このバンドは曲間に奏でられるドラムやキーボードで次の曲の予想がつかない、そんなライブをする。次は何が来るのかわくわくそわそわしてどうしようもない。そんな中響き渡ったギターの音に、私はまた静止した。

静止する私を他所に前に出てきたベースとギター。その顔がものすごく楽しそうで私は気づけば夢中で腕を上げていた。

《一度だけあなたに恋をした 》

『夜明けの街でサヨナラを』。私が活動休止前にこのバンドを見た時、アンコールで聴いた曲だ。楽しそうに演奏する彼らの姿を見て思わず泣いてしまった思い出がある。そんな思い入れのある曲をまた聴けている。そして彼らは今日もものすごく楽しそうだ。私はもう泣かなかった。ただひたすら笑っていた。

《夜明けの街であなたにサヨナラを歌った》

あの日はこの歌詞が酷く悲しかったが、今はそんなことは全くない。新曲を盛り込みまくったこのセットリストを見てわかるように、もう彼らに「サヨナラ」なんて思う日はきっと来ないのだ。

「次で最後の曲です」

そう言って続いた歌

《渇く前に君に触れるんだ》

『心ふたつ』。イントロはなく、いきなり歌から始まるこの曲。歌いだしで心臓が痛くなった。動悸がした。続くギターの旋律が激しく波打つ心臓を鎮めるように優しく響く。冒頭の歌詞が《渇く前に君に触れるんだ》であるこの曲。ライブの一曲目を『渇き』で初め、終わりをこの曲で締める。なんだかすごく素敵だと思った。

アンコールは当たり前のように起こる。段々と速くなってしまうこの手拍子はどこのライブでも最早恒例行事であろう。再び明るくなったステージに拍手と歓声。アンコールに出て来てくれて嬉しいという気持ちともうすぐ終わってしまうのかという悲しい気持ちが混在した心の前で、また長いMCが始まる。もう意図的な焦らしとしか思えない。
 

やっと歌われた曲はまたしても新曲だった。『鐘泣く命』。ラジオで一度聴いたこの曲が、私はすごく気に入っていた。視界に入る二本のギターがひたすらかっこよかった。すごくよかった。《この日々が命》そんな言葉が繰り返されるこの歌。《この日々が命だから願い歩いて》

そしてまた、繋ぎ方にどきどきさせられる。

ゆっくりと、二本のギター、ベース、ドラム、コーラス、キーボードが絡み合う。徐々に広がっていく音の先で歌われる歌。

《渚にてもう一度 会えるかな幻に》

このフレーズだけが繰り返されるこの曲『渚にて幻 long ver.』。オリジナルの『渚にて幻』に大幅なアレンジが加えられたこの曲。『渚にて幻』にはもっと沢山歌詞があるのに、それをすべて省いてこのひとフレーズだけしか歌われないこの曲。だが、この曲が本当にたまらなかった。徐々に、確実に広がっていく音。歌は同じフレーズだけを繰り返している筈なのにどんどん盛り上がっていく曲。点滅もしない色も変わらないただ照らされただけの照明の下で、ひたすら描き鳴らされる音楽。ボーカルの歌が終わり、楽器とコーラスだけがひたすら、ひたすら描き鳴らされる。頭を振り描き鳴らされるそれから目を離すことは許されない。目の前のステージを両手で頭の上まで高く持ち上げて「これが私の大好きなバンドですよ」と世界中に知らせたくなる。「これが私の大好きなバンドですよ!これが私の大好きなindigo la Endです!」そう大きな声で叫びたくなる。隙間なく埋め尽くされた音にただ魅入り聴き入ることしか出来ず、動くことも、腕を上げることも、何も出来ない。照明がジワッと更に明るくなって、曲の盛り上がりが最高潮に達する。

もう、大好きだった。ステージの上で客席なんか見向きもせずにひたすら音楽をする彼らが大好きだと思った。
 

彼らは変わった。

この日披露された数々の新曲が、彼らの進化を訴えている。それは確かな変化で、プラスととる人もいればそうでない人もいるだろう。

それでも、私の心を掴んで離さなかった。

それはきっと進化や変化以前の部分で、初めて彼らを見た3年前のライブから全く変わらない部分、歌もなく、ただひたすら各々の楽器を客席を見向きもせず掻き鳴らす、そういう部分にそうさせられているように思った。
 
 
 
 
 
 

彼らのスウェルという曲にこんな歌詞がある。

《祈りの声にも似た宿命を》
 
 

このライブを見て、彼らは音楽をすることが宿命なのではないかと思った。そう思ってしまうほど、彼らが掻き鳴らす音楽と、音楽を掻き鳴らしている彼らが好きだと思った。もう止まらないで欲しい。ライブの最後、ステージで音楽を掻き鳴らす彼らをみてそう祈った。

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