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2017年7月6日

マイ (28歳)

音楽に胸ぐらを掴まれた日

MOROHA is my super hero

 

彼らとの出会いは突拍子もなく訪れた。
 

テレビをBGMがわりに流し、視線はスマホのSNSを目的もなくただただ追う。仕事から終わって帰って来ると、これが日課になっていた。
実家暮らし、夢中になれる事も、夢もない。人見知りで内気で、何よりも、本音、というものが言えない人間だった。嫌われたくない一心で、本音は噛み砕いて飲み込む。嫌われたくない一心で、嫌でも笑い、好きなものも好きと言えない。自分のようで自分じゃない、からっぽのままここまで来てしまったんだ。

あの日もそうだった。
仕事が早く終わり、帰宅。テレビを適当に流して、目線はスマホへ向かう。
SNSにまたひとりごとが漏れる。
今日は嫌だったなぁ、疲れた、最悪。また寝たら嫌な明日がはじまるんだ。
ネガティヴで膨らんだ風船は破裂寸前までパンパンになっていた。
とくに見もしないのに適当にチャンネルを回していく。

運命って言葉を軽々しく使うのはどうかと思うが、これだけは運命だって信じたい。

最後に回したチャンネルから、こう聞こえてきたのだから。

『革命です、どうぞ。』

まさに曲がはじまる瞬間だった。
静かにアコースティックギターの旋律が流れてくる。その後間髪いれずに聞こえてきたのは鬼気迫るラップ。

『ごめんな友よ、俺はもう行くよ。居酒屋だけの意気込みじゃゴミだ。お前も本当は気づいてるんだ。素面じゃ語れぬ夢は惨めだ。』

画面から腕が出てきて胸を鷲掴みにされる、そんな感覚だった。
歌を聴いてる、というよりも自分自身に語りかけてくれてるんじゃないか、そう思った。背中越しに聴いていたが、気がつけば、画面にかじりつくように夢中で彼らを見ていた。

『真っ暗闇の未来に描き殴る蛍光ペンを求めて 半径0mの世界を変える革命起こす幕開けの夜』

彼らの登場シーンが終わってからも、曲が、フレーズが、頭の中を何回も何回も駆け巡る。もっと彼らを知りたい、もっともっと聴きたい。
素直にそう思った。同時に彼らに魅了された瞬間だった。
 

最初に彼らをライブハウスで見たのは、2016年5月28日日曜日。東京恵比寿リキッドルーム。彼らにとって初のリキッドワンマン。私にとって人生初のライブハウス。行くギリギリまで、こんな田舎者が行ってもいいんだろうか、邪魔にならないだろうか。またしてもネガティヴが顔を出してくる。そんな時、彼らの音楽が弱気な背中を押してくれた。

youtubeを御覧の皆様へ。

『私が行ったら浮くんじゃない?つまらん事を言ってんじゃない。』

『もし画面の向こうで
泣いてるなら
ここで一緒に泣こう
もし画面の向こうで
笑ってるなら
ここで一緒に笑おう
だから一度で良い 一度で良い
ライブに来い』

心は決まった。修学旅行以来だ。行ってやろうじゃねぇか。ビビってる場合じゃない。生で聴いてみたい、その気持ちだけを持って新幹線に飛び乗った。
いざ、東京へ。
 

人生初のライブハウスは同年代の人達で溢れかえっていて熱気が凄かった。身動きがとれないくらいの超満員。そこに、人が苦手な自分がいる事が不思議でならなかった。
爆音の中、慣れない空気に緊張しながら、彼らを待つ。無人のステージ上には、一本のギターがスポットライトに明るく照らされている。2人が来るのを静かに待っているようだった。

そして、ギターのUK、MCアフロが現れた。
同年代とは思えないほどに、全てがでかかった。例えるならば、自分がアリで彼らは象。姿を見るだけで圧倒されてしまった。
あの日テレビで知ってから今日まで。憧れ続けた人達が今目の前にいる。そんな感情に浸っていると、テレビで、CDで何百回と聴いた、旋律と歌声が会場内に響き渡りはじめた。
 
 
 

地元に帰ってきて、またいつもの日常がはじまる。いまだに、仕事が嫌だと思うし、肝心なところで本音はまだ言えない。でも、彼らの音楽を思い出すと、大丈夫かもって不思議と思えるようになった。今、車のBGMやイヤフォンは大好きな彼らに担当してもらっている。

背伸びしない、汗臭いような人間臭い彼らの等身大の音楽が、わたしの胸ぐらを掴んで、

『お前さぁ、何してんだよ!ちゃんと背筋伸ばせよ!』

って聴くたびに言ってくれてる気がする。
 
 

『MOROHAと申します、よろしくどうぞ。』
 
 

わたしはわたしの知らないどこかで、ずっと、ずっと待ち続けていたんだと思う。
MOROHAに出会えるのを。
MOROHAに出会えて、人間っていいなって思える日を。

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