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BUMP OF CHICKENが届けてくれた流れ星の輝き

消えない光が持つ力

BUMP OF CHICKENの『流れ星の正体』を聴いて涙が出た。音楽を聴いて泣いたのは初めてだった。初めは、なぜ泣いているのか自分でもわからなかった。

『流れ星の正体』は、BUMP OF CHICKENの「音楽を届けたい」という想いが強く伝わる曲だ。「誰かに伝えたい気持ち」を流れ星に例えて歌われており、最後の大サビ部分は壮大な演奏と力強い歌声で圧倒されるほどのエネルギーを感じる。
その強い想いにとても感動した。だが、この言葉だけに収まらない気持ちがまだまだある。
BUMP OF CHICKENの「音楽を届けたい」という想いや音楽に対する姿勢は、私が彼らの音楽に興味を持ち、聴くようになった頃から変わっていない。それは曲を聴いたり、ライブを観たりすることで感じ取れるし、ラジオでの言葉や雑誌のインタビューからもわかる。
ではなぜ、今になって涙が出るほど心が揺さぶられたのか。

それは、辛い時や苦しい時に聴いた、BUMP OF CHICKENの曲を思い出したからだ。思い出したと言えばそれまで忘れていたのかと捉えられそうだが、決してそうではない。それまでもずっと私の中にあって、とても大切だった。そんな曲達を、とても愛おしく感じた。だから”思い出した”というより、”再認識した”という表現の方が正しいのかもしれない。
 
 

高校生の時にBUMP OF CHICKENを好きになった。きっかけは友達がカラオケで歌った『ラフ・メイカー』だった。その時初めて聴いた訳ではなく、何となく聴いたことがある曲だった。ただ、それまで歌詞をちゃんと理解せず、何となく聴いていた『ラフ・メイカー』は、「消えてくれ」とか「裏切った」とかを叫ぶように歌っていたものだから、「何だが攻撃的で怖い曲」というイメージだった。しかし、初めて歌詞を見ながら聴いたら、それまで抱いていたイメージと全く違っていた。なんて面白い物語なんだと思った。
それからすぐにBUMP OF CHICKENのことを調べてCDを集め、歌詞カードを見ながら聴いたり、学校に行くまでの電車の中で聴いたり、勉強しながら流したり、毎日のように聴いた。攻撃的に聴こえても、人の卑怯な部分や暗い気持ちを歌っていても、優しい歌声とどこか温かみを感じる彼らの音楽に惹かれていった。

私は音楽が好きで、吹奏楽部に所属していた。好きではあったが得意ではなかった。部活動で行き詰ったとき、『才悩人応援歌』を聴いた。
人間関係に悩み、自分の居場所がないと感じていたとき、『プレゼント』を聴いた。
高校卒業後の進路に悩んでいたとき、『firefly』を聴いた。
学校に行くのが嫌で仕方なく、生きていることが辛かったとき、学校に行くまでの電車の中で、毎日『モーターサイクル』を聴いた。

音楽は、聴く側によって捉え方や受け取り方が変わる。同じ音楽を聴いて、元気になる人もいれば、切なくなる人もいる。また、一人の人が同じ音楽を聴いた場合でも、その時置かれている状況や精神状態によって、背中を押してくれたと感じたり希望を見出せるときもあるが、何も感じないときだってあるだろう。
私が高校生の時、本当に辛く苦しい時に聴いた彼らの音楽は、背中を押してくれることはなかった。そこから希望も見出せなかった。でも、毎日聴き続けた。
曲達はただ、居てくれた。温もりを持って、ただただ、私の側に寄り添ってくれたのだった。その時に感じていたのは、微かな安心感だったのかもしれない。
 

高校生の時は毎日聴いていた音楽だったが、高校卒業後しばらくして、生活環境の変化などから音楽を聴けなくなり、聴かなくなった。好きなアーティストの新曲が出ても2、3回聴いて終わったり、情報をあまり追わなくなった。BUMP OF CHICKENも例外ではない。
音楽に対する熱量は、だんだんと少なくなっていった。

そんな中、「BUMP OF CHICKENがテレビで新曲を披露する」という情報を得た。
驚いた。BUMP OF CHICKENがテレビに滅多に出ないことを知っていたから、その情報にも驚いたが、何よりも私の胸が高鳴ったことに驚いた。高校生の頃、新曲が出た時のように心がワクワクと踊り、少しの緊張を感じた。久しぶりの感覚だった。
テレビで見た彼らは最高にかっこよかった。優しさと切なさの中に響く力強い歌声と演奏、メンバー全員でのコーラスが印象的だった。その時披露された曲は『話がしたいよ』。私はその番組を録画し、何度も繰り返し観た。気が付けば歌詞を見なくても歌えるようになっていた。

それから、音楽を聴くことが以前にも増して楽しくなっていった。高校生の頃のように毎日楽器に触れたり、多くの音楽を、歌詞カードを見ながらじっくりと聴くようなことは出来ないが、時間を見つけては聴くようになっていった。
 

しばらくして、『話がしたいよ』も収録されたアルバム『aurora arc』が手元に届いた。既にリリースされている曲が多く収録されていたが、私にとっては新しい出会いだった。
何度聴いてもワクワクして、最後は名残惜しくなる、そんな作品だった。
このアルバムの表紙は、実際に撮影されたオーロラの写真が載っている。BUMP OF CHICKENのメンバーは、このオーロラの撮影に同行し、カナダのイエローナイフまで足を運んだそうだ。
キラキラと美しい曲を巡る、まさに「オーロラ観測の旅」に連れて行って貰えるような、そんなアルバムだった。
 
 

このアルバムの14曲目、本編の最後に『流れ星の正体』は収録されている。

この文章の最初で、「誰かに伝えたい気持ち」を流れ星に例えて歌われていると書いたが、BUMP OF CHICKENの曲の作詞作曲をしている藤原基央さんは、その気持ちを唄にして届けてくれる。曲中の流れ星とは、BUMP OF CHICKENの曲のことでもある。
「誰かに伝えたい気持ち」をなぜ流れ星に例えたのだろう。

同アルバムに収録されている『アリア』では、このように歌っている部分がある。

〈言葉は上手に使ったら 気持ちの側まで 近付けるけれど
同じものにはなれない 抱えているうちに 迷子になったよ〉

「気持ち」というものを、正確に表現することは難しい。「嬉しい気持ち」「悲しい気持ち」「好きな気持ち」「辛い気持ち」様々あるが、どれくらい嬉しいとか、どのように悲しいとか、誰かに伝えることは簡単ではない。人それぞれに「好きな気持ち」「辛い気持ち」があり、全く同じ「好き」や「辛い」もなかなかないだろう。もっと複雑な感情もたくさんある。多くの言葉を知っていても、それを上手に使っても、「気持ち」の側までしか近付けない。言葉と気持ちは〈同じものにはなれない〉のだ。それを伝えられず抱えていると、何を感じ、伝えたかったのか、「気持ち」は迷子になってしまう。

また、同アルバムに収録されている『Spica』ではこのように歌われているところがある。

〈伝えたい事 言えないまま 消えたらと思うと怖くなって
出来るだけ頑張るけど どうしていつまでも下手なんだろう〉

藤原基央さんは、迷子になった「伝えたい気持ち」が消えてしまう事を恐れているようだ。恐れを感じながら誠実に気持ちと向き合い、誰かに伝えることは計り知れない労力を要するのではないだろうか。〈どうしていつまでも下手なんだろう〉と唄うのは、コンプレックスを感じているように聴こえる。

自分の中に生まれた誰かに伝えたい気持ち、それはすぐに消えてしまう儚いものだというところが、流れ星の輝きに似ているのかもしれない。彼は様々な想いと向き合いながら、音に乗せて、必死に伝えてくれているのだ。
 

流れ星は空を見上げていなければ気が付かない。
もし、BUMP OF CHICKENがテレビに出演しなかったら、私はもう音楽への興味が薄れ、BUMP OF CHICKENの曲を聴くことも無くなっていたかもしれない。必死に届けてくれる流れ星にも気が付かなかったかもしれない。
しかし私は今、「気持ち」を表現することの難しさを痛感しながらこの文章を書いている。
流れ星は私の空まで届いた。そして、今までも届けてくれていた。
 

〈君が未来に零す涙が 地球に吸い込まれて消える前に
ひとりにせずに掬えるように 旅立った唄 間に合うように〉

『流れ星の正体』で唄われていた。私が高校生の頃、BUMP OF CHICKENの曲に側にいてもらったことが未来だった時も、恐怖と戦い、とてつもない労力を費やし、切に願いながら、必死に音楽を届けてくれていたのだと思い知った。だから、あの時聴いた曲達をとても愛おしく感じたのだ。私はひとりではなかった。

この曲は、最後にダイナミックな広がりを見せる。

〈太陽が忘れた路地裏に 心を殺した教室の窓に
逃げ込んだ毛布の内側に 全ての力で輝け 流れ星〉

〈お互いに あの頃と違っていても 必ず探し出せる 僕らには関係ない事
飛んでいけ 君の空まで 生まれた全ての力で輝け〉

心を殺した教室の窓に、逃げ込んだ毛布の内側に届いた流れ星は、今でもずっと私の中で輝いていた。
あの頃と違っていても、探し出してくれた。
またBUMP OF CHICKENの音楽を、大きな熱量を持って聴くことができた。音楽を聴くことが楽しいと思えた。そのことに喜びを感じ、とても嬉しかった。

音楽は今、私の生きる力になっている。
再び空を見上げることが出来たこと、飛んでいた流れ星に気付けたこと。それは、消えてしまうかもしれない恐怖に抗いながら、力強く輝いて飛んでくれた流れ星の、そして、届けてくれたBUMP OF CHICKENのおかげに他ならない。
 

ここに記しておきたいと強く思った。
BUMP OF CHICKENへ心からの愛と感謝を。
 
 
 
 

〈〉内 BUMP OF CHICKENの『アリア』『Spica』『流れ星の正体』の歌詞を引用。

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