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浜崎あゆみの時代

彼女が見た永遠

彼女はいつからか、人間を貫くことを決めたんだと思う。
誰かの理想でいることをやめて、自分の人生を生きていくことにしたんだと思う。

その言動は誤解を招いて、周りは色々言うかもしれない。
自分よりも頑張っている人や輝いている人を見つけては、遠くの安全なところから、そこに向かって嫉妬の小石を投げる人が溢れる現代においては、器用な生き方じゃないのかもしれない。
けれど彼女は、人間として生きていくことを、いつからか覚悟したように私には思える。

彼女と過ごしたこの20年で、私もずいぶん大人になった。
思い返せば、事あるごとに彼女の言葉に魂をゆさぶられてきた。
30歳を超えた今も、彼女の言葉が、私の中で鳴り続けている。

彼女の本が話題を呼んでいる今、私が見た彼女の歴史を、言葉にしてみたくなった。
 

あれはまさに社会現象だった。
彼女の振る舞いが一企業の株価を左右したことの重大さが、大人になった今、ようやくわかる。

日本全体で消費された浜崎あゆみの量は、いったいどれくらいだったんだろう。
CDが、雑誌が、音楽が、言葉が、プライベートが、ファッションが、化粧が。
彼女にまつわる全てが量産され、いたるところで消費されて、彼女のイメージは増幅を続けた。
華やかに見えるその消費には、誤解も曲解も潜んでいた。
止めることのできないその歪みを、彼女はどんな想いで見ていたんだろう。

彼女が救った孤独が、山ほどあったはずだ。
彼女が癒した痛みが、山ほどあったはずだ。
彼女が彩った一瞬が、山ほどあったはずだ。
彼女の歌が、山ほど溢れていたはずだ。

彼女の孤独を、恋を、失望を。
私たちは自分の人生に、重ねてきた。
彼女の過去を、自由を、希望を。
私たちは消費して、生きてきた。
彼女の覚悟に、選択に、愛に。
私たちは背中を押されて、進んできた。

けれど、栄枯盛衰・盛者必衰。諸行無常の世の中は、永遠と相性が悪い。
いつからか彼女は、少しずつ彼女は、日本一の人気者ではなくなっていった。

彼女から離れていく人は、口々に言った。
「浜崎あゆみは変わってしまった」「あの頃はよかった」と言った。

確かに彼女は変わった。
孤独よりも幸せを歌うようになった。
内面に入っていくのではなく、外側に向かっていくことも多くなった。

けれど、変わったのは浜崎あゆみだけではないと、私は思っている。
私たちだって、変化をしているのだ。
お互いが形を変え続けているから、少しずつ少しずつ、フィットしなくなるだけのことなのだ。

彼女はそれを、早くに自覚している。
3rdアルバム「Duty」のタイトル曲「Duty」で、彼女は自分もいつか終わることを歌にしている。

「確かにひとつの時代が終わるのを
 僕はこの目で見たよ
 だけど次が自分の番だって事も
 知っている本当は」(Duty)

世界は動く、時代はまわる。
始まるということは、終わるということ。
彼女は熱狂の真ん中で、その先にある終わりを自覚していた。

「君を咲き誇ろう
 美しく花開いた
 その後はただ静かに
 散って行くから…」(vogue)
 

みんなが自分の理想を投影して作り上げた浜崎あゆみは、もうここにはいない。
誰かの青春の中に、思い出の中に、閉じ込められたままでいるのではなく、他の誰かのように、あたりまえに、彼女は変わり続けている。
多くの人の憧れでは、もうないかもしれないけれど、その分、彼女へと続く親愛の糸は、ずっとずっと強くなっているような気がする。
彼女はきっと、一生かけて浜崎あゆみを続けていくんだと思う。
一本でもこの糸がつながっている限り、右手にマイクをもって、歌い続けてほしいと願ってやまない。

「どこにもない場所で
 私は私のままで立ってるよ
 ねえ君は君のままでいてね
 そのままの君でいて欲しい」(SURREAL)

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