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心地よいあの日の気持ちを

クリス・コナー「Sketches」を聴いて想うきみとぼくの世界

クリス・コナーというジャズシンガーが1972年に発表したアルバム「Sketches」は、そのタイトル通り、ある風景を素のまま写し取ったような手軽さと心地よさがある。クリス・コナーはジャズの人だけれど、ここでは当時のポップス、シンガーソングライターの曲を取り上げてカバーしている。
 

有名なところでは、
ビートルズの”The Long and Winding Road” 
カーペンターズの”we’ve only just began” 
ローラ・ニーロ”time and love””Buy and sell” ジェイムズ・テイラー”fire and rain” 
キャロル・キングのザ・シティによる”hi de ho” 等々…
 

僕はそのなかでも、”Snowbird”という歌が大好きだった。
クリス・コナーが身軽なリズムで唄うボサノヴァの音楽が、描く詩と見えてくる景色をいつも慈しんで聴く。
自分にとってこの曲は、心のうたで、優しいこころであるための、木々と風と揺れる葉の、その中の鳥たちのための音楽だった。
 

ある日、このレコードに出逢った。
見つけたその時、試聴出来たのはその”Snowbird”だった。一瞬で分かった。これが自分の心の音楽になるだろう、その風が吹いて駆けていった。
 

僕はこういう優しい音楽を、好きなひとといっしょに聴きたかった。1960年代のソフトロックやお洒落なジャズやポップスを、心地よい夢のように響かせたいという希望を想い描いていた。
そんなレコードを集めていたりした。

となりに居るだけで優しく穏やかに過ぎてゆく時間は、とっても大切で、いとおしい。

僕は家で、クリス・コナーの”Snowbird”を何度もかけていた。このレコード盤が目に見えて円を描いて回っているあいだ、きみに届けと願っていた。ぼくには空を翔る鳥たちと風の色が見えていた。
夢かもしれない、ただの希望でしかないのかもしれない。
それでも詩を描くきみと、絵を読むぼくの、繋がっている空と気と望みはおんなじだと信じていた。
 

こういう音楽は、お洒落な人がカフェで過ごしながらゆったりと聞く音楽かもしれない。それを一人で聴いている今の自分の気分は、なんともいえなく淋しい。
 

ある時、つまらない自分に気付いて、僕はロックばかりを聴く事を始めていった。ロックは元々、自分が音楽を聴くきっかけになったものであって、そこに戻るのは自然なことだ。僕はあの時の最初の高揚した気持ちの揺さぶられた最高の気分を取り戻したかった。

そうしてきみにもロックを聞かせたかった。
 

あいみょんは、「君はロックを聴かない」という歌のなかで、
“君はロックなんか聴かないと思いながら 
少しでも僕に近づいてほしくて 
ロックなんか聴かないと思うけれども 
僕はこんな歌であんな歌で 恋を乗り越えてきた”

と唄うけれども、僕は”ロック”で恋を乗り越えてきた訳じゃなかった。
ロックは、自分が孤独で在る事のそれでも生きる証みたいなものだ。
 

ザ・ブルーハーツは、「人にやさしく」の歌のなかで、
“気が狂いそう やさしい歌が好きで ああ あなたにも聴かせたい”

と唄うけれども、

僕が聴いて感じるこんな優しい歌で、あんな優しい歌で、あなたの心を動かせるとは思えない。

優しい歌を聴く時とロックを聴くとは別の気分だ。
言い換えて、
気分は別でも全部おんなじだ。自分のせかいはそれで出来てる。

一人で聴いてさみしい歌は、なんとなく、想い出に浸っている自分の姿を際立たせるような気持ちになる。

だから僕はロックを聴きたい。
しかしロックばかりを聴く気もない。
という気持ちもある。
僕は想い出に浸って生きていきたいと思えない。
自分が感じたいのは”あの時の”それとおんなじ鮮やかさだ。
 

Chris Connor(クリス・コナー)のアルバム、
「Sketches(スケッチズ)」は、自分にとって、
今まで聴いてきたいろいろのソフトなポップスのなかでも特別だ。少しでもぼくに近づいてほしくて、少しでもきみに近づきたくて、
いっしょに聴いた”Snowbird”だった。
響きは今も鮮やかにこの心に在る。

その心を、その時の想い描いた詩を、
僕は忘れたくない。
 

クリス・コナー「スケッチズ」を聴いて、自分が見つけたのは、ロッド・マッケンという人がプロデュースしていること。そしてこんな発見もある。レコーディングエンジニアの一人に、フィル・ラモーンの名があったりする。
このアルバムは録音もマスタリングも良いと思う。そう感じるのは音楽が古くさく聞こえないプロダクションとスタジオの技術力もあると思う。
 

Rod McKuen(ロッド・マッケン)という人の存在が気になって、レコードを探す時に気にしていた、ある日、Rod McKuen「Goodtime Music」という1975年のアルバムを見つけた。そこにはスタンダードな名曲”Moon River”が入っていた。
残念なことにそのレコードは手に入らなかった。

レコードを探していて、ある時、昔観た映画「ジョアンナ」のサウンドトラックのアルバムを見つけた。

1960年代の時代の華やかさとクールな映像と美しい人たちが印象的だった映画「Joanna」は1968年の映画だったか。
自分が憧れた1960年代のお洒落なファッションが溢れていたこの映画は好きだった。高校生くらいの時、一度しか観ていないのに記憶は鮮やかだ。

出演していた俳優ドナルド・サザーランドの名前と顔を覚えたのもこの映画だった。ジョアンナを演じるジュヌヴィエーヴ・ウエイトも可愛い。この人が後に結婚したママス&パパスのジョン・フィリップスのプロデュースでアルバムを出していたというのは後で知る。(Genevieve waite「Romance is on the rise」1974)
その「ジョアンナ」の映画のサウンドトラックの音楽を担当したのがロッド・マッケンだった。映画を観てから20年くらい経ってみて、そんな事は全然思ってもみなかった。

ロッド・マッケンは、
クリス・コナー「スケッチズ」のアルバムにも曲を提供している。
レコードのサイド1とサイド2の最初の曲は、ロッド・マッケンの作品で揃えられている。
“Hit’em in the head with love”と
“As I love my own”
アルバム全体が有名な曲で目立っているけれども、このロッド・マッケンの2曲も良い曲だと思う。
 

風が吹き抜けていくのが見えるような素晴らしい音楽と歌、
Chris Connor(クリス・コナー)の
“Snowbird”をいつかまた聴いてみてください。

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