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NICO Touches the Wallsの活動終了を聞いて

読まなくてもいいからNICOの曲を聴け

NICO Touches the Wallsが活動終了を11月15日正午に発表した。

それはあまりに唐突で、あまりに驚きだった。
以前、音楽文に音楽との出会いは唐突なんて話を投稿させていただいたが、別れも唐突だった。

実際のところ、全く予想していなかったことかと言われるとそうでもなくて、8月末の夏フェス以降バンドの予定は何一つない状態が2ヶ月続いていた上、例年行っていた11月25日のイイニコの日の企画の詳細は全く発表されてなかったので、ファンの中には何かあるのではと身構えている人もいた。

でも。でもだ。
3ヶ月ぶりに公式LINEから通知が来て、イイニコの日の詳細かなって開いたら、あんな書面があって。

私で言えば、大学の授業中だった。授業中にLINE見たのかとか言う人がいるかもしれない。うるさい知るか。
パソコンの画面に小さく映し出された画像はぼやけていたが、NICO Touches the Wallsを終了するとの文字が見えた。

ああ。
震える手でがさごそとカバンを漁って、スマホを手にTwitter、公式サイトを確認した。

ああ。

そこからは色んな声が一気に動いた。昼休みが終わって、3限目に入る頃にはNICOに関するワードがTwitterのトレンドにたくさん入っていた。様々な音楽関係者もコメントを寄せていた。

社会人でいえば昼休みだったかもしれないし、学生でいえば授業中だったかもしれない。それぐらい日常の唐突だった。

3限が終わり、夜に予定があった私はそれまでどうしたらいいのか分からなくて、とりあえずカラオケ店に向かった。
道中、イヤホンでNICOの曲を聴いてみた。感情が溢れて、泣いてしまうのではと思ったけど、案外平気だった。人前が苦手な性格が初めて功を奏したのかもしれない。カラオケもNICOの曲ばかり入れて歌っていたけれど、なんともなくただ歌えた。なんだそんなもんか。まあ曲は死なないし。何も変わらないか。なんて強がっていた。
「天地ガエシ」を歌っていた時、ふとライブの光景が視線の先に浮かんだ。赤いギター抱えて叫ぶ光村さんの歌声。速くなった間奏で暴れる古村さんのギター。見た目に反して低い音で煽ってくる坂倉さんのベース。軽快で踊ってしまうようなスネアを叩く対馬さんのドラム。

ライブでしか聞けないあの声、速さ、アレンジ、生音、4人での生の音楽はもう二度と聞けない。

そう思うと同時に、私の歌声を表す線はどんどん低くなって、最終的にはマイクを通さない嗚咽がただ響いていた。

その後は、ただ夜の用事を済ませ帰って寝た。自転車で坂を下っている時とか、夕飯で煮物を食べている時とか、そういうよく分からないふとした瞬間に涙が出そうになったりする自分がとにかく怖かった。

翌日起きて、夢じゃなかったということがよく分かったので、自分の感情を整理するために長い文章を書くことにした。それをこうやって音楽文に投稿するのは、NICO Touches the WallsがTwitterのトレンドに数時間いただけのバンドではないとどうにか思いたいからだ。

私のNICOのファン歴はなんとも表すのが難しい。曲をなんとなく好んで聴いていた時期で言えば6年になるが、メンバーの顔と名前を一致させ、音と曲名を一致させ、ライブに足繁く通うようになった時期でいえば1年半になる。ファンに分かりやすく言うと、光村さんが金髪になったタイミングからだ。

1年半という期間はNICOの15年の活動期間に対してあまりにも短い。私は13年半ものNICOを知らない。三回の武道館も、一ヶ月間ライブしたカベ ニ ミミも、たくさんのイイニコの日も、たくさんのツアーも、たくさんのタイアップも、何も知らない。イイニコの日なんて結局1回しか参加できなかった。行きたかった見たかった経験したかったと思うライブ、出来事は数え切れないほどある。2017年のFighting NICOツアーなんてセットリストを見るだけでヒリヒリしてしまうし、タイムマシンがなんでこの世にないんだろうってよく嘆いていた。
だからその分これからの活動がきっとすごいんだろうって期待していた。これからもっともっと見たことの無い景色を見せてくれるんだろうって思っていた。

全部ファンとしてのエゴだったと分かった今、この思いはどうしようもなく放置された状態だ。

ただ私の知らない過去や未来に対する思いと同様に私の知っている1年半もたまらなく濃かった。
約1年前、2018年11月4日に行われた幕張メッセイベントホールでのワンマンライブは私の中でとても強く印象に残っている。初めて行ったNICOのワンマンライブだった。40分間で27曲をマッシュアップしたりメドレーにしたりしたミステリーゾーンはあまりにスリリングで未経験なものだったし、その中盤で披露されたインディーズ時代の楽曲、「プレイヤ」は非常にアーティスティックで幻想的な経験だった。

またこの1年半の時期を作品で表すとちょうどSTAR SERIESにあたる。これはOYSTER-EP-、TWISTER-EP-、そして今年6月に発売されたQUIZMASTERの3作品のことを指す。アルバム名の語尾を揃えたこの3作品が私は特に大好きだ。2枚のEPは本人たちによって課外活動と称されている。普段スタジオで合わせているような、けれども音源化することはなかったような楽曲を収録したと語られたものだ。確かにそのことはOYSTER-EP-の1曲目から十分に感じられる。OYSTER-EP-の1曲目であり、私がNICOを初めて生で観たJAPAN JAM 2018の1曲目でもあった「mujina」は挑発的なギターリフと歌詞が印象的で非常に中毒性のある曲になっている一方、「bud end」では生々しい感情を私が生まれる前の香りを感じさせるメロウなシティポップに落とし込んでいる曲になっている。まさに題名通り、うまみが凝縮された一枚になっているといえる。
TWISTER-EP-はひねくれ者というその題名通り、荒々しいサウンドに度肝を抜かれる「VIBRIO VULNIFICUS」、「N極とN極」の続編をあっけらかんとしたとしたメロディに乗せた「来世で逢いましょう」など一筋縄ではいかない作品となっている。
QUIZMASTERは収録曲すべての曲名に?がつけられ、日々の疑問をテーマにしたアルバムになっている。「18?」で歌われる「どうして夢を見るの?」という大きな疑問から、「サラダノンオイリーガール?」のように「どうして女の子はダイエットをするの?」という身近な疑問まで扱っている。「バンドのボーカル担当」の枠に収まらない光村さんのボーカルを軸に置いた多種多様な10曲が展開される1枚だ。
さらに驚いたことにこのSTAR SERIESの20曲全てにアコースティック版がある。しかも、楽器をただ単にアコースティックに変えました、ではなく別の曲なんじゃないかというレベルでアレンジがされている。なんてお得なんだろう。3作品でこんなにもバラエティにとんだ曲が聴けるバンドがあるだろうか。
だから私は活動終了を聞いて「私の原点」「俺の青春」「学生時代好きだった」なんて言っているそこのあなたにこの3作品を聴いてほしい。とにかく聴いてほしい。こんな文章じゃなにも伝わらないから。

デジタル配信やサブスクリプションサービスが普及してきた今、過去に発表された曲でもボタン一つで聴けるようになった。これは凄いことだ。NICOの場合、インディーズ時代の曲は配信されていないので少し物足りないが、それでもメジャーデビュー当時から最新アルバムまですべての曲を聴くことができる。まだ生まれていない人が遠い将来NICOの音楽を聴く可能性はCDの時代より高いのかもしれない。いやもうその時はもっと音楽の聴き方も変わっているのかもしれないが。でも、それでもNICOの音楽は後世に残っていく。まだ生まれていないような人がNICOの音楽を聴くこともあるんだと考えれば凄いことだし、本人たちも宝物と称した15年間の作品たちは今後も生き続けるんだと思うと、それもワクワクする。

私はこれからどうするのだろうか。まだ20歳だから色んな音楽に出会っていくと思うが、それでも私はNICOの音楽を聴き続けるに違いない。それほどまでの音楽だ。これからも人生を彩ってくれるだろう。
それじゃあNICOのファンだったこの1年半はどうなるだろうか。もっと早く出会っていれば、逆にこんなに早く活動終了するなら出会わなければなんてよく考えてしまう。しかし、私はそのタイミングで出会うべくして出会ったんだろうし、ライブ行ってTシャツ買ってCD買って音源聴いてライブ行った日々は間違いなく幸せだった。この気持ちに嘘をつくわけにはいかない。大切な思い出にして、まだ生まれていない人がNICOを聞いた時に自慢してやろうと思う。

それにしても、活動終了の発表はあまりに唐突だった。昨今の重大発表ブームに対する反抗心だろうか。そうだとしたら相当ひねくれているし、ひねくれ方も相当ひねくれている。
発表後のファンの声もなかなかに多様だった。私が思ったのは感情が昂りすぎると喜怒哀楽は全部紙一重で、制御も何も聞かないということだ。私自身いかに今まで芸能人の大事なお知らせを、そしてその周りの声を他人事で聞いていたか思い知った。1年半ごときの私でこれだから、15年応援したファンは想像のつかないほどショックを受けているのかもしれない。

本人たちはこれをどう見ているのだろうか。この活動終了をただの一本線の区切りだとしか思っていないのだろうか。これからどうするのだろうか。コメントから考えるに一人一人音楽活動を続けるのだろうか。全部分からない。
ただボーカルの光村さんの歌声がNICOの中でもたまらなく好きな私としては、彼には今後も人前で歌っていて欲しいし、他のメンバーもぜひそれぞれの楽器で音楽活動を続けていて欲しい。それぞれの今後の活動を期待し、応援していきたいと思う。
そんな完全なるファンとしてのエゴでこの文章は締めくくらせて頂きたい。

生まれてきた僕らは 人の群れに転げ落ちて
出会い別れの中で 失うことに慣れてしまうけど
譲れない何かが きっとあるなあ
「demon (is there?)」

ひたすら前向くしかなかったあなたの足跡は
幾たびも迷ってつまづきながら続いてく
「プレイヤ」

最後に藍が咲くまで 朽ちるなTwister
「VIBRIO VULNIFICUS」

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