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『宿命』

Official髭男dismが届けてくれた音楽の楽しさ

吹奏楽部に入って6年。
音楽は好きじゃなかった。
 

中学高校6年間の大半を吹奏楽部に捧げてきた。
でもそれは「音楽が好き」なんていう気持ちではなく、義務感に近かったと思う。怒られたくないから練習する。できるようにならないといけないから、人よりできないのが悔しいから、それだけだった。
その上部活動で就いた役職でやらなきゃいけないことに追われ続けていた。部活動が連れてきた義務感がいつしか音楽が連れてきたと思うようになっていた。
私にとって音楽はいつでも捨てられるものだと本気で思っていた。
 

こんな私の音楽観が変わったのは高校3年の夏だ。
3年生は希望者のみ出場となる夏の吹奏楽コンクールに残ると決めたことが全ての始まりだった。
部活動では今までと変わらずやらなきゃいけないことをこなす日々。やっぱり引退すればよかったかなと思うことも少なくなかった。
そんなある日部活の同期がこんな話を持ちかけてきた。

「Official髭男dismっていうバンドが『宿命』を一緒にレコーディングする高校生を募集しているんだけど、よかったら応募しない??」

私はふたつ返事でOKした。Official髭男dismというバンドのことはこのとき初めて知った。
応募締切が迫っていたため、ずっと練習していたコンクール曲のワンフレーズを録って送った。
私は審査を通過した。嬉しかった。
 

そしてレコーディング初日。
初めて行く場所、初めて会う人、初めてのレコーディング。緊張や不安というよりも、どこかふわふわした気持ちでいた。
練習が始まり周りのレベルの高さに感動するとともに、自分の実力に不安を覚えた。しかし練習を重ねるうちに音が合うようになっていくのが目に見えてわかった。
音楽を創っているという実感を噛み締めながら初日を終えた。

レコーディング2日目。メンバーと一緒にレコーディングとMV撮影をした。
メンバー全員が「とにかく楽しんで」ということを繰り返し口にしていたが、意識せずとも心の底から楽しんでレコーディングを終えることができた。
刻まれるリズム、重なる和音、クレッシェンドに合わせて高まる音の高揚感、最後の余韻。昨日まで全く互いを知らなかった53人、イヤホンからしか聞いたことのなかったメンバー4人の合計57人の音が1つになっていく瞬間は何ものにも代えがたいものだった。そこには奏でた音が繋いだ絆があった。
ああ、音楽ってこういうことだ。音楽っていいなあ。とこんなにも思った日は今までになかった。
 

昔どこかの誰かが「音痴な自分にとって音楽っていうのは”音が苦”って書くんだ」と言っていたことを思い出した。当時はそれを聞いてケタケタ笑っていたが、この6年間自分にとっての音楽は”音が苦”になっていた。
しかしこのたった2日間が私の6年間を変えてくれた。「音楽は苦しいものじゃなくて音を楽しむものだ」ということを思い出させてくれた。
今まで音楽を奏でる側として、音楽を好きになれないことも苦しかった。でももし音楽が好きじゃない自分がいなければここまで音楽の楽しさを痛感することはできなかったと思う。
 

6年前吹奏楽部に入部したこと。高校に入って担当楽器を変えたこと。もっと早く引退できたはずなのに夏のコンクールに出場すると決めたこと。音楽が好きじゃないと思いながら、なぜか音楽を捨てられなかったこと。レコーディングに参加できたこと。そしてこの夏Official髭男dismに出会えたこと。
これは私の『宿命』なのだろう。
 

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