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楽曲に垣間見られる「毅然とした孤独」について

土岐麻子「Ice Cream Talk feat.G.RINA」

シティポップ3部作の完結編と言われているアルバム『PASSION BLUE』からの一曲。前々作品の『PINK』の「脂肪」を作曲したG.RINAとの共同詞。作曲はトオミヨウ。

この楽曲とほぼ同時期に、星野源の「さらしもの」(feat.PUNPEE)に出会い、それぞれ大好きになって交互に聴くようになった。土岐麻子、星野源というアーティストのフィルターを通して、POPSに咀嚼され昇華されたオリジナリティがきっと好きなのだろうと思う。なので「Ice Cream Talk feat.G.RINA」の感想を語るにあたり、今回もヒップポップの用語はよく分からないまま書いていくが、伝えたいことはいつも、「素敵な曲なんです!」という感動なのである。
 

『PINK』の「脂肪」と関連があるとしたら、そのときにぼやかれた孤独は、引き続き、いわゆるガールズトークの場に発展する。もちろん姦しいトークではなく、冗談を言いながらもサシで話すシリアスさをも秘めている。仕事帰りにタクシーで駆けつけて、きっと食事も済み、場所を変えたあと、あっという間に時間は過ぎてゆく…

  真夜中3時
  西麻布の
  ホブソンズ2階窓際
  子供の頃の
  特別だった
  いまは気軽に来られるでしょ

サビも含め、ソフトなレゲエ調のゆっくりとしたテンポが、土岐麻子の声とマッチしていて心地よい。

  oh girls
  孤独という名の靴は
  履きなれたら
  どこまでも行ける自由の靴

孤独と自由は背中合わせで、背中で孤独を感じながらも、パンプスを履いた者同士、話に夢中になりながら、溶けかけたアイスをスプーンですくうような光景。

G.RINAのrapと歌が入り、友人には決して口にはしない、かっこ悪い現状が独白的に語られる。

  …むなしさと 胸焼けと 不眠
  淋しさと 恋しさは ツイン
  そういう夜は今夜が最後
  tight rope みたいな恋はしたくないもう

性別や年齢に関わらず、自立している人間ほど、友人同士ベタベタと傷の舐め合いはしないのではないか。あくまで自分で考え整理して、報告というかたちで友人には話す。この楽曲の女子ふたりは、何かの節目で会うくらいの距離感だけど、きっと戦友のような親友。そんな雰囲気が見えてくる。

そして、Cメロで、お開きの後、帰りのタクシーの中で考えているかのように…

  「あれは愛じゃなかった」
  でもあなたが彼を愛したことは
  どんなことより
  ただひとつだけの素晴らしい事実

「あれは愛じゃなかった」相手の強がりだと分かっていても、そこは気づかないフリをするのがルールだ。友人同士、互いの領域を守りながら話を聴く。他言無用。それが親友、だと思う…
サビの歌い方もとても切ない。悔しいっって思う強さと弱さ。

  ice cream talk
  悔しい気持ちも
  ice cream talk
  家に着く頃は
  ice cream talk
  笑ってしまえるから

「笑ってしまえるから、ah…」と自然に続く余韻が切ない。サビにはため息(oh …oh…など)言葉にならない泣きの気分や呼吸が音楽になっている。

アイスクリームは子どもの頃は特別なおやつとして、大人になったらスイーツとしてたまに食べるという感覚かもしれない。人によるかもしれないけれど、ミルクやバニラ味から始まり、次第にミントチョコや「ラムレーズン」味を知る。年齢や経験と共に、状況や空間によって関わり方が変わっていく。目の前の食べ物や飲み物が目的ではなくなってゆくところにも、成長があるのかもしれない。それにしても「とっくに溶けていた」アイスってどうしてあんなに甘ったるくなるのだろう。
この楽曲では、そうした「毅然とした孤独」が美化されるわけでもなく、今っぽさ(エレクトロ)と懐かしさ(Jazzyなピアノの音)のなかで、短編小説のように描かれているかのようだ。
あからさまな本心を見せられない弱さがあるからこそ、音楽が本当の意味で自分を癒してくれる存在となることを改めて感じた一曲。この楽曲のなかのふたりは、それぞれイアホンでどんな音楽を聴いているのだろう。

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