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愛は勝手

aikoが教えてくれる愛のかたち

『何も受け入れない方が
悲しくないし良いと思っていた
だから信じられなくても
どうせいつもの事だと吐き捨てた
無理してささくれ探し
ついつい前歯で噛んでしまってた』

このフレーズが今の私みたいで、何度も何度も繰り返し聞いた。aikoのアルバム「湿った夏の始まり」に収録されている「愛は勝手」。

人を好きになることがこんなに怖いなんて。違う、自分を好きになることが、自分を大切にすることが怖いのかもしれない。

身近な人に何度も嘘をつかれた。その度に泣いて悲しんでも、どんなに大きな声を出して怒っても、そんな声は届かなくて何度も何度も繰り返される嘘。その度に身体の底から湧き上がる怒りや悔しさは何度経験しても慣れない。「腸が煮えくり返る」なんて言葉を考えた日本人はすごいと思うほど、その表現がしっくりくる。その怒りはいつまでも消えないけど、私の心も少しは学んだのか、いつしか諦めるってことができるようになっていった。あぁ、やっぱり嘘なんだ、仕方ないって諦めて、そもそも最初から信用も期待もしない。
『何も受け入れない方が 悲しくないし良いと思っていた』
もうあんな思いはしたくない、自分を守るために諦めて、何もなかったことにしたい。そんな考え方が癖になって、気がついたら自分のことすら好きになれなくなっていた。
私なんてうそをつかれても仕方ない存在なんだ。
卑屈になってとか悲劇のヒロインとかそんな大げさなことじゃない。ただなんとなく、ぼんやりと、そんな考えが染み付いていた。

誰かを好きになるって、この人が好きだって認めることは、もちろん相手のことを信用するってことでもあると同時に、自分の中の好きだって感情を信じてあげること。
どう思ったら好きか、数式みたいにいくつもの感情を当てはめて答えが出るならいいのに。インターネットの中を何度も何度も探して、この気持ちは好きかどうか答えを探したこともあった。当てはまる気持ちもあったけど、やっぱり最後には好きだって認められなかった。自分の気持ちをやっぱり信じてあげられなかった。
信じてあげられなかった気持ちを心の底に押し込める作業だけは上手になった。
『無理してささくれ探し ついつい前歯で噛んでしまってた』
自分を守るために昔の痛みをいつでも身につけていた。痛みがあれば、最初から信じないし期待もしない。そうすれば傷つかない。

この曲をaikoは、不良少女が恋愛をして更生する物語だと言った。誰も信じられなかった〈あたし〉が〈あなた〉に出会って、好きな気持ちを見つけてその気持ちをどんな言葉を使って伝えようか悩んでいく。

『だけどあなたに出逢えました
心が気を失ったよ』

心が気を失うような出会いってどんなものなんだろう。今の私には想像もつかない。

誰かに愛されたい、信じてもらいたい、必要とされたいと思うと同時に、誰かからもらうだけじゃなくて自分自身も心から人を信じて好きになりたいと思う。そう思うのは自分自身が何者かになりたいから。

『短い爪に繰り返し 綺麗でいてねと赤を塗り続けた』
『毎日あたしの体があなたで形成されていきます』

なんでもなかった〈あたし〉が〈あなた〉に出会って、〈あなた〉への気持ちを伝える言葉を探して、綺麗でいてねと自分の爪を赤く塗る。あなたにこの気持ちを伝えるにはどうしたらいいか悩む。あなたへのひとつひとつの気持ちや行動が自分の身体を作っていく。飛び抜けて可愛いわけでも美人でもない、仕事も勉強もどんなに頑張っても世界一になんてそうそうなれない、他の人より特別なんてこともない。それでも、なんでもない私が誰かを好きになれたら特別になれるかもしれない。あなたを想う気持ちは誰よりも特別だし、あなたのために綺麗になりたい気持ちも1番、あなたのことをとても大切に思う特別な私になれるような気がするんだ。あなたのために言葉を探して、あなたのことを考えることで私自身がつくられていく。
心が気を失うほどの出会いをした〈あたし〉はこう続ける。
『羽根いっぱいのプールで泳いでるような
めちゃくちゃな嬉しい日々』
『あたたかく包まれる感じに慣れないよりも
失う方が怖くなったじゃないか』

誰かに出会って恋をする、昔の私はもっとシンプルに考えていた。いつからだろう。この人は好きになっていいの?信じていいの?私の気持ちは勘違いじゃないのかな?そんなふうに自分を疑って信じられなくなったのは。
心が気を失うほどの出会いなら、きっとこんなこと考えないんだろうな。
自分を好きになるには、自分の気持ちを、あの時の選択を肯定してあげるにはどうしたらいいんだろうな。
悩んで悩んで、きっと死ぬまで答えなんて出ないだろうけど
それでもaikoが人を好きになることはこんなに楽しいよって歌い続けてくれてるなら少しだけ未来を信じてみようかな。私が19年間、ずっと好きで一緒に歳を重ねてきたaikoが言うんだ。間違いない。
今まで信じられなかったことが嘘みたいにひっくり返ることだってある。人を好きになるってそれだけ力があって、自分の気持ちが想像もできないところへ連れていかれる。だから「愛は勝手」なのかな。

『』内はすべて「愛は勝手」より引用
 
 

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