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2017年7月11日

hhem (21歳)

初恋の嵐

真夏の夜に思うこと

「初恋の嵐」というバンドをご存知だろうか。

スピッツのアルバム『おるたな』に収録されているカバー『初恋に捧ぐ』でその名を知っている方もいるだろう。
1997年に結成され1999年に一度解散。翌2000年夏に再結成しその後はライブ活動やCDリリースなど、コンスタントに活動を続けていた。
しかし2002年の3月、ボーカルギターやソングライティングを務めていた西山達郎が25歳で急逝してしまう。
(彼が亡くなった後数枚のCDをリリースし活動休止、2011年に再び初恋の嵐として活動再開した。)

私がこのバンドのことを知ったのはそれから10年後、2012年のことだった。
大好きなバンド、フジファブリックのボーカルギター・山内総一郎がとある野外フェスのゲストとして初恋の嵐に参加することになったからだ。のちに彼は『セカンド』(2016・残されたデモテープから再レコーディングを行ったアルバム)でも1曲歌っている。
彼はもともとギタリストであったが、2009年に当時のボーカルギター・志村正彦が急逝してからフジファブリックの新たなボーカルとして活躍している。

初恋の嵐はゲストボーカルを入れる道を選び、フジファブリックは既存メンバーが新たに固定ボーカルを取る道を選んだ。2つのバンドが出した答えは異なるが、『セカンド』の製作過程が『MUSIC』(2010・フジファブリックのアルバム)を思い出すものであったりして、2バンドの間に繋がりを感じていた。そんなこともあり、より初恋の嵐というバンドに対して聞いてみたい、もっと知りたいという気持ちが湧いた。

それから初恋の嵐について調べている時に『真夏の夜の事』という曲に出会い、その展開の美しさにぐっと引き込まれてしまった。一瞬で虜になった。
後で分かったことだが、フジファブリック・志村正彦はこの曲について2004年に「これは僕の事を歌ってくれています。尾崎クラスです。」と発言していた。なんとなく運命のようなものを感じた。
 

また数年が経ち、活動再開後数多くのライブを行ったり、13年ぶりにアルバムをリリースした彼らだが、2017年1月に今夏をもって再び活動休止することが発表された。『セカンド』がリリースされてからちょうど1年が経った頃だ。
 

2017年7月7日、新宿ロフトにて「初恋の嵐のラストワルツ」と題し活動休止ライブが行われた。

ベース・隅倉弘至が歌う『どこでもドア』で幕を開け、曽我部恵一、堂島孝平をはじめとする約20名のゲストボーカルが西山達郎の残した数多くの曲にふたたび生命を与える。
 

ベース・隅倉弘至は「今日で一旦終わり」「区切りをつけないと」など何度もライブ中に発言していて、そのたび悲しくなった。
この日が私にとって初めてのライブだったこともあり、一旦終わりだと分かっていてもまだまだ見続けたい気持ちでいっぱいだった。

2015-16年にかけ『セカンド』が完成・発売し、バンドも精力的に活動するなかでそれに対する楽しさを感じる反面、何処かで区切りを付けないといけないと感じていたのだろう。
ドラムス・鈴木正敏は少しへらへらしながら(悪い意味ではない。)それでもやっぱりふとした瞬間に寂しさを見せるような表情でステージの上にいた。

次々変わっていくゲストボーカルたちを迎えたり送ったりするなか、あっという間にライブ開始から3時間ほどが経ち、隅倉がボーカルを担当する『それぞれの結論』でラストワルツ本編は幕を閉じた。

鈴木「これだけ人が集まってくれたのは隅くんのおかげ!」
彼が発したその言葉を遮るように、
隅倉「違う、西山の曲がいいから、みんな集まってくれたんだよ。」「あとまー君(鈴木正敏)の人柄!」

なんて素敵なバンドなんだろう。
初恋の嵐のライブを見て、隅倉弘至の言う通り、あらためて西山達郎が持つ才能を感じた。そして彼の残した曲に再び生命を与えたバンドメンバー、今まで彼らに関わった数多くのアーティストたちには初恋の嵐に対する愛情が溢れていた。

アンコール1曲め。岩崎慧や松本素生がラップを挟み、ギター百々和宏・中田裕二、ベース曽我部恵一、ドラム斉藤和義でA・RA・SHIを歌ったり、ビール片手に出演者総出でもはや宴会状態だった。出演者に持っていかれてるなぁと思いつつもそれはそれで楽しかった。

このまま時が止まればいいのにと思っていても、それは叶わない。
最後は隅倉弘至、鈴木正敏、玉川裕高、高野勲、木暮晋也、朝倉真司の6名で『カモンアゲイン』が演奏された。短い曲ではあるが、その数分間の中に初恋の嵐のすべてが詰まっていて、激しい曲ではないのに密度が濃く息が出来なくなりそうだった。
その曲を歌っているのは西山達郎ではないし、サポートメンバーを入れての演奏ではあるが「初恋の嵐」として「初恋の嵐」の曲を演奏する姿はゲストボーカルを入れて演奏するのとは違い空気ががらりと変わる。

ゲストボーカルを入れての演奏はゲストなりの初恋の嵐に対する解釈があってまた良いのだが、オリジナルメンバーが持つ力はそれを超越している。
この音楽を、音楽やバンドが纏う空気を無くしてほしくないと強く感じた。

演奏を終えた彼らは、やりきった!と言うよりもまたすぐに次のライブがあるかのように、とても自然にステージを降りていった。

19時過ぎに開演し、終了したのが23時頃。4時間に渡って行われた活動休止前最後のワンマンライブ。
ラストナンバーに選ばれたあの曲で再開が約束された気がして、寂しさがすこし紛れた。

数えきれないほどのバンドが存在する世の中で、その終わり方もまたそれぞれである。
ラストワルツ、これが初恋の嵐が出した現時点でのひとつの結論だ。名前の通り彼らは嵐のように、これはもちろん良い意味で、色んな爪痕を残して過ぎ去っていった。しばらくその演奏を見ることは出来なくなるが、CDを再生すればいつでも彼らの音楽に出会える。いつだって息を吹き返すのだ。
 

≪これは想像のストーリー などでは無い≫
– 真夏の夜の事

またいつか、初恋の嵐のライブを見ることができる日を七夕、真夏の夜に願って。

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