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どうしてこんなにも優しいのだろう

また響くエレファントカシマシと成りたかった宮本浩次

2人目の子供が3才になった頃から、すっかり忘れていた自分の好きだったもの達を突然懐かしく、恋しく思うようになってきた。
これを世間一般的には子育てに余裕が出てきたというのだろう。

何をするのが好きだったのか思い出せない時期もあり、『母親の自由な時間』に何をしたらよいかわからず、有意義の意味に混乱した。

音楽はいつも鳴っていたが、聴いてはいなかったと思う。

でも急にしっかりと言葉が聴きたくなり、イヤフォンをつけて聴いた。
エレファントカシマシをきいた。ベスト盤を買ったままだった。
もう何度と聴いた『風に吹かれて』を聴いていると、

─本当はこれで そう 本当はこのままで 何もかも素晴らしいのに─

この節が耳に入ってきたとき、その言葉にとても動揺し涙が流れた。
自分でも気持ちが悪いくらい泣いた。

今の私には─このままの素晴らしさ─を見る能力と心があるのか、とても不安になったのだ。
毎日を生きれるのは尊い。でもそれをどう生きているのかわからない、どこかスイッチが抜けているような。
負の力にはやたら敏感に反応するのに。

この節を何度も何度も歌ってみた。反芻すればするほど本当に美しく、強すぎる憧れや失望からも、もとの自分をスタートポジションへ戻してくれる。

私はエレファントカシマシが大好きだ。私の青春時代を反映するエレファントカシマシも好きだ。
彼らの歌は、怒り、挑発し、孤独にし、希望をくれる。
生きていることに意識を戻せという。生きることへの激励というか、むしろ警鐘ではないか。
そして否応がなしに、自分に向き合わさせられる。自分自身を認識しろという。自分を客観的にみると、その姿は理想的ではないことの方が多いから、時に辛い。
自分から逃げるなよ、逃げられねぇぞという。それは怖い。
でもなによりも彼らの歌は、本来の人間がそうあるべくして、とても心深く、とてもとても優しい。 ものすごい優しさでそのままを受け入れてくれるのだ。だから自分に少し優しくなれる。
40代になりポカリと空いた隙間に、そんな歌たちが帰ってきてくれた。
そして今だからこと、宮本浩次が繰り返す、生きる、という壮大で不明瞭なテーマについて真剣に考えるようになった。いま生きているのが当たり前だから考えるのが難しい、生きるということ。少し前に宮本浩次がテレビで『Do you remember?』を歌っているのを観た。彼は弾ける生命のボールのようだった。あんなリアルなものは久しぶりに観た。彼は彼の言葉どおり、自分の全てを駆使しものすごく生きているじゃないか。その姿を見て私も無駄にしたくないと思った。

宮本浩次は私が成りたかった象徴。
与えられた命に謙虚に真摯に、率直に自分として生きる。繊細で傷つき、怒り、そこからまた前進する。そして信じる。
今の私は、こんな風に生きられていない。信じる力もとても薄い。
でも、いい。
生きているし、いま生きていることを感じられるから。生きる、生きる、必死に生きる。
恥ずかしくもなく言えるのは、嘘のない歌が心に響くから。
自分の恰好悪さも、これからの理想も、そのすさまじい優しさで包み込まれているから。

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