生き様をさらす
椎名林檎 と ひどく個人的な事
2019年11月27日
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高校生の時、彼女を初めて観た。
それは、バラエティにそぐわないエンディングテーマ。
切なげな表情とミントグリーン。
黒のスーツ、薔薇と唇の赤。
そして 「ここでキスして。」
全てのアルバム、全てのシングル、カップリング。
夢見がちで、控え目でどうしようもなく愚かなあの頃。
女性目線なはずなのに、男性の自分の事の様で仕方なかった。
上京、進学、就学。
孤独を愛した僕は、彼女がバンドをはじめた頃から、少し自然な距離で聴くことができた。
教えてもらったRadioheadが代りに占拠した。
1日1日を生きるか死ぬかで、上へ、はるか上へと進んでいく彼女。
惰性で人生をごろごろと転がっていく自分。
気がつけば、来年、東京でオリンピックがある。マラソンと競歩は札幌でやるらしい。
夢もなく、疲れきって布団の上。
2歳の娘はとなりで寝息を立てる。見た目には分からない程、綺麗な寝顔をしている。
今年の7月に診断を受けた。
自閉症スペクトラム。
障害がある。言葉はおろか、名前に対する返事もままならない。
散歩に連れ出す。少し冷たい空気が頬に触れると笑ってくれる。
朱色の紅葉に手を伸ばして、口元に持ってくる彼女は本当に美しかった。
なんで彼女が、、、。
布団に入って、手に取ったスマホ、なんの気なしにみたTwitter。
トレンドに見つけたのは
「ここでキスして。」
ひどく驚きながらも見つけ出した乱れた映像を食い入る様に観る。
今の姿の彼女があの時の歌を歌いながらも、
今を唄っている。
思わず、寝ている娘の手を握る。目の前の画面が滲んでいる。
ああ、生き様 を さらす ってこういうことか。
僕は生き様をさらして生きてきたのだろうか、そしてこの先、さらして生きていけるのだろうか。
彼女達の様に。
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