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17歳の自分に

過去と未来を彷徨う米津玄師の歌

中間テストの最中に
東横線に乗って渋谷まで出た。
行き先は教会の地下のライブハウス。
始まる前、会場入り口脇の机で教科書を広げて、「勉強してる・・・」と囁かれた。
音楽を聞くときはいつもラジオ。
全米トップ40から流れてきたその週のベストワンは
確か ストーンズのアンジーだった。

どこへ行くのも一人だった。
渋谷西武のbe-inも
元町のユニオンも
いつも一人で出かけていった。
大学に入ったらまったく違う人間になりたかった。
その時の自分が嫌いだったわけではないけど
いつも何かが違うと思っていた。
17歳。
あの頃の自分が出会っていたら
間違いなく
彼の軌跡をたどるために
徳島に行ったはず。

彼の通った高校の正門の前に立ち
おじいちゃんの家があったかもしれない
山の頂を眺め
美術館の天井のフレスコ画を見上げて
涙を流したかも知れない。

霧のようにかすむ未来と
居心地の悪い場所に悶々とする日々に
その歌詞の一字一句が突き刺さって
神を見るような気持ちで
彼のことだけを思って。

どんな子どもだったんだろう。
誰を好きになったんだろう。
何冊本を読んだんだろう。
心地よい不協和音と
聞いたこともない言葉を散りばめた
唯一無二の名曲を
何曲作ったら気が済むのだろう。と。
 

だから今でよかったと
悔し紛れに思ってみる。

その存在を知ったのは
たかだか一年ちょっと前で
アルバムを手にしたのも
ツアーのチケットに当選したからという
申し訳ないような理由。

でも今は分かる。
彼が地の底に潜って
絞り出すように書いた曲も
二日酔いの朝にさらりと書いた
お気に入りの歌詞も
21世紀に生まれた17歳の誰かの
どうしようもない現実を
自分だけじゃないんだ、と
きっと救っているはずだから。
 

  今を確かに欲しがっていた その末に手にとったのは
  僕が欲しかった今じゃない 過去の色した別のもの

  あの子はまた同じように 誰の手でもすり抜けて
  いつもただ一人でいたんだ 諦めるように歌って
          (KARMA CITY)
 

あのときの17歳の少女は
ちょっとだけ背伸びしながら
いつのまにか大人になり
結婚をして
子供も生まれ
今は孫もいるおばあちゃん。

28歳の彼が作った歌が
その倍以上の年齢の人たちにも愛されているのは
倍以上生きてきた人にも
彼と同じように生きた
28年間があったから。
そのときのことを皆
心の隅に抱えながら生きているから。
 

ライブは
娘と婿の三人で行きます。

楽しみだな。
 

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