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魔法の料理〜僕から君へ〜

BUMP OF CHICKEN 『魔法の料理〜君から君へ』

夏の終わる匂いがほのかに香った時、
これからの人生を決める大きな岐路に立った。
それは10代では最後の挑戦ともいえる“大学受験”についてだ。
岐路というだけあって、2つの道がある。
その2つは”一般受験”か”推薦受験”かという道だ。

ある日、僕はいつも通り学校に通った。
そして、いつも通り一般受験に向けた勉強をしていた。
その日前後には模試があったのだが、なかなか成績に伸び悩んでいた。
そんな時、担任の先生から声をかけられた。
成績について怒られるかと思ったが、話は少し違う視点からで、推薦受験についてだった。
もちろん、第一志望校の推薦受験だ。
思ってもいない話に、動揺を隠せなかった。
しかし、すぐに喜ぶことは出来なかった。
(今まで共に頑張ってきた友達はどう思う?)
(そもそも合格できる保証もない挑戦だ。)
というのに対し
(成績の厳しさをカバーしてくれる。)
(自分の良さをアピールするのは得意かもしれない。)
胸の奥で葛藤していた。
これこそが、まさに僕の人生を決める大きな岐路なのだ。

決断も早いうちにしなければならない。
理由はシンプルであった。
ご存知の通り、推薦受験は一般受験よりも早くに行われる。そのため、できるだけ準備に時間をかけなければならないのだ。
特に、僕のような時期なら尚更だ。
とにかく、まずは決断を家に持ち帰った。

家族に話してみると当たり前ともいえる返答だ。
(自分の人生は自分で決めなさい。)
友達には話すことは出来なかった。
みんなも暇ではない。忙しい時期に、人の相談など煩わしい他ない。
ましてや、同級生なら尚更だ。
そうなると、行き着く先は自分自身。
けど、1人じゃなかった。
寄り添っていてくれたのだ。

BUMP OF CHICKENの曲の数々が。

『迷いながら 間違いながら
 歩いていく その姿が正しいんだ
 君が立つ 地面は ホラ
 360度 全て 道なんだ』

 Stage of the ground

『何回転んだっていいさ
 何回迷ったっていいさ
 大事なモンは 幾つも無いさ
 後にも先にも』

  ダイヤモンド

そして、僕は決めた。
推薦受験という道を。
この際、どちらの方がリスクが高いとか、そういうことではなかった。
自分として、やってみる価値があると、そう思ったのだ。
ダメならダメで、そしたらまた再び歩き出せばいい。
ダイヤモンドのように。

翌日、担任の先生にその旨を伝えた。
(共に頑張ろう)
先生からも一声かけてもらった。
やるしかない。
こうして、前代未聞の2ヶ月がスタートした。
小論文や面接、どれも初めてのことばかり。
一般受験の勉強がなかなか生かせず、苦労を重ねた。
時には先生方から怒られ、その度に、自分の選択の正しさを問い正した。
しかし、一度決めた信念は諦めたくなかった。

『諦めなかったことを
 誰よりも知っているのは
 羽ばたいた言葉のひとつひとつ
 必ず届きますように』

 Aurora

そして、このような受験になったことを、ついに友達にも話した。
秋が深まるにつれて、受験の話も度々されるようになり、嘘をつき続けることに限界を感じたからだ。
カミングアウトした時、友達はやはり最初は驚く顔をした。
そりゃそうだ。
少しもそのような雰囲気ひとつ出していなかったのだから。
自分自身を愚かと感じながらも、友達は
(全然いいと思うよ。)
(もう少しじゃん、がんばれよ!)
など思ってもいない言葉に、安らぎと改めて頑張らなくてはならないという意志が強くなった。
そうして、最後の最後まで努力し続けた、、、。

受験日を迎えた。
今までにない緊張感だった。
前日は眠れないことを想定して、早くに布団に入り、眠りについたが、その分早く起きてしまい、そこからは全然眠ることができなかった。
受験当日を迎えた緊張だ。
予定よりも早く家を出ることにした。
家族に背中を押され、勇気ある一歩を踏み出した。

『数えた足跡など
 気付けば数字でしか無い
 知らなきゃいけない事は
 どうやら1と0の間』

 カルマ

1人になって、あれこれ考えてはよくないと、イヤホンを耳につける。
いつものルーティンで聴いたのは、もちろん
BUMP OF CHICKENの曲の数々。

『心臓が動いている事の
 吸って吐いてが続く事の
 心がずっと熱い事の
 確かな理由を』

 アンサー

『いつだってそうやって頑張って考えて
 探してきたじゃないか
 いっぱい間違えて迷って
 でも全て選んでいくしかなかったグライダー
 雨雲の中』

 beautiful glider

もし、今これを読んでいるあなたなら、この選択をどう思うだろうか?
私は、ふと誤ったと思った。
理由は皮肉なことに、感情移入してしまうからだ。
そう、僕は泣いた。
不安は募る一方だった。
しかし、考えてみれば、高校受験の時も
BUMP OF CHICKENにこれまでかというほど泣かされていた記憶がある。
けれど、その時も今回も、心のどこかで勇気をもらいたかったのかもしれない。
そうも思えてくると、だんだん涙も逆流していき、自信へと変わりつつあった。

会場に着いた時、そこにはまだ誰もいなかった。
時計は集合時刻1時間前を指していた。
周りを見渡し、目を閉じて、本番の空気に身を寄せる。
時計の針が進むにつれて、人の数も増えていき、高まる緊張と高揚感。
けれど、先程の緊張とは少し違っていた。
不安ではなく、ワクワクのほうだった。
そして、その時確信した。
あの時、BUMP OF CHICKENの曲を聴いたことは、決して誤りなんかではなかったと。
あの時、涙を流さなれば、今頃不安に押し潰されて、泣いていたかもわからない。
流れてもいないのに、耳にはBUMP OF CHICKENの曲が音符となって、僕のそばをゆく。

『涙は君に羽根をもらって
 キラキラ喜んで
 飛んだ踊った
 あまりにも綺麗だから
 愛されなかった 量産型』

  Butterfly

それからの私は強く、試験も120%の力を出し切った。
あとは合格発表を待つだけとなった。

後日、合格発表の連絡が届く。
受験が終わり、少しばかりホッとしていた緊張が再びやってきた。
それでも、やりきったことの全ては僕を後押しした。
さあ、今こそ涙を炎に変える時だ!

開けるとそこには、

“合格”

の2文字が。
とても嬉しかった。
今まで頑張ってきたことが報われた瞬間だった。
振り返ってみれば、波乱の2ヶ月だった。
いつ諦めてもおかしくない状況で、見事勝ち取った合格だ。
それも決して1人じゃない。
いつも1番近くで見守っていてくれた家族、
私の決断を励ましてくれた友達、
何より、推薦受験の話をしてくださった担任の先生、
多くの方々の支えがあってのことだ。
忘れてはいけない。
今度はそういった方々に、僕自身が全身全霊かけてでも、恩返しをしなければならない。
そして、これからも自分自身が努力していく他、道はない。

翌日、合格できたことを関わった全ての方に伝えた。
(おめでとう!)
(よく頑張った!)
の声はずっと待ち望んでいた言葉だった。
またしても、頑張ってよかったと、強く思った。
しかし、いつまでも、浮き足立っていられない。
地に足をつけ、こっからまたスタートを切るんだ。
そのような姿勢が、恩返しするための第一歩だろう。
僕は推薦受験で
みんなよりゴールが短く、スタートまでが長いだけ。
同じように一般受験で戦う友達は
みんなよりゴールが長く、スタートまでが短いだけ。
努力することは変わらない。
ただ、合格するなら一緒がいいな。
そんな無責任なこと、口じゃ言えないから、こうして文字化するのかな。

『君の願いはちゃんと叶うよ
 大人になった君が言う
 言えないから連れてきた思いは
 育てないままで 唄にする…』

 魔法の料理 ~君から君へ~

僕の2ヶ月近くの魔法のような日々。
今度は僕から君へ、魔法をかけよう。

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