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2017年7月12日

あかり (26歳)

この光の始まりには…?

BUMP OF CHICKEN「ray」から始まる宝石のような日

《大丈夫だ この光の始まりには 君がいる》
「りいふ、おはよう。今日もrayだよ。」

今日もスピーカーから流れてくる1曲目はBUMP OF CHICKENのrayだ。
この曲との出会いは3年前になる。私はもともとBUMP OF CHICKENの天体観測がヒットしたころ、ちょうど中学生だった。ラジオから流れてくるさまざまなBUMPの曲を好きになり、CDを借りて聞いていた。カルマ、supernova、花の名、メロディーフラッグ。その頃聞いていた、どの曲も歌詞が好きでノートに書き起こしたこともあった。しかし、私は小学生の頃からのaikoの大ファン。aikoの曲ならイントロクイズだって答えられるし、歌詞だって全部思い起こせるくらい大好きだ。母はインディーズの頃からのコブクロファン。そんな2人がいるうちでは、BUMPの曲が流れることはめったになかった。

りいふは私の弟として保健所からやってきた犬。柴犬混じりの雑種で、私とは2つ違い。来た時から外犬として育って、柴犬らしくべたべた懐いてはこない。名前を呼んでも、全速力で私たちの横を走り抜けていくような、そしてちょっと離れたところで振り返ってにやっと笑うようなそんな性格。

そんな彼も気がつけば20歳のおじいちゃん犬となっていた。足腰はだんだんと細くなり、歩くことも立つことも出来なくなっていった。外犬だった彼もすっかり居間にケージを構え落ち着いた。身体は思うように動かなくなっても、視線の動きや耳の動き、わずかなしっぽの動きで彼は私たちと会話をしていた。

そんな頃、再びBUMP OF CHICKENの曲を聞く機会があった。大好きな漫画『3月のライオン』とのコラボだ。ファイターのCDはもちろんだが、羽海野チカが雑誌のインタビューでBUMP OF CHICKENのRAYを聴いていると知り、すぐにCDをレンタルした。10年振りに家中に流れるBUMP OF CHICKENの音楽。昔とはまた違ったキラキラしたメロディーに、優しい声にあっという間に惹き込まれた。アルバムにはたくさん素敵な曲が入っていたが、なぜか何度も何度もリピートしてしまうのはrayだった。
居間にいたりいふも当然それを聞いていた。その頃は身体の自由もきかず、うまく寝つけなくなり困ったような顔でこちらを見ることも増えていた。そんな時に流れたray。りいふの耳がスピーカーの方へちらちらと動いた。
「あれ、りいふはこの歌好き?」
目をぱちりと閉じる。身体が動かないりいふにとってのyes反応は目をつぶることだと、観察の結果、そう思っていた。
何度か「この歌好き?」と尋ねるたびに目をぱちりとするりいふ。
寝付かない時に、小さな音でrayをリピートしておくと、気がつけばすやすやと眠っている。

やっぱりりいふは20歳の今どき男子なのか。あんなに小さい頃からaikoやコブクロを聞いて育ったのに。やっぱりBUMP OF CHICKENがかっこいいのか。そんなaikoの大ファンとしては複雑な気持ちになりながらも、りいふの好きなものが見つかったことが嬉しかった。

それからは家の中でrayを聞かない日はなかった。ライブ映像も一緒に見た。キラキラした映像に音楽、なによりそれを共有出来ていることが嬉しかった。りいふに喜んでほしかった。

そんなりいふも21歳7ヵ月。家族みんなが見守る前で息を引き取った。犬にしては大往生。めずらしいくらいの長寿だった。
亡くなった夜は、一晩中rayをかけていた。音を止めるのが何だか怖くて。りいふはまだ聴いているような気がして。

それからしばらくはあの曲は聞けなかった。

数ヶ月経って聴いたあの曲は、前とは違って私に届いた。歌詞の1つ1つがりいふから言われているような気がした。
《寂しくなんてなかったよ ちゃんと寂しくなれたから》
りいふがいなくなるまでは、この歌詞の意味は分からなかった。でも今なら分かる気がする。ちゃんと悲しむこと、寂しいなって思うこと、それは辛い思いを引きずることでは無くて、前に進むことに繋がる。悲しい気持ちや寂しい気持ちはネガティブな感情だけでなくちゃんとその気持ちと向きあうこと、寂しい気持ちを持っていることが、これからの自分を支えることができる。BUMP OF CHICKENの曲には、寂しさや悲しさを力に変えることができる歌詞が多い。

その後発売されたアルバム『Butterflies』に収録されている宝石になった日。その中にもこんな歌詞がある。
《こんなに寂しいから 大丈夫だと思う
時間に負けない 寂しさがあるから》

寂しい気持ちで前進できるなんて思わなかった。

そして去年の7月17日。私と母は日産スタジアムにいた。BUMP OF CHICKEN初めてのスタジアムツアー最終日。りいふに背中を押されてついにライブまで来るとは。
身軽になったりいふも一緒に来てる気がしていた。私たちの席はステージからずっと遠いけど、りいふはどこでも行けるから、きっと1番前まで行っているに違いない。「ふーん。こんな兄さん達が歌ってるのか」なんて澄ました顔で見てるはずだ。そして私たちのところへ戻ってきて「見てきたよ。まあ、いいんじゃない。」なんて本当は嬉しいはずなのにそんなことを言うのだ。

今となっては、りいふが本当にrayを好きだったかどうかわからない。でも、その曲が残してくれた言葉、BUMP OF CHICKENを好きにさせてくれたこと、1つ1つが宝石のような贈り物だと思う。りいふと過ごした時間は、宝石になった日だったと思うし、これからりいふが残してくれたこんなに好きなものと過ごせる日々も宝石のように大切で素敵な日々になっていくのだと思う。

寂しいことや悲しい出来事は、出来れば少ない方がいい。でも必ず起きてしまう。そんな出来事を忘れる必要はなくて、その気持ちがあるから今もこれからも笑っていられる。

《大丈夫だ この光の始まりには 君がいる》

大丈夫。この先どんなことがあっても、私の道の始まりにはりいふがいて見守ってくれている。りいふのことだから、見守るなんてそんな優しい感じではないかもしれない。きっと背中を向けて丸まって寝てる程度かもしれない。でも私のことはいつになっても心配だから、耳だけこっちを向いて様子を伺ってるはずだ。そんな様子が目に浮かんで、「おはよう」と声をかけながらちょっと笑えた。

今日もrayから1日が始まる。

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