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全ての「クリスマスを生きる人」へ

BUMP OF CHICKENのMerry Christmasにそえて

BUMP OF CHICKEN。僕が人生で初めて本気で好きになったアーティスト。初めて自分の金でCDを買ったアーティスト。初めてリリース曲を全部聴いて歌詞も覚えたアーティスト。
そんなバンプの一番凄いところといえば突き詰めればキリがないが、僕なら「歌詞」と答えるだろう。
数あるバンプの楽曲の中でも、個人的に好きな曲ベスト5には必ず入る曲であり、一番「歌詞」が好きな曲について、少し語らせていただきたいと思う。
 
 

Merry Christmas。2009年リリースの15作目のシングル。「R.I.P.」という曲とともにA面として収録された。その名の通りクリスマスソング。

『カップリングとして「クリスマスソングを書いてくれ」とプロデューサーからオファーされた当初は強い抵抗感があった上に「幸せ感が溢れるものが書ける気は到底しなかった」という』

こんなエピソードがある。バンプのボーカルであり作詞作曲を務める藤原基央らしいエピソードだが、そんな意気込みとは裏腹に、藤原基央の奥深くてどこか優しいメッセージがこの曲には込められている。
 
 
 

ところで、「クリスマスソング」といえば、何を思い浮かべるだろうか。山下達郎、マライア・キャリー、back number、愛する人への歌、寂しさと冬の寒さが思い浮かぶ曲、人によって様々だろう。特に日本においてはこれまでに、クリスマスというテーマは多岐にわたって曲に取り入れられてきた。また洋楽のこれらも日本で愛されているものが多い。日本人はクリスマスソングが好きなのである。
そんな名曲揃いのクリスマスソングの中でも、僕はBUMP OF CHICKENの「Merry Christmas」が史上最高のクリスマスソングだと、自負している。

大半のクリスマスソングでは、恋人や好きな人へのメッセージやその情景が描かれる。「クリスマスという特別な日に特別な存在の人へ」という事なのだろう。しかしバンプのクリスマスソングは少し違う。歌詞の中にも恋人を連想させるフレーズは出てくるが、曲全体として「クリスマスという特別な日に生きる全ての人々へ」のメッセージソングになっている。
 

この曲の歌詞の世界観は、「わたし」「あなた」の関係が出てくるのではなく、「藤原基央」という主人公(語り手)があらゆる「クリスマスを生きる人」にスポットライトを当て、その人らを語っていく流れになっている。歌詞中には様々な場面、様々な境遇の人間が出てくる。(以下の「” “」内の歌詞はすべてBUMP OF CHICKENの楽曲「Merry Christmas」より引用)
 

“嬉しそうな並木道を どこへ向かうの”

冒頭の歌詞である。この人にとって何か嬉しいことがあったのだろう。しかし次の歌詞は

 “すれ違う人は皆 知らない顔で”

と続く。誰かにとってはとても楽しいひとときだとしても、その他のほとんどの人間には関係のないことだ。
その後も、要所にクリスマスに彩られた街並みが描かれながら、美しいアコースティックギターの音色と鈴の響きとともに曲が進んでいく。途中からはバンドサウンドも入ってくる。
 

“バスの向こう側で 祈りの歌声”

“大声で泣き出した 毛糸の帽子”

“待ちぼうけ 腕時計 赤いほっぺた”

“肩ぶつけて 頭下げて 睨まれた人”

“嘘つきが抱きしめた 大切な人”

これらの登場人物は同じ人間という解釈も出来るが、僕は藤原基央というこの曲の主人公が、クリスマスの街を歩いて目に入った光景をそのまま唄にしている、というように見受けられた。
幸せそうに誰かを待っている人、悲しい気持ちの人、慌てている人、色んな人間を列挙することで、聴き手の僕たちもその街にいるかのような臨場感を体感出来る。登場人物に自分を置き換えることが出来る。
しかも、歌詞で描かれるのは人間だけではない。

“ずっと周り続ける 気象衛星”

なかなか「気象衛星」という単語が曲に出てくること自体少ないが、それをクリスマスソングの中に登場させるという意外性。
クリスマスがある12月下旬といえば、とても寒く、雨か雪が降りがちだ。そんな日に出掛けるともなれば、天気予報はとても気になる。この時代だからこそ簡単に予報を見て雨が降るかとか気温がどうだとかすぐに分かってしまうが、そこには予報を考えて発表する人がいて、予報を行うためのデータや写真を送ってくれる機械があって、その機械を毎日見張っている人もいて、、、
こう考えれば、気象衛星に関わっている人たちも「クリスマスを生きる人」なのである。
 
 

そんな「クリスマスを生きる人」に対する主人公の感情として、こんな歌詞が途中で出てくる。
 

“いつもより ひとりが寂しいのは いつもより 幸せになりたいから 比べちゃうから”

やはりクリスマスは特別な日だ。大切な存在がいる人にとっては、その存在と過ごしたい日。大切な存在とは恋人かもしれない。家族かもしれない。友達かもしれない。そんな幸せそうな人達がいつもより多く街に溢れているのを見て、寂しがっている。
ある意味では「クリスマス」そのものを妬んでいるのかもしれない。クリスマスがなければ、わざわざ12月25日に予定を開けて大切な人と過ごそうとはしないから。
 

“街はまるでおもちゃ箱 あなたも僕も 誰だろうと飲み込んで キラキラ光る”
“許せずにいる事 解らない事 認めたくない事 話せない事
今夜こそ優しくなれないかな 全て受け止めて笑えないかな”

そんな嫉妬を抱える主人公も、やはり優しくなりたいと願っている。人は誰しも迷いや不安、怒りを抱えながら、僅かな楽しさを得る為に、守るべきもの為に生きている。そんな大変な毎日を送っているんだから、せめてクリスマスぐらいはキラキラ輝いていたい。
ただの365分の1日だけど、今日だけは全て受け止めて笑いたい。希望と優しさに満ち溢れた歌詞を据えて、曲はいよいよクライマックスへと入っていく。
 

“信号待ち 流れ星に驚く声 いつも通り見逃した どうしていつも
だけど今日はそれでも 嬉しかったよ 誰かが見たのなら 素敵な事だ”

最後の大サビ。ここの歌詞だが、今までの「クリスマスを生きる人」を歌ったというよりは、主観的な言い回しになっているので主人公自らの出来事なのではないかと思った。
キーも転調し一気に盛り上がるというのに、ものすごくネガティブ。流れ星を見逃してしまっている。この部分に関しては「幸せ感が溢れるものが書ける気は到底しなかった」という藤原基央の言葉通りになった。従来のクリスマスソングのような幸せな歌とは到底思えない。
でも、藤原基央の優しさも同時に見えてくる。誰かが見たのなら素敵なことだと、クリスマスの今日は言えたのである。誰かの幸せを、自分のことのように嬉しく思えたのである。
 

“そんな風に思えたと 伝えたくなる 誰かにあなたに 伝えたくなる
優しくされたくて 見て欲しくて”

誰かに伝えたいと、そう思った主人公は、こうして「Merry Christmas」として聴いている僕たちに報告している。僕たちにその幸せを共有してくれている。

“すれ違う人は皆 知らない顔で”

でも結局、どんなに自分にとって楽しいクリスマスだったとしても、その他の大体の人間には関係のないことなのだ。
歌い出しの部分と同じフレーズが出てきたが、意味が全く違ってくる。嬉しそうに並木道を行く人を見て何となく抱いた感情か、「自分だけ幸せを味わえなかったが、誰かが流れ星を見て幸せになれたのなら素敵なことだ」と思えた上での感情か。
この一曲を通して、主人公の心の変化が見て取るように分かる。
 

“イヤホンの向こう 同じラララ”

この曲の最後の歌詞である。歌っている藤原基央にとって、イヤホンの向こうといえば僕たち、聴き手のことだ。文章の冒頭で語った、
【「藤原基央」という主人公(語り手)があらゆる「クリスマスを生きる人」にスポットライトを当て、その人らを語っていく流れになっている。】

と思えた根拠でもある。”ラララ”という漠然とした声にのせて、「僕はクリスマスを楽しめたから、君たちも楽しんでね」と伝えてくれている気がする。
 
 
 

単に「好きな人」「大切な人」との思い出やその人へ抱く感情を歌ったような、ありふれたクリスマスソングではない。

BUMP OF CHICKENが送るクリスマスソング「Merry Christmas」とは、
愛すべき存在がいる人、いない人、クリスマスを純粋に楽しむ人、クリスマスなんか関係なしに頑張る人、そしてBUMP OF CHICKENのMerry Christmasを聴いてくれている人。全ての人に向けられたクリスマスソングなのである。
1年365日、毎日忙しくて辛いことや悲しいことがあるだろうけど、周りと比べて挫けたり流れ星を見逃したりして落ち込んだりするかもしれないけど、クリスマスは、せめてクリスマスだけは楽しく笑って過ごそうよ。という、まさにプレゼントのような、温かいメッセージを僕たちに届けてくれる”Merry Christmas”。
クリスマスの素晴らしさとともに、BUMP OF CHICKENの歌詞の奥深さを、藤原基央の優しさを、存分に感じられる曲であろう。
 
 

今年のクリスマスも、皆さんにとって、素敵で特別な日になりますように。

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