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King Gnuは魔物か怪物か

日比谷の森に潜むKing Gnu

会場最寄り駅の国会議事堂前の出口の階段を上がる。空はあいにくの曇り空。日比谷公園の中ではガーデニングフェアが催されており、和やかな雰囲気だ。この場所で骨太なロックバンドがライブを行うのはなんだか不思議だった。
公園の奥へ進むと野外音楽堂が姿を見せる。音楽堂の周りは木々に囲まれていて、雨に濡れた土や木の匂いがする。

野外会場だから、天気が気がかりである。この日、午前中は雨が降り続いていた。しかも寒い。開場時間に雨は止んでいたが、開演間近になると小雨が降ってきた。すでに入場していたお客さんはカッパを着始めた。
ステージにはKing Gnuのロゴが描かれたライトが中央にあり、それを囲うように金属製のセットが置かれている。それがまるでヌーの角のようでもあり、モンスターの鋭い爪のようにも見える。
怪しげな重低音のSEが唸るように響く。どんよりとした雲、雨のしずくを落とすように揺れる木々、冷たい風も少し強くなってきた。
さながら今回のツアーグッズのロングTシャツの袖に描かれたモンスター達が出てきそうな雰囲気だった。
開演直前に雨は止んだ。
大量のスモークの中、メンバーが現れる。勢喜は観客の声援に応えるように手を挙げた。その後ろで井口はのそりのそりと少し猫背で歩きながら、こちらを見ずに登場。なんだか巨大だが、温厚で心優しいモンスターのように見えた。

1曲目の飛行艇が始まった。さっきまでの冷たい雨が嘘のように会場は熱気で包まれる。
大量のスモークが焚かれる。風が渦になってスモークを巻き上げた。観客が音の渦に巻き込まれるのを駆り立てているようだった。

ライブの途中、少し小雨が降ったことも、冷たい風が吹いたこともあったが、それさえも演出のように感じてしまう。普通なら、ストレスに感じてしまうはずなのに。

新曲のTeenager Forever も披露された。King Gnuが出演したCMで起用されているため、サビは聞いたことがあった。
その曲を聞いて、ずっと不思議に思っていたことがある。
常田はKing Gnuを立ち上げ、King Gnuで良質な音楽を作り続け、目まぐるしいスピードでファンを増やしてきた。これを成し遂げることができる人はそう多くはないだろう。それに加え、整った顔立ち、寡黙だが、時々見せる屈託のない笑顔は人としても魅力的に映る。常田は人から羨やまれるような人間だろう。なのに、彼の書く歌詞は、自分ではない誰かになりたがっている。
Teenager Forever 「他の誰かになんてなれやしないよ」
Bedtown「昔なりたかった自分には多分なれやしないだろう」
白日「朝目覚めたら どっかの誰かに なってやしないかな」
聞き手が共感しやすい歌詞を書いているのではないかと思っていた。King Gnuの音楽は常田が意識してJ-POPに寄せて作っていると自身が語っていたことがあったから。日本の音楽好きが聞きやすい音楽を作為的に作っている。だから、歌詞も作為的に作っているのではないかと思っていた。
このライブで初めてフルで曲を聴いたとき、ヒリヒリするくらいの十代の気持ちを歌った歌詞は、常田自身が一度は思ったことがあることなのではないかと私は思った。
そう考えると、人間の感情なんて、人によって大して差異はないのかもしれない。その感情の表現が違うだけなのかもしれない。だから、名前も顔も知らなかった他人が作る音楽に共鳴し、こうして多くの人が集まる。

終演後、物販に並び、片付けられていくセットを見ながら、幻のようだったなと思った。そして、King Gnu自体も幻のような存在だなと感じた。どこか浮世離れしているような、生活感のない雰囲気がする。そんな彼らが作るライブに参加することで我々は現実世界から離れて幻を見ることができる。
けれど、彼ら個々人は紛れもなく人間で、我々と同じように息をして、ご飯を食べて、眠りにつく人間で。音楽を身に纏うとき、きっと彼らは魔物か怪物になれるのだろう。

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