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星野 源 誰も入り込めないセンス同士の「交歓」

「Ain’t Nobody Know」誕生秘話インタビューと記事、リリックビデオから気づかされたこと

「Ain’t Nobody Know」を初めて聞いたとき、正直、戸惑いを感じた。見てはいけない世界を覗き見してしまったかのような静かなドキドキ感。感じたことを言語化したいけれど、全く言葉が出てこない。ただ沈黙。日をかけて何度も聴いて、やっと出てきたコトバ。大人の香りのするサウンドと、美しく滑らかな歌詞が溶け合っている。セクシーだけど同じくらいに気品と知性のある官能さ。

  言葉の裏の想いが
  心の首筋舐めた
 その後で 

静寂のような官能さに溢れていて、まるでクリムトの抽象的な絵画のように、洗練された美しさと崇高さがある。言葉で永遠の愛というものを封じ込めたような歌詞。ついついその世界に浸ってうっとりしてしまう。そして、結局のところ外側からただ眺めることしかできない感想を書いている自分にうんざりする…

書いては消しの日々だ。
 

…この楽曲は一体どうやって誕生したのだろう?
 

とにかく気になってしょうがなかった。
 
 

そして、やっと「ロッキング・オン・ジャパン」12月号、星野 源、徹底特集のページを開いた。ライブツアー後の心情からはじまり、 EP『Same Thing』について語られていた。なかでも、特にヒントになったのは次の箇所である。「─僕は《キス》という言葉で表現してますけど、その繋がりは誰にも邪魔できないし奪えないよっていう。そういう歌になりました。あとは、一緒に曲を作ってるってことを、この数ヶ月ずっと言わないでいたので、この繋がりは誰も知らない、この繋がりは誰にも奪えないよ、っていうのもありますね。それをラブソングに変換している感じですね」(72頁)
制作過程の秘密にしていた時空間が、そのまま楽曲のなかに真空パック化されているということだ。それが覗き見っぽい静かなドキドキ感に繋がったのかな?と思っていた矢先、「星野源とトム・ミッシュのコラボ曲“Ain’t Nobody Know”が内包する秘密の距離感について」(小川智宏)の記事を読み、星野 源とトム・ミッシュとの関係性、そして二人の「相通じる何か」を嗅ぎとって、二人を結びつけたとされる俳優の松重 豊との関係性を具体的に知ることができた。「いわばエロティックな表現の交歓」という表現に誘発され、改めてリリックビデオを観てみた。

二つのマグカップにコーヒーがドリップされて、その一つを星野 源が松重 豊に渡し、しばらくしてソファーで歓談が盛り上がる。マグカップという二つの容器のように、誰も入り込めない語らいの時間が満たされてゆく…

とても観念的な想像力を掻き立てられるプラトニックな世界観だ。

つまり、「Ain’t Nobody Know」の世界観が、センスの「交歓」から性愛に「変換」されていることや、リリックビデオの撮り方(キーマンの松重 豊と星野 源が言葉を介して歓談、交歓している姿を、リスナーでオーディエンスに背後から覗き見させているようなこと)が、信頼という幸福感に満ちた関係性になっている。リスナーでオーディエンスは、そこにいわゆる「関係萌え」みたいなものも感じることができるからだ。

その後、「MUSICA」12月号の星野 源「COVER STORY」を読んで、次の箇所もヒントになった。「”Ain’t Nobody Know”はトムが送ってくれたループトラックに僕がメロディをつけて、構成もやっていて。だから”Ain’t Nobody Know”は僕の要素とトムの要素が半々ぐらいの感じで混ざっているというか……元々自分のラインとトムのラインにシンパシーみたいなものがあるっていうのも大きかったと思うんですけど、なんの苦労もせずにバシッとできちゃった」(30頁)

制作過程で相手に会わなくても、センスだけで自然に音楽が誕生することに、とても神秘的なものを感じる。その純粋さと気高さが音と歌詞に満ち溢れていたので、きっと気安く感想という言葉で触ってはいけないと感じ、全く言葉が出なかったのだろう。親しみやすさの対極にある、良い意味での近寄り難い純粋さと気高さだったと言える。インタビューと記事に導かれ、やっと気がついた。

今回、この楽曲を、星野源、松重 豊、トム・ミッシュの関係性、それを俯瞰しているリスナーでオーディエンスとしての自分との関係性から読み解いてみた。
音楽を関係性で解くのは邪道かもしれないけれど、自分は音楽性やサウンドそのものの魅力を的確に言葉にするのは至難の業だ。でも惹かれる音楽について感じたことを書きたい欲求に突き動かされてしまう。また、トム・ミッシュの楽曲を聴いてみて「トム・ミッシュ的」という表現がこういう感じなんだということは、聴いてみて初めて分かった。

去年の今頃は、Eテレ『みいつけた!』で星野 源作曲の「グローイング アップップ」を耳にするくらいで、こんなに音楽に夢中になるとは思っていなかった。夢中と無知が入り混じるこの時期。まだまだ続きそう。
 

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