2624 件掲載中 月間賞発表 毎月10日
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

何度も諦めた、憧れの場所へ

BUMP OF CHICKENのツアーファイナルに行った話

2019年11月4日、私は東京ドームにいた。

東京に行くことが決まったのはその2日前だった。

私は中学生の頃からBUMP OF CHICKENが好きで、ライブは何回も行っている。今回のツアーであるaurora arkも、既に地元大阪でのライブに3回、名古屋に遠征して1回の計4回見に行っていた。

毎回オープニングから涙を流し、演出に感動し、MCで爆笑し、煽られたら大声で歌い、とても幸せな時間を過ごした。

ツアーファイナルは今まで一度も行ったことがなかった。
BUMP OF CHICKENのツアーファイナルに行くことは、私の夢の1つだった。

勿論、ツアーファイナルとか関係なく、BUMP OF CHICKENのライブは大好きである。その日ならではのセットリストや曲のアレンジやMCが楽しみで、ツアーを発表する度に、ライブに行く回数は増えていった。

それでも、私の中でツアーファイナルへの憧れは強くなっていく一方だった。

そもそも私がBUMP OF CHICKENのツアーファイナルに憧れるようになったのは、5年前のツアーであるWILLPOLIS 2014のファイナルだった東京ドーム公演の数々のライブレポートとドキュメンタリー映像を見たからだった。
全て文章と写真と映像から知った情報だが、あの日の特別感と、感極まっているメンバーの様子は忘れられない。

当時高校生で、東京のライブなんて行けるはずも無かった私は、ネットや雑誌やライブDVDを見て、感動しながらも行きたかったなぁという悔しさと羨ましさと寂しさを募らせるしかなかった。

その後のツアーのBFLY、PATHFINDERのツアーファイナルは、大学生になって行動範囲が広がった上にスケジュール的にも行くことが可能だったのだが、金銭的な問題で諦め、チケットの申し込みすらしなかった。やはり、無理やりにでも行けばよかったと後々後悔した。

今回のツアーファイナルは東京ドーム。5年前から憧れていた場所だ。どうしても行きたかった。

しかし、ツアーファイナル当日である11月4日は元々予定が入っていた。その予定も個人的に重要なものだったので、発表された瞬間に少し悩んだ末、私はツアーファイナルを諦めることにした。

前述した4公演を全力で楽しんで、
「学生生活最後のバンプのライブだったなぁ」
「冬フェス出ないかなぁ」
「ツアーファイナルをライブビューイングしてくれたらいいのになぁ(当日の予定は夕方までには終わる算段だったのでライブビューイングを大阪で開催してくれるならなら行けると思っていた)」
「次のツアーはいつになるんだろうなぁ」
などと考えていた。
BUMP OF CHICKENのツアーファイナルに行くという夢は一生叶わないかもしれないなぁとさえ思っていた。
でも、私の人生そんなもんなんだろうなぁというよく分からない理由をつけて、悔しい思いは心の底に沈めた。

ところが、東京ドーム公演を間近に控えた10月末、11月4日の予定が無くなったのだ。私は思わずTwitterで「バンプ 11/4 チケット」でエゴサを始めた。(断りを入れておくが、この時点でオフィシャルのチケットの先行予約とトレードの受付は全て終了していた)

普段のTwitterでは独り言を呟くか知り合いと話すことしかしない私が、意を決して、ツアーファイナル同行者募集をかけている方のアカウントにリプライとDMを送ったのである。

大学や就活であまりバイトができず思うような収入が無い中、新幹線やバスの値段比較サイトと自分の銀行口座の残高とにらめっこして交通手段を決めた。

そして、DMを送った方から、私にチケットを譲る旨の連絡がきた。
一瞬嘘なんじゃないかと疑ってしまったが、すぐに嬉しさがこみあげてきた。
夢のツアーファイナル参戦が決まった瞬間だった。

ここまでの私の行動に1番驚いていたのは、私自身だった。

だってこの一連の流れの中で、
「既に4回行ったのにまだ行くの?行き過ぎでは?」
「全然バイトしてないのに今これに行ったら本気でお金無くなるよ?この後どうやって生活するの?」
「DM送ったアカウント、他にもいっぱいリプきてたし譲ってもらえる確率低いよ?」
「(今回のツアーの)名古屋遠征で日帰り弾丸旅したら大変だったじゃん?もうしないって反省したじゃん?もう忘れたの?次の日大学で授業あるよ?体力的にしんどいってば」
「またぼっちでライブ行こうとしてる!(今回のツアーで行った4回のライブの内3回は1人でライブを見たのである)1人が好きな奴だって余計に思われるよ」
等の意見が、世間体を気にする私の頭の中を永遠にぐるぐるしていたから。

それでも、
「来年はもう社会人だし思うようにライブに行けなくなるかもしれないじゃん!学生の内にできることしようよ!」
「ギリギリだけど何とかなるよ。当分節約生活送ろうぜ。それはそれで面白いよ多分」
「DM送んないと声すらかけてもらえないじゃない」
「夜行バスで帰れば交通費安くなるし学校も間に合うよ。1日ぐらいがんばろうぜ」
「高2からの夢が叶うかもしれないのに今行動を起こさないでどうする!」
「次にツアーファイナルに行けるチャンスは一生来ないかもしれないよ。今がその時だって!!」
「数日前に突然東京行くって決めて1人で行けるの超わくわくしない?ぼっちスキル(1人の時の行動力のことを私はこう呼んでいる)上げといて良かったな!笑」
っていう意見が、私の頭の中をぐるぐるしつつ、私の背中を押してくれた。

BUMP OF CHICKENのツアーファイナルへの憧れが私を突き動かしたのだろう。
BUMP OF CHICKENのツアーファイナルに行くことができるという事実だけで、私は泣きそうだった。
 

当日、昼に大阪を出発。開演1時間前に会場最寄り駅に到着し、同行者の方と合流した。初めましてだったことと、お互いBUMP OF CHICKEN好きだったこともあり、話のネタは尽きなかった。2人で歩きながら盛り上がっている間に目的地に到着した。

うわ!いっつもテレビで見てる場所やん!来れるもんやねんなぁ!

画面の向こうでしか見たことがない東京ドームを目の当たりにした時の私の率直な感想である。なんだかあほらしい感想だが、感慨深くてしょうがなかった。あぁ本当に来ちゃったんだと思った。数年前から憧れて、数日前まで諦めていた景色の中に自分がいることが信じられなかった。

わくわくしている間に東京ドームに入り、同行者の方と喋っていると、あっという間に客電が落ちた。

最後のaurora arkが始まった。

オープニングのaurora arcとメンバーが円陣を組む様子、カナダのイエローナイフへオーロラを見に行った時の映像で感動して泣いてしまった。これは今回のツアーのドーム公演に行った時、毎回そうだった。
まず、BUMP OF CHICKENのメンバーがライブ直前に円陣を組むのはよく知っているが、これをリアルタイムで見せる演出は今まで行ったことのあるライブでは初めてだった。私たちが、オープニングの演出を見ながらメンバーが登場するのを今か今かと待っている間、メンバーはライブに向けて4人で気合を入れている。それが全く同じ時間に行われていることを体感できる演出で胸が熱くなった。
そして、様々な雑誌のインタビューでも話していた、カナダのイエローナイフでオーロラを見たいという夢を、メンバー4人で叶えた映像を見られたことも、嬉しかった。
ツアーファイナルだから寂しいという理由ではなく、単純に胸が熱くなって感動して泣いてしまったのである。

BUMP OF CHICKENのメンバーは今まで見たことのあるライブの中でも1番ステージ中を動き回って、演奏している時もしていない時も、メンバー同士でじゃれあったり、観客に少しでも近づこうとしていた。

そして、BUMP OF CHICKENの曲はいつも通り、世間体を気にして、何があっても穏やかに生きようと必死な私を見つけてくれていた。

『溜め息にもなれなかった 名前さえ持たない思いが
心の一番奥の方 爪を立てて 堪えていたんだ』(Aurora)

『冷たいままの痛みが そっと寄り添って祈る
冷たいままの体を 温めようとしている』(虹を待つ人)

『嵐の中も その羽根で飛んできたんだ』
『本気で迷って 必死にヘラヘラしている』(望遠のマーチ)

『悲しい光は封じ込めて 踵すり減らしたんだ』
『あまり泣かなくなっても ごまかして笑っていくよ』(ray)

私は、辛いしんどい様子をなるべく周囲の人に見せたくなくて、辛いことやしんどいことがあってもなるべく隠して、穏やかそうに見えるように生きてきた。BUMP OF CHICKENの曲は、そんな隠してきたものがあることを知った上で、それでもここまで生きてきたじゃない?と教えてくれる。

また、散々脳内会議をした上で、自分の性格からは想像できないような行動力を発揮して東京ドームにやってきた私に届いた歌詞があった。

『解き放て あなたの声で 光る羽根与えた思いを
その足が向かうべき先へ そうしなきゃ見えなかった未来へ』(Aurora)

『どれだけ待ったって 誰も迎えにこないじゃない
いこう いこうよ』(望遠のマーチ)

『とても素晴らしい日になるよ 怖がりながらも選んだ未来
君の行きたい場所を目指す 太陽は今日のためにあった』
『とても素晴らしい日になるよ 選ばれなくても選んだ未来
ここまで繋いだ足跡が 後ろから声を揃えて歌う』(GO)

『ひとりぼっちは怖くない』(バイバイサンキュー)

今までなら諦めていたであろう状況で行動を起こした私に、大阪から1人で何百キロもの距離を越えてこの地にやって来た私に向かって歌っているのではないかとさえ思った。

なんでBUMP OF CHICKENは私のことをこんなに知っているんだ?と思ったことが何度あったことだろう…

その日ならではの光景もたくさん見ることができた。記念撮影のワンピースとのコラボ映像やツアーを振り返ろうとするMC、rayの『生きるのは最高だ』の演出、新世界が終わった後に続けて歌った『ベイビーアイラブユーだぜ』など、どれもこれも、『とても楽しくて ずるくて あまりに愛しかった』(記念撮影 ※歌詞変え有り)思い出である。

時には腕を上げ、時には手を胸に当て、時には涙を流し、時には手を叩き、時には一緒に歌いながら聴いていた。

アンコールのスノースマイルの間奏で藤くんが言った「俺のバンドかっこいいだろ!」という言葉を聞いた時には、驚きなのか感動なのか原因が分からない涙が出てきて、数秒間頭がフリーズしてしまった。ライブを見ていてこんなことになったのは生まれて初めてだった。

スノースマイルが終わった途端もう1曲ぐらい…と呟いた藤くんが歌いだしたのは花の名だった。どう見ても藤くんが1人で暴走しているようにしか見えなかった。明らかに動揺している他のメンバー3人をよそに歌うのをやめない藤くん。それに必死でついていこうとする3人。きっとメンバー4人での練習の場でも見ることは無い光景だったのだろう。ライブだったからこそ見ることができたであろう光景を見た私は、ただただ必死に耳を傾けていた。びっくりし過ぎてそれ以外に何をすべきか全く分からなかった。

花の名が終わると、メンバーが花道の先まで出てきて、4人で手を繋いで一礼し、藤くん以外の3人がステージを降りた。1人残った藤くんがまたMCをして、ステージを降りて行った。

最後のaurora arkが終わってしまった。
散々憧れたツアーファイナルは、誰も予想しなかったであろう終わり方で幕を閉じた。

全然頭の中での処理が追いついてないけど、すごいもの見ちゃったなぁ…でもいつも通りって感じもしたなぁ…来て良かった…あの時同行させてくださいって伝えて良かった…

興奮覚めやらぬまま同行者の方と語り合い、チケットを譲ってもらった感謝の気持ちを伝え、お互いこれからのバンプのライブの同行者がいなかったら誘いますね!と約束し、また会いましょう!と言ってお別れした。夜行バスに乗り込んで東京を離れた。東京での滞在時間は僅か7時間だった。
 

私は今、大阪で生活している。あの日あの時、東京でBUMP OF CHICKENのライブを見ていたことが夢だったんじゃないかと思うくらいの、普通の日常を送っている。

でも、藤くんの最後のMCの言葉を借りるなら、あんな魔法みたいな夜も、魔法じゃなくて普通の日だった。
今日はあの日の続きなんだ。

『想像じゃない未来に立って 僕だけの昨日が積み重なっても
その昨日の下の 変わらない景色の中から ここまで繋がっていた』(記念撮影 ※歌詞変え有り)

東京ドームにいたことは『想像じゃない未来』だったけど、ツアーファイナルに憧れた私と、ツアーファイナルを諦めた私と、ツアーファイナルに行こうとして行動を起こした私と、あの日東京ドームにいた私と、今大阪で生活を送る私は、全部繋がっていたんだ。

BUMP OF CHICKENにちょっとだけ勇気をもらって、憧れの場所で夢を叶えて来た、そんな話。
 
 

※歌詞変え有りの記念撮影は、全て2019年11月4日東京ドーム公演で実際に歌われたものです。

  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい